2023年にアジア初の開催となり好評を博した「カンヌ監督週間 in Tokio」の第2回目となる「カンヌ監督週間 in Tokio 2024」が12月8日(日)から開催されることが決定した。あわせてポスタービジュアル・予告編、上映ラインナップ全11タイトルが解禁された。
VIPO(映像産業振興機構)では、ヒューマントラストシネマ渋谷にて「カンヌ監督週間 in Tokio 2024」を12月8日(日)から19日(木)の12日間にわたって開催する。本特集は、ソフィア・コッポラ、スパイク・リー、ジム・ジャームッシュ、グザヴィエ・ドラン、大島渚、北野武、黒沢清、三池崇史、西川美和……名だたる監督たちを見出してきたカンヌ国際映画祭の唯一無二のセレクションである「監督週間(Quinzaine des cinéastes/Director’s Fortnight)」の最新ラインナップを日本国内でいち早くスクリーンで鑑賞できる貴重な機会となる。
「カンヌ監督週間 in Tokio 2024」では、昨年に急逝したソフィー・フィリエール監督がアニエス・ジャウィを主演に中年の危機を描いた壮大な遺作『これが私の人生』(英題:This Life Of Mine)をオープニング作品に据え、セザール外国語映画賞に輝いた『8月のエバ』(19)で知られるスペイン人監督ホナス・トルエバ『ジ・アザー・ウェイ・アラウンド(英題)』、カナダの鬼才マシュー・ランキン『ユニバーサル・ランゲージ(原題)』、70〜80年代にかけての偏執的なスリラーの巨匠たちへオマージュを捧げたライアン・J・スローン監督による初長編作品『ゲイザー(英題)』ほか全11作品を上映する。
日本からは、カンヌ現地でも高く評価され「国際映画批評家連盟賞」を女性監督として史上最年少で見事受賞した山中瑶子監督『ナミビアの砂漠』、日本アニメーションとしては6年振りに選出された、久野遥子監督・山下敦弘監督『化け猫あんずちゃん』、そして世界中の映画祭から引っ張りだこの山村浩二監督による短編アニメーション『とても短い』が過去の短編6作品とあわせて上映される。
また、開催期間中は「監督週間」の現アーティステック・ディレクターであるジュリアン・レジの来日をはじめ、豪華ゲストを招いてのトークイベントも予定している。イベント詳細は後日発表される。
1968年、作家性や芸術性の高い作品を称揚するためにカンヌ映画祭に創設された「監督週間」だが、そのセレクションは決してハートウォーミングな作品やラブコメなどではなく、ラディカルで自由な矢を放ち、見る者の心を打つメッセージ性の高い作品ばかり。日本の映画ファン、映画・映像業界に携わる人たち、そしてこれからその世界に飛び込もうとしている若者たちへ向けて、VIPOがセレクトした世界の最前線の映画たちを届ける。全11作品のラインナップは以下のとおり。
カンヌ監督週間 in Tokio 2024 ラインナップ全11作品(各2回上映)
<作品紹介:矢田部吉彦>
1)THIS LIFE OF MINE『これが私の人生』(2024年/99分/フランス)監督:ソフィー・フィリエール
【作品紹介】55歳の女性、愛称バービー。軽い不安を抱え、セラピーにも通うが効果は怪しい。成人した子どもたちとの関係も微妙だし、親しく話しかけてきた男性にも全く見覚えが無く、バービーは不安を募らせる…。人生後半に差し掛かった女性の軽妙にして真摯なポートレート。一時代を築き、23年7月に57歳で逝去したフィリエール監督の遺作であり、撮影後に遺族が作品を完成させた。監督の分身として見事な存在感を発揮するアニエス・ジャウィも素晴らしい。
