A24が新たに贈る注目作『インスペクション ここで生きる』が8月4日(金)より公開。自身の実体験に基づき生み出した本作で長編デビューを飾ったエレガンス・ブラットン監督について徹底解説!
『ムーンライト』『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』ほか、革新的な作品を次々と送り出してきた映画会社A24の最新作『インスペクション ここで生きる』は、ある新鋭監督の半生を描いた実話ストーリー。イラク戦争が長期化する2005年・アメリカ。ゲイであることで母に捨てられ、生きるためにすがるような想いで海兵隊に志願した青年。しかし、彼を待ち受けていたのは、軍という閉鎖社会に吹き荒れる差別と憎悪の嵐だった。
海兵隊に在職中だった20代で初めてカメラを手にし、そこから映像記録担当としてキャリアを始めたエレガンス・ブラットン監督の長編デビューにして、彼の体験に基づく実話である本作。主人公であるエリス・フレンチを演じるのは、俳優、そして歌手としても活動し、2019年のトニー賞では別々のパフォーマンスで 2つの部門(演劇主演男優賞/ミュージカル助演男優賞)にノミネートされるという、史上6人目の快挙を成し遂げたジェレミー・ポープ。本作では第80回ゴールデングローブ賞で主演男優賞(映画・ドラマ部門)にノミネートされたほか、世界各国で高い評価を受けた。また、音楽は「21世紀の最重要バンド」と評されるアニマル・コレクティヴが担当。逆境に屈せず前を向く主人公フレンチの姿をエモーショナルに彩っている。
1979年生まれのエレガンス・ブラットン監督は、ゲイであることで母親に捨てられ16歳でホームレスに。そのまま10年という長い年月を路上で過ごした後、生きていくために海兵隊への入隊を志願する――。過酷な訓練と差別が横行する壮絶な環境の中、そこで与えられたフィルムメーカー(映像記録担当)の仕事が転機となり、クィアで黒人であるせいで社会からのけ者にされ「透明で重要ではない」と感じていた自分自身を癒すために映画を撮ろうと決意したという。
コロンビア大学の理学士、ニューヨーク大学ティッシュ校大学院映画学科で修士の学位をそれぞれ取得後、2022年に自分の半生をそのまま詰め込んだ本作をついに完成させる。長編デビューとなった本作は、トロント国際映画祭でのプレミア上映を皮切りに各国へと渡り、卓越した演出力やエモーショナルな人間ドラマの構築が世界から絶賛された。
さらに、監督が敬愛するマーティン・スコセッシやケイト・ブランシェット、さらにレニー・クラヴィッツやジェイ・Zといった映画人やアーティストたちからも直接賞賛の声が届いたと明かしている。それはまさに、かつてホームレス時代に映画や音楽、アートなどの芸術家たちの本を盗み出し小さな書店に売っては、なんとか生きるためのお金を捻出していた少年の、華麗なるサクセスストーリーだ。
そんな異色の経歴を持つエレガンス・ブラットン監督は、自身を投影した主人公・フレンチが劇中で感じる「欲望、恐れ、そして最終的に抱く目標まで、すべてが本物」だといい、自身の物語を世界へと共有できることは実に幸運なことだと明かしている。「同様のつらい経験をしたために、自らの話をすることができない人たちが大勢いることを知っています。この作品は完全に個人的な映画ですが、あらゆる種類の似たような体験をしてきたすべての人たちの心と考えが変わることを願っています。私が持っている“最強の武器”は、この物語を通して皆さんに私の真実を体験してもらえることです」。そう語るよう、本作には、およそ20年前に体験したパーソナルな物語を、普遍的なストーリーへと昇華し現代に届ける監督の切なる想いが込められている。
今回、本作の撮影現場をおさえたメイキング写真が2点解禁。自身が育った環境とはまるで違った人達が集まる映画界において、過去にホームレスを経験したということが負い目に感じられる瞬間もあったというが、本作を完成させたことでそうした考えは一切なくなり、「困難を価値のあるものに変えることができた」という強い確信へと変化したと語っている。
『インスペクション ここで生きる』は8月4日(金)TOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほか全国公開。
インスペクション ここで生きる
2023年8月4日(金)TOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほか全国公開
STORY
ゲイであることで母に捨てられ、16歳から10年間ホームレス生活を送っていた青年・フレンチ(ジェレミー・ポープ)。どこにも居場所を許されず、自らの存在意義を追い求める彼は、生きるためのたったひとつの選択肢と信じて海兵隊への入隊を志願する。だが、訓練初日から教官の過酷なしごきに遭い、さらにゲイであることが周囲に知れ渡るや否や激しい差別にさらされてしまう……。理不尽な日々に幾度も心が折れそうになりながらもその都度自らを奮い立たせ、毅然と暴力と憎悪に立ち向かうフレンチ。孤立を恐れず、同時に決して他者を見限らない彼の信念は、徐々に周囲の意識を変えていく。
監督・脚本:エレガンス・ブラットン(初長編監督作品)
出演:ジェレミー・ポープ、ガブリエル・ユニオン、ラウル・カスティーヨ、マコール・ロンバルディ、アーロン・ドミンゲス、ボキーム・ウッドバイン
配給・宣伝:ハピネットファントム・スタジオ
2022年/アメリカ/カラー/シネマスコープ/5.1ch/95分/R15+/原題:THE INSPECTION 日本語字幕:松浦美奈
©2022 Oorah Productions LLC.All Rights Reserved.
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