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世界三大映画祭全ての栄誉に輝くイタリアの名匠タヴィアーニ兄弟の弟パオロが、兄ヴィットリオ亡き後、初めて⼀⼈で監督した、ノーベル賞作家の“遺灰”を運ぶ物語『遺灰は語る』(公開中)のオンラインQ&Aイベントが公開初日となる6⽉23⽇(⾦)に新宿武蔵野館で行われ、パオロ・タヴィアーニ監督がローマよりオンラインで登壇した。

「兄ヴィットリオの存在は今でも常にそばにいる」

『カオス・シチリア物語』(1984)、『グッドモーニング・バビロン!』(1987)などで知られるイタリアの名匠タヴィアーニ兄弟。2018年に兄ヴィットリオが死去後、現在91歳の弟パオロが初めて⼀⼈で監督したのが本作『遺灰は語る』。ローマからシチリアへ、ノーベル賞作家の“遺灰”を運ぶトラブル続きの旅を描く。

『遺灰は語る』

パオロ・タヴィアーニ監督は1931年11⽉8⽇⽣まれ、現在91歳。イタリアが映画史に誇る“ネオレアリズモ”の時代の後継者として、1950年代から映画を作り始めた。映画を観終えたばかりの⽇本の観客を前に、「観客の皆さんと⽇本という国に『こんにちは』と申し上げたいです。⽇本という国は私がとても愛する国で、私たちヴィットリオとパオロを愛してくださった国だと思っています。そんな国の⽅々が私の最新作にどんな感想をもったか、とても好奇⼼をもって知りたいと思っています」と挨拶した。

貴重な⼀問⼀答の模様は以下のとおり。

今回初めてお⼀⼈で監督されておりますが、⼀⼈で監督するときと⼆⼈でするときの最⼤の違いはなんでしょうか?

とても答えるのが難しい質問でもありますが、ヴィットリオの存在というのは今でも常にそばにいるんですね。この作品を撮影している最中も、「カット!今のシーンはすごく良かったね」と⾔いながら、私は後ろを振り向いていたそうです。あたかもヴィットリオがそこにいるかのように。それは⼆⼈で撮っている時にいつもやっていたことで、⼀⼈がカメラのそばにいるともう⼀⼈は隣にいる、というフォーメーションで撮っていた。ですので、いつも彼の存在というのがありました。

ただ残念ながら最近ちょっと彼の存在感というのがどんどん遠くなってしまっているような気がしています。今、本当に兄と話したいし、今書いている作品のこと、脚本のことをヴィットリオに話せたら、という思いが募ります。

なぜピランデッロという作家についての映画を作ろうと思ったのですか? また、今のイタリア⼈にとってピランデッロはどのような作家なんでしょうか?

難しい質問ですね。なぜピランデッロかというと、ピランデッロは私たちが⼦ども時代にとてもよく読んでいた作家なんですね。ヴィットリオが先に読んでいて、私も読むようになったんですけれど、それは戦前のことでした。それから戦争――第⼆次世界⼤戦があり、そして戦後になって。戦後の私たちのヒーローは、ロッセリーニだったり、イタリアのネオレアリズモの素晴らしい映画であったり、ジョン・フォードだったり。そういったものに惹かれていたので、ピランデッロを少し忘れていたんです。ところが私たちが映画を撮り始めて、またピランデッロの本を⼿にするようになったんですね。その時、「私たちが何かを語るのに、ピランデッロこそが私たちを助けてくれるのではないか」と思ったんです。ということで、ある時ピランデッロを原作に映画を作ったんですけど、それ以降ずっとピランデッロは私たちのそばにいます。

『カオス・シチリア物語』はピランデッロの短編を原作にした作品なんですが、最近とても嬉しいニュースがありました。実は、この映画のリマスターの作業が進んでいるのです。皆さんにぜひ⾒てもらいたいと思っています。映画の最後のシーンは⽩い⼭の中で撮りました。その⼭は私たち兄弟が⼦どもの頃駆け回っていた場所で、⼭から⾃分たちの村が⾒える、そこに⾃分たちの家があり、あたかも⼿を広げれば抱えられるように――もちろんそれは事実ではないですよ(注:監督はトスカーナ⽣まれ)――ですが、そんな私たちの思いを込めたシーンがまた蘇ることをとても嬉しく思っています。

これまで、私たち⼆⼈で⾊々な作家を原作に映画を撮ってきましたが、ゲーテにしろピランデッロにしろ、常に作者たちを裏切ってきたのです。というのも、ピランデッロ⾃⾝が⾔っていますが、「アイディアというのは空っぽの袋でしかないのだ」ということ。「どんなに素晴らしいアイディアであっても、それは袋だから、その中に新しい思考や感情や感動を詰めなければ、⾃⽴できない」と。袋に詰めた感情というのがまさに私たちの、私の、ヴィットリオの、感情であり感動でした。そしてそれは、原作者への裏切りなんです。ピランデッロこそ、私たちに最⼤の裏切りを受けた作家だと思います。

映画というのは、常にそういう可能性を提供してくれます。スタンリー・キューブリックがいみじくも⾔っていますが、「私の映画は、既にある本の中から⽣まれたものだ」、つまり私のオリジナルではない、というわけですね。既に⾃分が感銘を受けた素晴らしいものが⽬の前にあるのだから、それを利⽤しない⼿はないのではないかと。ですので、私も⾃分の作品のインスピレーションになる作家を常に探し続けてきましたし、そして敢えて彼らを裏切ってきました。作家の描いた真実と私の描く真実というのは、そこでまた⼆つのものとして存在すると思うからです。

