「二十世紀の至宝」と謳われ、世界映画史が誇る孤高の映画作家カール・テオドア・ドライヤー監督の特集上映「奇跡の映画 カール・テオドア・ドライヤー セレクション」が12月25日(土)より全国順次開催されるのを前に、著名人からの推奨コメントが到着した。またデンマークから貴重なメイキング写真も解禁された。
1889 年 2 月 3 日にデンマーク・コペンハーゲンで生まれ、79 年の生涯で長編 14 作品を発表したカール・テオドア・ドライヤー。人間の心の本質をフィルムで捉え続け、常に独創的で革新的な作品を生み出し後世に多大なる影響を与えた。
今回の上映作品は、“人間”ジャンヌ・ダルクを描いた無声映画の金字塔『裁かるゝジャンヌ』、魔女狩りが横行した混沌の時代を映し出した衝撃作『怒りの日』、家族の葛藤と信仰の真髄を問い、ヴェネチア国際映画祭の金獅子賞を受賞した傑作『奇跡』、愛を探し求め続けた一人の女性の姿を完璧な様式美の映像で捉えた遺作にして集大成的作品『ゲアトルーズ』の 4 作品をラインナップ。すべてデジタルリマスターされた素材での貴重な上映となる。
このたび映画監督をはじめとした著名人から絶賛コメントが到着。フランスの名匠アルノー・デプレシャン監督は『ゲアトルーズ』について「サイレント映画が音を迎え入れた作品として革命的な作品と言えるだろう。」、三宅唱監督は『怒りの日』について「何といえばいいか言葉にならず、狂おしい。何度みても驚く。」、深田晃司監督は『奇跡』について「私たちの現実には一生起こりえないかもしれない「奇跡」に、ある種の映画は軽やかに到達してしまう。ドライヤーの『奇跡』はまさにその一本である。」と語った。
また、『愛のまなざしを』が絶賛公開中である万田邦敏監督は「ドライヤーほどいまもって先端的な映画作家は他にいない。」と寄せ、ミュージシャン・作家の中原昌也は「いつまでもスクリーンで鑑賞されるべき傑作の数々に、ひたすらにため息。」とコメントした。
その他、『ドライブ・マイ・カー』の音楽を手掛けた石橋英子、文筆家・五所純子、映像作家・石原海、映画執筆家・児玉美月よりコメントが寄せられている(コメント全文は以下にて)。
併せてデンマークより、『裁かるゝジャンヌ』『奇跡』『ゲアトルーズ』の撮影当時の貴重なメイキング写真が到着。『裁かるゝジャンヌ』からはジャンヌが火刑に処されることになる処刑場のセットを背にしたドライヤー監督の姿を捉えたカット、『奇跡』からはボーオン家長男の妻・インガーを演じたビアギッテ・フェザースピルに監督が真剣に演技指導をしている姿、『ゲアトルーズ』からはドライヤー監督が真剣な眼差しで撮影を見届ける姿とスタッフと談笑するカットの計 4 点が解禁となった。
特集上映「奇跡の映画 カール・テオドア・ドライヤー セレクション」は 12 月 25 日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次にて開催。
「奇跡の映画 カール・テオドア・ドライヤー セレクション」
コメント一覧(敬称略・順不同)
『ゲアトルーズ』は、サイレント映画が音を迎え入れた作品として革命的な作品と言えるだろう。
燃えるような熱さと、凍えるような冷酷さの両方をあわせ持ち、その緊張関係が、この作品の美しさとなっている。
アルノー・デプレシャン(映画監督)
ドライヤーほどいまもって先端的な映画作家は他にいない。それが証拠に、『裁かるゝジャンヌ』から『ゲアトルーズ』に向けて進化していく、登場人物のあの形容不能で奇妙な「まなざし」が持つ刺激の秘密を、批評でも実作でも解き明かせたものはいないのだ。
万田邦敏(映画監督)
私たちの現実には一生起こりえないかもしれない「奇跡」に、ある種の映画は軽やかに到達してしまう。
ドライヤーの『奇跡』はまさにその一本である。
しかし考えてみれば映画もまた私たちにとって一つの体験であるのだから、そこに起きる奇跡はやはり本物の奇跡なのだ。
深田晃司(映画監督)
たとえば『怒りの日』冒頭、〈なにか〉が動きだす。ゆっくりと、すこしずつ、しかし確実に動きだす。
その変化が美しくて、恐ろしくて、艶かしくて……
いや、何といえばいいか言葉にならず、狂おしい。何度みても驚く。
三宅唱(映画監督)
ドライヤーの映画ほど、見た後に人間の顔を当たり前のように見れなくなる映画監督はいない。
火葬場で骨が顔を構成している様を見るように、登場人物の顔そのものから目が離せなくなる。
破れ目が見えてくる。まるで向こう側から破れ目を通してこちらに光が差してくるようだ。
石橋英子(音楽家)
"吸血鬼が日光で腐敗するような一瞬を、永遠の時間に投射するエクスタシー。
ドライヤーは映画に神々しい光の奇跡を発見した。
いつまでもスクリーンで鑑賞されるべき傑作の数々に、ひたすらにため息"。
中原昌也(ミュージシャン・作家)
人間よ、わたしからさようなら。
そんな声が聞こえる。聖女の、魔女の、狂者の、妻の。
カール・テオドア・ドライヤーの映画を観ると、世界に置き去られる。
そこは凍土でありながら、炎が燃えさかるところ。
五所純子(文筆家)
「奇跡」を観るとき、アタシたちは文字通り奇跡を目撃することになる。
劇中で正気を失っている人として描かれる男を見てアタシは確信する。
何かを狂おしいほどに信じることは狂気と紙一重だということ、その美しい信念の輝きに、この映画を通してアタシたちは触れることになる。
石原海(映像作家)
瞳に吸い込まれた。ドライヤーの描く女たちの瞳があまりに固有な輝きを放っているから。
彼の映画を観ている間、映画の歴史と複雑な関係を切り結ぶこの自らの女としての身体を、ゆえに私は忘れてさえいられるのだ。
児玉美月(映画執筆家)
奇跡の映画 カール・テオドア・ドライヤー セレクション
2021年12月25日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次開催
配給:ザジフィルムズ
『裁かるゝジャンヌ』© 1928 Gaumont
『怒りの日』『奇跡』『ゲアトルーズ』© Danish Film Institute
この記事が気に入ったらフォローしよう
最新情報をお届けします
Twitterでフォローしよう
Follow WEEKEND CINEMA