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スペインを代表する映画監督カルロス・サウラの遺作2本『情熱の王国』『壁は語る』が6月1日(土)より同時公開されることが決定した。

監督は「過去を反芻するより、次のことを考えることに時間を使いたい」と言い続けていた

2023年2月10日、91歳で亡くなったスペインの映画監督カルロス・サウラ。自宅で家族に囲まれながら「充実したよい人生だった」という言葉を残したという。翌日の2月11日、スペインのゴヤ賞で栄誉賞を受賞。サウラ監督自身が書いた手紙を家族が代読した。

このたび、そんなカルロス・サウラ監督が最後に作り上げた映画2本が「VIVA SAURA!」と題して公開されることが決定した。

1本目は、『地獄の黙示録』などで知られる撮影監督、名匠ヴィットリオ・ストラーロと最後のタッグを組み、メキシコを舞台に撮ったフィクション『情熱の王国』。メキシコ音楽がふんだんに流れる音楽劇を作り上げる様を描き、演出家や振付師の葛藤、オーディションに挑む若者たちの競争と、そこから頭角を現す男女3人の美しい肉体とダンス、光と影を瑞々しく捉えた作品。悲劇と虚構と現実が交錯する舞台が生まれる。

2本目は本当の遺作となるドキュメンタリー『壁は語る』。先史時代に描かれた洞窟の壁画から、現代のグラフィティまでを、サウラ監督自らが旅して探求する作品。「なぜ、人は壁に描くのか」というシンプルな問いを追い求めていく。現代アートを代表するアーティスト、ミケル・バルセロや、グラフィティを描くZeta、Musa71、アーバン・クリエイターのSuso33などが出演。スペインの洞窟から街中に至るまで、あらゆる“壁画”を堪能できるアート・ドキュメンタリーとなっている。

カルロス・サウラ監督は生涯で50本あまりの映画を作っているが、日本では“フラメンコ映画の監督”としての一面が知られており、フランコ政権下の作品は殆ど公開されていない。

監督は「過去を反芻するより、次のことを考えることに時間を使いたい」と言い続けていた。生涯を終えても、サウラ監督が残した映画が無くなることはない。最後のフィクション『情熱の王国』と、遺作『壁は語る』の公開を通して、“未来を生きるシネアスタ(※「シネアスタ」とはスペイン語で「映画人」の意味)”、カルロス・サウラ監督の映画的軌跡を再発見してみよう。