⼆つ⽬の質問について。実際に現代のイタリア⼈にピランデッロがどのように受容されているかというのは、学校で若い⼈たちに聞いてみないと、ちょっと答え難いんですけれども。⼀つ⾔えるのは、コロナのパンデミックで劇場が閉鎖された時期が⻑かった、ということは⼤きな影響を与えていると思うんですね。ピランデッロは劇作家ですし、いつもどこかの劇場で彼の作品が上演されているという現状があったんですが、それが途切れてしまった。ですので、私たちはやはりまたここから再スタートを切らなくちゃいけないと思うんです。イタリアの⽂化、それから私たちが映画にしてきた偉⼤な作家たちを、もう⼀度⾒直す作業をこれからやっていくべきなのではないかと思っています。

素晴らしい映画をありがとうございます。モノクロの旅のお話の後に、急にカラーの物語が始まって驚きました。なぜこのような構成にしたのでしょうか?

答えが⻑くなりますよ(笑)。

まず映画の最初のシーンは、ピランデッロがノーベル賞を受賞した映像から始まるわけです。記録の映像であり、また⽩黒時代でもあったので、⽩黒というスタイルを踏襲したかったんですね。ですので前半は⽩黒なんです。しかも撮影監督が素晴らしい⽅で、彼の⼒量によって――⾃分の映画だから⾔うわけではないのですが、⽩黒映像がとても美しい効果を上げていますよね。

翻って、後半の物語「釘」という短編ですが、これはピランデッロが亡くなる20⽇前に書き上げた作品なんですね。いわゆる悲劇ですが、その時彼が“死”を⽬の前にしていてあれを書いた、ということにとても意味があると思っています。ピランデッロの他の作品は、なんとなくグロテスクな様相が結末を救っているところがあると思うんです。グロテスクさが悲劇を救うような結末です。でも、この作品に限ってはそうではない、灰⾊の⼼です。死を感じて、死にゆく彼のグレーな⼼持ちというのが現れているのではないかと感じました。

グレーということで⾔えば、前半が⽩黒の“遺灰”の話です。そして「釘」という “死”を語る物語があり、それは現実であり⾊に溢れたカラーの映像です。しかしカラーの⼀歩⼆歩先にはまた“死”が待っている、そういう循環があるのです。⼀⾒あまり関連性がないように思われるかもしれないですけれど、私の中ではとても繋がっている、そんな物語だと思っています。

『遺灰は語る』の印象的な冒頭シーンを演出するタヴィアーニ監督

前半後半あわせて「死」がテーマのように思えたのですが、監督にそういう意図はあったのでしょうか?

映画というのは⼤きな意図を持って作るわけではなくて、今回の作品も、⼊れるつもりだったピランデッロの短編もカットしてしまったりして、やりながらなんとなくああいう構成になっていったんですね。発端は、ピランデッロの“死”について向き合った映画を作っていなかったので、ピランデッロの死を語りたいと思ったこと。それから、ノーベル賞を獲ったその作家が「悲しい」「寂しい」「孤独」であると感じている――そんなところからこの映画の構想が始まったんです。ピランデッロが劇中で⾔っている台詞は私のオリジナルではなくて、本⼈が語ったもので、全てどこかに出典があり、彼⾃⾝の⾔葉をすべて台詞化しました。

最後にもう⼀度、⽇本の観客へご挨拶をお願いします。

⽇本の皆さん、愛しています。そして⽇本をとても愛しています。私たち⾃⾝、⽇本映画にとても影響を受けているんです。私たちの映画には⽇本の映画をコピーしたシーンも沢⼭あります。⼀つ挙げますと、黒澤明の映画で戦いのシーンなんですが、沈黙から始まるんです。⾳が全くなくて、そこに何か退屈していたかのようにいきなり⾳が始まる、というシーンをとても印象深く覚えていて、それを『⽗/パードレ・パドローネ』という私たちの映画でコピーしたんですよ。⼀⼈のとても孤独な⽺飼いの⻘年が兵役に⾏って、そこで洗濯室のシーンがあり、同僚がものすごくたくさんいるんですが、敢えてそこは沈黙。⾳を⼊れなかった。そこで突然、兵⼠の⼀⼈が布を振り上げてバシャっと叩くんですね、そこから⾳を⼊れた。あれは黒澤のワンシーンのコピーです。

映画というのは、過去と現在のコラボレーションでもあると思うんです。最近、若い監督志望の⽅に「僕、どうすればいいんですかね?」と質問されたんですが、その時⾔いました。「コピーしろ。模倣するのだ!」と。


最後に監督が「(⽇本で)映画が成功することを思ってやみません」と締めくくり、時にユーモラスでありながら含蓄ある“⽣きる映画史”の⾔葉の数々に場内は尊敬と感動に包まれた。

『遺灰は語る』はヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開中。

作品情報

遺灰は語る
2023年6月23日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開

原題:Leonora Addio|2022|イタリア映画|90 分|モノクロ&カラー|監督・脚本:パオロ・タヴィアーニ|出演:ファブリツィオ・フェラカーネ、マッテオ・ピッティルーティ、ロベルト・ヘルリツカ(声) 字幕:磯尚太郎、字幕監修:関口英子

配給:ムヴィオラ

© Umberto Montiroli

公式サイト https://moviola.jp/ihai/

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