2025年・第97回アカデミー賞®長編アニメ賞・国際長編映画賞にノミネートされている『Flow』が3月14日(金)より全国劇場公開。このたび、30歳のラトビア出身のクリエイター、ギンツ・ジルバロディス監督のインタビューが到着した。
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©Kristaps Kalns
本作は2024年カンヌ国際映画祭「ある視点」部門でプレミア上映を飾り、同年のアヌシー国際アニメーション映画祭で審査員賞、観客賞含む4冠を受賞。2025年アカデミー賞®では長編アニメーション賞、国際長編映画賞の2部門に堂々ノミネートされた。メガホンを取ったのはたった一人で作り上げた長編デビュー作『Away』が世界中で高く評価されたギンツ・ジルバロディス。長編2作目となる本作ではフランスのアニメーション監督レオ・シリー=ペリシエ(『夜のとばりの物語』ほか)、『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』らを手掛けたプロデューサーのロン・ディアンらと協働。この経験が『Flow』の脚本にも反映されているという監督が、本作の重要な要素や、アニメーション、キャラクターについて語った。
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——自然、広大な風景、そして動物が本作の重要な要素です。子どもの頃、自然や動物とどのようなつながりがありましたか?
昔から自然の中にいるのが好きでした。10代で猫を飼い、のちに犬を飼うようになったことが私にインスピレーションを与えてくれました。このような設定が私の映画で繰り返し出てくる理由は、映画制作には長い時間がかかるので、自分にとって心地よい場所を舞台にしたいからです。私は比較的に簡単に自然のパノラマを作り出したり、自分で選んだ実際の風景の一部を組み合わせたりすることができます。そして、それらをストーリーテリングに用います。それらは単なる背景ではなく、物語に不可欠なものです。
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——子どもの頃にあなたを魅了した実写映画やアニメーション映画は何ですか?
映画に熱中し始めたのは13歳か14歳の頃でした。父がたくさんのクラシック映画、ヒッチコックやキューブリックの作品を見せてくれて、夢中になったのです。それ以来、主に実写映画を見ていますが、アニメーションもたくさん見ています。尊敬する監督はたくさんいますが、もちろんアニメーションでは宮﨑駿監督です。彼の映画の予測不能なところが好きです。彼は映画を作り始める時、物語の結末さえ決めておらず、創作していく過程でそれを見つけるそうですが、私もそうです。過程はまったく同じではありませんが、脚本が完成したあとも物語が発展し続けます。最初のシーンに取りかかり、それを作りながらどんな映画になるか見つけていくのです。実写では、ポール・トーマス・アンダーソンの初期の作品が好きです。アルフォンソ・キュアロンもすばらしい。長回しのショットもさることながら、シンプルで短いショットまで、あらゆるショットがとても感動的で緻密です。キュアロンの作品はとてもリアルでドキュメンタリーのような印象を与えますが、背景の小さな物まですべて入念にデザインされています。映画におけるこのバランスが好きです。実際は作られたものであるにもかかわらず、それを感じさせない。このバランスが強い没入感を生むのです。
——個人的なレベルで、またアーティスト、ストーリーテラーとして、あなたにとってアニメーションとは何ですか?
実写映画よりも観客の潜在意識に深く入り込めるような気がします。アニメーションは実写ほど文化や言語の壁に影響されません。より普遍的で根源的なものと言えます。でも同時に、アニメーションを実写とは違うものと見なすべきではないとも思います。ストーリーテリングの手法の一つに過ぎませんからね。私が思い描いていた動物やカメラの動きからして、『Flow』はアニメーションでしか実現できない気がしました。とはいえ『Flow』は実写映画の影響を強く受けているので、ただのアニメーション映画とは見なされたくありません。私が実写とアニメーションから受けた影響をすべて混ぜ合わせたような映画なのです。
——『Flow』の冒頭では、猫はとても理想的な賢いヒーローのように見えます。でもやがて、他の動物たちもまた、あまりポジティブではない動物も含め、私たちの別の側面を象徴しているようにも見えてきます。
賢いヒーローというよりも、猫には嫌なヤツのように振る舞ってほしかったのです。猫は時にとてもわがままで無礼な動物だからです。でもかわいいので許してしまうのですけどね。はじめのうち、猫はとても自立していて、他の動物と一緒にいたがりません。単純で教訓的な考えに基づく映画にはしたくなかったので、正反対の旅を辿る犬のキャラクターでバランスを取ることにしました。すべての動物の性格は、社会対個人という考えに結びついています。今、猫と犬について話しましたが、たくさんの物を集めるキツネザルもいます。仲間が自分を受け入れてくれるのは、ありのままの自分ではなく自分の物質主義的価値観のためだと、キツネザルは考えているのです。つまりキツネザルにも所属の欲求があるわけです。そしてヘビクイワシも、所属したい、群れに戻りたいと切望しています。カピバラは、物語の中であまり変化しないので、ちょっと異色ですね。この物語にカピバラを選んだのは、カピバラがあらゆる動物とうまく付き合い、ライオンやワニと一緒に穏やかに眠っている映像を見たからです。この物語にそういうキャラクターを登場させるのは自然なことだと思いました。
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——『Flow』というタイトルとその意味について少しお話しいただけますか。
タイトルはこの映画のロードムービー的な側面を表していると思います。物語は主に、絶えず前進するボートの中で展開されますからね。また、私にとっては、キャラクターたちのゴールのような、明確な終着点があることも重要でした。それに、恐怖から逃れるために常に塔に登ろうとする猫を描くことで、全編に緊迫感を持たせたかったのです。このエピソードは猫の性格と密接に結びついています。猫は問題から逃げるために常に何かに登っているのです。家に登り、ボートのマストに登る。巨大な塔にすら登ってしまう。問題から逃げるというのは、とても人間的な行動だと思います。多くの人がそうしますし、私自身もおそらくそうします。でも最終的に、猫は下りてくるのです。たとえ少し嫌な気分になるとしても、問題に向き合い、危険を冒そうと決意して。
Flow
2025年3月14日(金)よりTOHOシネマズ日比谷他にてロードショー
監督:ギンツ・ジルバロディス
2024/ラトビア、フランス、ベルギー/カラー/85分 配給:ファインフィルムズ 映倫:G
原題:Flow
©Dream Well Studio, Sacrebleu Productions & Take Five.
公式サイト flow-movie.com
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