カルロス・サウラ監督 プロフィール Carlos Saura

本名:カルロス・サウラ・アタレス
1932年1⽉4⽇ ウエスカ⽣まれ。2023年2⽉10⽇にマドリードにて死去。
4歳の時にスペイン内戦(1936-39)がはじまり、共和国派地域のマドリード、バルセ ロナ、バレンシアを転々とする。ピアニストの⺟と画家の兄の影響で芸術に興味を⽰し、⾼校の頃から写真に興味を持ち、プロのカメラマンとして活躍。1950年からは16mmで映像を撮り始める。1952年、IIEC(現在の国⽴映画学校)に⼊学。57年に卒業制作として『La Tarde del Domingo』(⽇曜⽇の午後)を制作、監督として卒業。1958年からIIECで映画美術の教鞭に⽴つがフランコ政権の検閲に反対して 1963年に解任される。
1958年に短編ドキュメンタリー『Cuenca』(クエンカ)でサンセバスチャン映画祭の短編部⾨特別賞を受賞。⻑編デビュー作は1959年制作の『Los Golfos』(ならず者たち)で、ネオリアリズムの⼿法でマドリード郊外の貧困地区の若者たちのフラストレーションと友情を描き、検閲官の怒りを買いながらも、1960年のカンヌ映画祭でコンペティションに正式出品。
1965年、『La Caza』(狩り)が、ベルリン国際映画祭⾦熊賞を受賞。スペイン国外で初の最⾼賞を取ったことから、⼩さくとも信頼できる座組みができるようになる。
1975年にフランコ政権が終わりを迎え、ビクトル・エリセ監督の『ミツバチのささやき』から2年後のアナ・トレントが主演した『カラスの飼育』(1976)では、カンヌ映画祭審査員グランプリを受賞、ゴールデン・グローブやフランスのセザール賞 にもノミネートされ、『ママは百歳』(1979)が⽶国アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたことで、世界に名が知られることになった。
フラメンコの名ダンサー、アントニオ・ガデスとのコラボレーションやフランスの ジャン・クロード=カリエールの⼩説を元にイザベル・アジャーニとハンナ・シグラ主演でメキシコ⼥性の物語を描いた『アントニエッタ』(1982)や、スペイン内戦を舞台にした『歌姫カルメーラ』(1990)など物語から⾳楽映画まで描くジャンルは多岐に渡る。
1991年からオペラや舞台の演出も⼿がけてきた。2017年にはカルロス・サウラと子供たちを取り上げたドキュメンタリー『サウラ家の人々』も制作された。2023年、舞台「サウラによるロルカ」の稽古中に体調を崩し2⽉10⽇、呼吸不全で家族に⾒守られながら息を引き取った。最後に「充実したよい⼈⽣だった」とつぶやいたという。翌日の 2⽉11⽇のゴヤ賞で栄誉賞を受賞した。一生で50本あまりの映画を作り上げ、現役のまま、91歳で生涯を閉じた。

■フィルモグラフィー
1958 年 『Cuenca』(クエンカ) 短編 サンセバスチャン映画祭短編部門特別賞受賞
1960年 『Los Golfos』(ならず者たち) カンヌ国際映画祭作コンペティション部門出品
1964年 『Llanto por un bandido』(盗賊への挽歌)
1966 年 『La Caza』(狩り) ベルリン国際映画祭監督賞受賞
1967年 『Peppermint Frappé』(ペパーミント・フラッペ) ベルリン国際映画祭監督賞受賞
1968 年 『Stress-es tres-tres』 (ストレスは3人で)ベネチア国際映画祭コンペティション部門出品
1969 年 『La madriguera』(巣)
1970年 『El jardín de las delicias』(快楽の園)
1972年 『Ana y los lobos』(アナと狼たち)
1974年 『Cousin Angelica』(従妹アンヘリカ) カンヌ国際映画祭審査員賞受賞
1975年 『カラスの飼育』 カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリ受賞
1977 年 『Elisa, vida mía』(エリサ、我が愛) カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品
1978年 『Los ojos vendados』(塞がれた眼差し)
1979年 『Mamá cumple cien años』(ママは百歳) 
1981年 『Deprisa, deprisa』(急げ、急げ) ベルリン国際映画祭金熊賞受賞
1981年 『血の婚礼』 カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品
1982年 『Sweet Hours』(甘い時間)
1982年 『アントニエッタ』 ※ビデオ発売のみ
1983年 『カルメン』 
カンヌ国際映画祭技術グランプリ受賞、芸術賞受賞、米アカデミー賞外国語映画賞ノミネート
1984年 『Los Zancos』(ロス・サンコス) ベネチア国際映画祭コンペティション部門出品
1986年 『恋は魔術師』
1988年 『エル・ドラド』 カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品
1989年  『La Noche oscura』(魂の暗い夜) ベルリン国際映画祭コンペティション部門出品
1990年 『歌姫カルメ―ラ』
1992年 『Sevillanas』(セビジャーナス)
1992年 『Marathon』(マラソン)
1993年 『愛よりも非情』 ベネチア国際映画祭コンペティション部門出品
1995年 『フラメンコ』
1997年 『タクシー』
1997年 『Pajarico』(小鳥)
1998年 『タンゴ』 米アカデミー賞外国語映画賞ノミネート
1999年 『ゴヤ』(DVDのみ)
2001年 『ブニュエル ~ソロモン王の秘宝~』
2002年 『サロメ』
2004年 『El 7º día』(7日目)
2005年 『イベリア 魂のフラメンコ』
2007年 『Fados』(ファド) ゴヤ賞最優秀オリジナル楽曲賞受賞 
2008年 『Sinfonia de Aragón』(アラゴン交響曲) 短編 
2009年 『ドン・ジョヴァンニ 天才劇作家とモーツァルトの出会い』
2010年 『フラメンコ・フラメンコ』
2015年 『Zonda, folklore argentino』(熱風:アルゼンチン・フォルクローレ)
2016年 『33 días』 (33日間)
2016年 『J:ビヨンド・フラメンコ』
2018年 『Renzo Piano: El Arquitecto de la Luz』(レンゾ・ピアノ:光の建築家)
2021年 『Rosa rosae. La Guerra civil』(スペイン内戦入門)短編
2021年 『Goya 3 de mayo』(ゴヤ 5月3日) 短編 
2021年 『情熱の王国』
2022年 『壁は語る』