©CHRISTMAS IN JULY
2)『ナミビアの砂漠』(2024年/137分/日本)監督:山中瑶子 企画製作・配給:ハピネットファントム・スタジオ
【作品紹介】21歳のカナは優しい会社員から、野心的なクリエイターへと交際相手を変えるが、乾いた心が潤うことはなく、なかなか人生を自分のものに出来ない。奔放な感情と上手く対峙できずにもがく主人公の心境を生々しく捉え、新鮮で鋭い切れ味とベテランのような安定感の双方を兼ね備えた山中監督は、20代にして「監督週間」入りを果たした。その世界を完璧な形で体現した河合優実との奇跡的なコラボレーションが、日本映画史に残る輝きを放っている。
©2024「ナミビアの砂漠」製作委員会
3)EAST OF NOON『イースト・オブ・ヌーン』(2024年/109分/オランダ、エジプト、カタール)
監督:ハラ・エルクシ
【作品紹介】愚かな権力者が支配する海辺の街。青年アブドは警察の汚れ仕事を手伝う一方、宅録音楽で成功を夢見ている。恋人のヌンナも体を張りながら毎日を生き抜く。そして祖母は地元の語り部として、若者の運命を導いていく。現実から取り残されたような地で、自由と想像力に希望を託すタイムレスな寓話。モダンとレトロが交わる独特の演出が際立つエルクシ監督はインスタレーションや彫刻なども手掛けるアーティストであり、本作が長編第2作。
4)EAT THE NIGHT『イート・ザ・ナイト』(2024年/106分/フランス)
監督:キャロリーヌ・ポギ&ジョナサン・ヴィネル
【作品紹介】パブロとアポの兄妹は長年に渡りオンラインゲームのダークヌーンにハマってきたが、突然のサービス終了の知らせに衝撃を受ける。アポが自身のアバターとの別れを惜しむ一方で、現実世界でヤクの取引に携わるパブロは新しい相棒との関係を深め、敵対グループといがみ合う。スリラーとロマンス、リアルとバーチャルが巧みに交錯するエモーショナルな青春映画。ベルリン映画祭で初短編が最高賞を受賞したコンビ監督による2本目の長編作品。
©ATELIER DE PRODUCTION - AGAT FILMS & CIE
5)GAZER『ゲイザー』(2024年/114分/アメリカ)監督:ライアン・J・スローン
【作品解説】脳に珍しい障害を抱える若い母親が、娘のための金を必要とするあまり、怪しい女から奇妙な仕事の依頼を引き受ける。やがて、欺瞞と復讐と殺人の世界に足を踏み入れる羽目になる…。70~80年代のパラノイア・スリラーにオマージュを捧げる本作は16mmフィルムで撮影され、ジャンルへの愛着に溢れる。主演女優とともに脚本を執筆したスローン監督は電気技師から映画作りに転身し、低予算で手掛けた長編第1作が本作である。
©Telstar Films
6)『化け猫あんずちゃん』(2024年/97分/日本)監督:久野遥子、山下敦弘 配給:TOHO NEXT
【作品紹介】母を亡くした小5の少女かりんは、父の地元に連れてこられ、祖父が住職の寺で夏を過ごす。寺には人間のように暮らす37歳の化け猫のあんずちゃんが出入りしており、かりんは驚愕するが、やがてあんずちゃんに重要な願い事を相談する…。森山未來が演じるあんずちゃんを山下監督が実写で演出し、取り込んだ映像のアニメーション化プロセスを久野監督が率いた。おっさんキャラの化け猫の絶大なインパクトは、カンヌを爆笑させた!
