8月に逝去したアラン・ドロンの追悼上映 「Adieu(さらば) アラン・ドロン」がBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下で11月8日(金)より実施されることが決定した。『太陽がいっぱい 4Kレストア版』『若者のすべて 4Kレストア完全版』『冒険者たち』が上映される。
2024年8月18日、フランスの俳優アラン・ドロンが88歳で逝去した。60~70年代はその類まれなる美貌で二枚目の代名詞として広く知られ、紳士服のCMでも活躍するなど特に日本においては俳優のみならず、特別な存在だった。
Bunkamuraル・シネマは、『カサノヴァ 最後の恋』(1994)公開時にプロモーションで来日中のアラン・ドロンを迎えジャパンプレミアを行ったほか、2017年には俳優生活60周年を記念した特集上映を開催し、好評を博すなど、所縁の深い劇場(現在Bunkamuraル・シネマは「Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下」として渋谷駅前・宮下エリアに移転し営業)。
アラン・ドロンの偉業に敬意を表し、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下にて彼の生誕日にあたる11月8日より追悼上映「Adieu(さらば) アラン・ドロン」の実施が決定した。
上映作品
『太陽がいっぱい 4Kレストア版』 Plein soleil
1960年/119分 配給:KADOKAWA
監督:ルネ・クレマン 原作:パトリシア・ハイスミス
出演:アラン・ドロン、モーリス・ロネ、マリー・ラフォレ
© 1960 STUDIOCANAL - Titanus S.P.A all rights reserved
まばゆい太陽が照りつける地中海の上で実行された、美しく孤独な野心家の殺害計画
アラン・ドロンの映画人生を決定づけた代表作
貧しい青年トムは、イタリアで豪遊する金持ちの息子フィリップと一緒に、ヨットで海に出かける。フィリップからの不当な扱いに怒りを覚えたトムは、船上でフィリップを殺して彼になりすまし、彼の財産と美しい恋人を奪おうとするが……。
『禁じられた遊び』のルネ・クレマンによる緻密な演出が功を奏し、ニーノ・ロータのテーマ曲と共に大ヒット!ドロンの名を世界に轟かせた犯罪サスペンス。
『若者のすべて 4Kレストア完全版』 Rocco e i suoi fratelli
1960年/179分 配給:ザジフィルムズ
監督・脚本:ルキノ・ヴィスコンティ
出演:アラン・ドロン、レナート・サルヴァトーリ、アニー・ジラルド、クラウディア・カルディナーレ
©1960 TF1 Droits Audiovisuels - Titanus
1960年ヴェネチア国際映画祭審査員特別賞受賞
アラン・ドロンを主役に巨匠ヴィスコンティが描くネオ・レアリズモの一大叙事詩
ミラノに住む長男を頼りに、移住してきたパロンディ家。婚約者に夢中の長男は、ボクシングに身が入らない。次男はボクサーとして成功への糸口を見つけ家計を支えるが、ナディアに溺れ、落ちぶれてゆく。三男ロッコは洗濯屋で働き、やがて兵役につく。そんな折、ロッコも偶然にナディアと出会い、惹かれ合う。2人は、ささやかな愛を育んでいくが、やがて無慈悲な運命が訪れる……。
『冒険者たち』 Les Aventuriers
1967年/113分 配給:ザジフィルムズ
監督:ロべール・アンリコ 原作:ジョゼ・ショヴァンニ『生き残った者の掟』
出演:アラン・ドロン、リノ・ヴァンチュラ、ジョアンナ・シムカス、セルジュ・レジアーニ、ポール・クローシェ、ハンス・メイヤー
© Societe Nouvelle de Cinematographie(SNC)-Paris 1967.
パリの大空、煌めくアフリカの海、そして海底に眠る財宝……
三人の男女の愛と友情を描いたロマンあふれる青春レクイエム!
パリ郊外の飛行クラブで教官を務めるマヌー、レーシングカーの画期的なエンジン開発にいそしむローラン、そして前衛彫刻家の卵、レティシア。微妙なバランスの友情で結ばれた三人は、コンゴ動乱の際に海底深く沈んだ5億フランの財宝を引き上げるため、アフリカの海に旅立った。しかし、その財宝をつけ狙う一味が現れ……。
秦 早穂子/映画評論家
――2017年「<俳優生活60周年記念特集上映>アラン・ドロンに魅せられて」寄稿より
「私はドロンの話に耳を傾け、薄い青い瞳を見ていた。」
“イル・イラ・ロアン、彼は遠くに行くだろう”。この言葉の響きに光が見える。“彼は成功するだろう”という意味だ。
1959年パリ、11月。マラケイ河岸のアラン・ドロンのアパルトマンを初めて訪問。アール・デコ様式の建物は、玄関兼サロンを入ると左右に分かれる構造で、左が代理人ジョルジュ・ボーム。右がアラン・ドロンの居室は寝室でもあり、大きなベッドがひとつ。座る椅子がないので、ベッドの上に腰かける。彼はベッドの上に横座りになり、録音器を真ん中に相対した。この年の7月。撮影中のジャン=リュック・ゴダールの『勝手にしやがれ』のラッシュ20分を見て、買い付けを決定した一件を耳にした製作者アキム兄弟は、撮影中の作品を同じ条件で、セールスしてきた。アンリ・ドウカのカメラは圧倒的だったが、契約条件は厳しい。アラン・ドロンへの取材を申し込んだのは雑誌のためだが、選択決定の重要な鍵であった。あの時代、外国で働く日本人は何でもした。ドロンの人気は日本では出始めてはいたが、お膝元のフランスは今ひとつ。フィアンセ、ロミー・シュナイダーのスイスの別荘での会見を決めたのはドロン自身。だが、二転三転し、すでにロミーの親族側の波風が立ち始めていた。
人も映画も、最初が勝負。『太陽がいっぱい』について、お互い一切語らず、私はドロンの話に耳を傾け、薄い青い瞳を見ていた。目千両。その目は何も見ていない。彼自身だけを見ていた。自分の未来だけを見ていた。男優が時折見せる、媚も色気もなかった。何のために私が来たのかを熟知していて、彼の計画についてのみ話した。夢を語るのではなく、手に入れんとしている設計図を語った。泥水を飲みながら、ようやく表舞台に出て来た青年は、ベルモンドやブリアリのようなお坊ちゃん育ちではなく、個性も演技力も未知数。ヌーヴェル・ヴァーグの流れに乗れるタイプではなく、美貌だけが頼り。だがフランスでは、その美しさは、よくあるタイプで珍しくない。だから、イタリア、ハリウッドへの飛躍を試みていた。インテリではないが、勘は抜群。仕事に関しては真剣で、冷静だった。アラン・ドロン、25歳になったばかりの秋は、鮮烈な予感に満ちていた。アパルトマンを出ると、夜のセーヌ河が黒く光る。“イル・イラ・ロアン”。私は呟いた。
追悼上映「Adieu(さらば) アラン・ドロン」
2024年11月8日(金)より限定上映
※上映スケジュールは決定次第劇場HPに掲載。
上映作品: 『太陽がいっぱい 4Kレストア版』、『若者のすべて 4Kレストア完全版』、『冒険者たち』
会場: Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下
https://www.bunkamura.co.jp/cinema-miyashita
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