作品情報

VIVA SAURA!
2024年6月1日(土)より、ユーロスペースほかにて追悼ロードショー

『情熱の王国』 
監督・脚本:カルロス・サウラ 撮影:ヴィットリオ・ストラーロ 
出演:アナ・デ・ラ・レゲラ、マヌエル・ガルシア=ルルフォ、グレタ・エリソンド、イサーク・アラトーレ、イサーク・エルナンデス
2021年|スペイン=メキシコ|DCP|95分|カラー

演出家のマヌエルが次に考えている舞台は、ミュージカルを作るためのミュージカル。構想からキャスティング、完成するまでを描くには、振付師が不可⽋だった。彼は元妻であり著名な振付師、サラに助けを求める。ただ、サラも舞台を作る⼀員として舞台に出るのだが、交通事故で⾞椅⼦になった設定だ。キャスティングでは、何とかオーディションに受かろうとする若者たちの緊張感と競争⼼、そこから頭⾓を表す男⼥3⼈が⽣き⽣きと描かれる。その中の⼀⼈、イネスは⽗親と地元ギャングとの対⽴を⼼配しながら稽古に励む。メキシコの数々の⼒強い伝統⾳楽がアレンジされダンスとコラボレーションする中で、悲劇と虚構と現実が交錯する舞台が⽣まれる。

『壁は語る』
監督・出演:カルロス・サウラ 撮影:フアナ・ヒメネス, リタ・ノリエガ
出演:ミケル・バルセロ、Suso33、Zeta、Musa71、Cucoほか
2022年|スペイン|DCP|75分|カラー

芸術の起源についてカルロス・サウラが、監督と主演を務めながら探求するドキュメンタリー映画。先史時代の洞窟における最初のグラフィック⾰命から、最も前衛的な都市表現まで、創造的なキャンバスとしての「壁」と芸術の進化と関係を描く。⼈類進化の偉⼤な思想家フアン・ルイス・アルスアガや、現代アートを代表するアーティスト、ミケル・バルセロなど、個性的なアーティストが同⾏するパーソナルな旅。⾃らのことは多く語らないが、芸術に関して聞いたり語ったりする時にまるで⼦供のようになるサウラ。アルタミラ洞窟の専⾨家と共にスペインの遺跡や洞窟をめぐり、⼈なぜ壁に表現したのかを探る。そして、古代から現代のグラフィティへと若い世代の活動にも迫っていく。グラフィティ・アーティストのZeta、グラフィティ・ライターのMusa71、アーバン・クリエイターのSuso33、アーティストのCucoが、それぞれの視点から、なぜ、壁に描くのかを示すことによって、時空を超えて太古の壁画アーティストと繋がっていく。

配給|Action Inc.

公式サイト https://www.action-inc.co.jp/saura

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