©いましろたかし・講談社/化け猫あんずちゃん製作委員会
7)GOOD ONE『グッド・ワン』(2024年/90分/アメリカ)監督:インディア・ドナルドソン
【作品解説】17歳の少女が父とその友人との山登りに付き合う。山の経験のある父娘は、不慣れな友人をからかいながら、3人で和やかに自然を楽しむ。しかし少女は次第に大人とのずれを意識していく…。些細だが軽はずみな言動によって揺れていくティーンの繊細な内面を丁寧に掬い上げ、ナチュラルなタッチが抜群のセンスを感じさせるドナルドソン監督の長編デビュー作。「良い子」のイメージを押し付けられる少女を鮮やかに演じた主演のリリー・コリアスにも注目。
©Visit Films
8)MONGREL『モングレル (白衣蒼狗)』(2024年/128分/台湾、シンガポール、フランス)
監督:チャン・ウェイリャン(共同監督)イン・ヨウチャオ
【作品紹介】タイから台湾に渡った青年オームは、山岳地帯で資格を持たずに介護業務を行っている。不法滞在外国人たちを働かせる非情な組織に加担しながら、オームは介護する相手に自らの苦境を重ねていく…。暗闇と省略を効果的に用い、ミニマルなリアリズムで追い込まれた人々の過酷な心境を描き切ったウェイリャンとヨウチャオ共同監督は、カンヌ映画祭全体を対象とする新人賞「カメラドール」でスペシャル・メンション(実質2等賞)を受けた。
9)THE OTHER WAY AROUND『ジ・アザー・ウェイ・アラウンド』(2024年/114分/スペイン、フランス)
監督:ホナス・トルエバ
【作品紹介】映画監督のアレと俳優のアレックスは15年に渡る交際を終わらせることにする。出会いより別れを祝福すべきというアレの父親の言葉に従い、同棲解消記念パーティを企画するが、友人たちは困惑する。カップルの関係に映画作りを交えたメタな要素も持つロマコメの一種であり、ベルイマンやトリュフォーへの目配せも嬉しい。女性の内面や人間関係のもつれを描くことに長けるトルエバ監督は、スペイン内外の映画賞受賞も多い実力派監督のひとり。
©Los Ilusos Films, Les Films du Worso and Memento International
10)UNIVERSAL LANGUAGE『ユニバーサル・ランゲージ(原題)』(2024年/89分/カナダ)
監督:マシュー・ランキン 配給:クロックワークス
【作品解説】雪が積もる街に、複数の人物が交差する。少女は厚い氷の中に閉じ込められたお札を手に入れるべく奔走する。少年はメガネを七面鳥に奪われたと訴える。つまらない役所仕事を辞めたマシューは、母に会うための謎めいた旅に出る。イランとカナダが繋がる不思議な地にて、シュールで奇妙なエピソードが絶妙に絡み合う。独自の世界観と映像センスで魅了する実験映画出身のマシュー・ランキン監督による長編第2作にして、米アカデミー賞のカナダ代表作品。
11)山村浩二監督短編集『とても短い』(2024年/71分/日本)監督:山村浩二
【作品解説】「監督週間」短編部門に選出された『とても短い』は、米国人の翻訳家が企画者となり、古川日出男の原作を古川本人が熱く朗読し、東京を舞台に、ある男の一生と「だ」という音から始まる言葉の数々が縦横無尽に画面を駆け巡るアニメーションと日本文学の合体作である。その他、山村監督の名を国際的に知らしめた『頭山』(03)や、フランス童話作家を原作とする『年をとった鰐』(05)など、珠玉の短編作品7本を特集上映する。
2024©Yanai Initiative
カンヌ監督週間in Tokio 2024
【日程】2024年12月8日(日)〜19日(木)《12日間》
【会場】ヒューマントラストシネマ渋谷(東京都渋谷区渋谷1-23-16 ココチビル7・8F)
【鑑賞料金】
一般:2000円/大学:1500円/小中高:1000円/シニア:1300円/ハンディキャップ割引:1000円
TCG会員:あり(いつでも1400円) ※火・木1200円割引ナシ
【前売券】ムビチケ前売券(オンライン):1600円 https://mvtk.jp/film/Z0000067
※水曜サービスデー(毎週水曜日):1300円
※イベント回:2000円均一(割引なし・特別鑑賞券使用不可)
■主催:監督週間(Quinzaine des Cinéastes/Directors' Fortnight)/特定非営利活動法人映像産業振興機構(VIPO)
■共催:東京テアトル
■特別協力:三菱UFJ銀行
■協力:金延宏明(ノブ・ピクチャーズ)/CINEFRANCE STUDIOS/Filmarks/レプロエンタテインメント/活弁シネマ俱楽部/ELLE/AKIRA H/在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ/スペースロック
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