1996年にオーストラリア、タスマニア島の観光地ポート・アーサーで起こった無差別銃乱射事件「ポート・アーサー事件」初の映画化となる『ニトラム/NITRAM』に山岸凉子、黒沢清、石井裕也、藤野可織、小島秀夫、尾崎世界観ら11名の著名人からコメントが到着した。また黒沢清(映画監督)と樋口泰人(boid)によるトークイベントの開催、町田康らが寄稿する豪華パンフレットの販売もあわせて決定した。
何より「普通」の人生を求めていた 20 代半ばの青年が、いかにして同国史上最多の被害者を出した銃乱射事件の犯人となったのか。彼が、なぜ銃を求め、いかに入手し、犯行に至ったのか。本作『ニトラム/NITRAM』は事件当日に至るまでの犯人の日常と生活を描き出し、その不可解な半生を破格の臨場感と緊張感で描き出す。
犯人“ニトラム”を演じたのは『ゲット・アウト』『スリー・ビルボード』などのケイレブ・ランドリー・ジョーンズ。本作に出演するにあたって、ジャスティン・カーゼル監督の指導のもと、90 年代当時のオーストラリアの映画やTV、音楽を膨大に視聴し、オーストラリア訛りの英語を口の動きから習得、さらに体重も数 10 キロ増量するなど、徹底的な役作りに励んだという。
各国メディアでも、「ケイレブ・ランドリー・ジョーンズの演技が凄すぎる。賞をいくつ与えても足りないくらいだ」(RAI /イタリア)、「これほどまでに繊細なニュアンスと絶妙なグラデーションに富んだ殺人犯がかつて映画に存在したことがあっただろうか。ケイレブ・ランドリー・ジョーンズの演技に完全に打ちのめされた」(NME /イギリス)など、惜しみない賛辞が送られ、カンヌ国際映画祭、シッチェス・カタロニア映画祭、オーストラリア・アカデミー賞ほかで主演男優賞を受賞した。
今回、本作をいち早く鑑賞した著名人よりコメントが到着。映画監督の黒沢清、石井裕也、豊田利晃のほか、第 7 回講談社漫画賞受賞『日出処の天子』、第 11 回手塚治虫文化賞マンガ大賞受賞『舞姫 テレプシコーラ』、ジャンヌ・ダルクを描いた『レベレーション(啓示)』などの漫画家・山岸凉子ら11名がコメントを寄せている(コメント全文、一覧はページ下部にて)。
そして、計 60 ページのオールカラー豪華パンフレットの販売が決定。町田康(作家)、信田さよ子(公認心理士・臨床心理士)、磯部涼(ライター/『令和元年のテロリズム』)、小泉義之(哲学者)による『ニトラム』論のほか、監督ジャスティン・カーゼル、脚本ショーン・グラントら製作陣によるステートメント、インタビュー等が掲載されている。デザインは、銀杏 BOYZ や cero、雑誌「STUDIO VOICE」(No.411-415)等のアートディレクターを務めてきた坂脇慶が手がけた。
さらに公開二日目の3月26日(土)14:00 の回上映後には、新宿シネマカリテで、映画監督・黒沢清と爆音映画祭主宰、映画評論家の樋口泰人によるトークショーも決定。「いったいどうすればよかったのか。答えはない。実に過酷な映画体験だった」とコメントしている黒沢清監督から一体どんな話が聞けるのか注目だ。
『ニトラム/NITRAM』トークイベント概要
【場所】新宿シネマカリテ(http://qualite.musashino-k.jp/)
【時間】3月26日(土)14:00 の回上映後(約 25 分予定:15:50~16:15)
【ゲスト】黒沢清(映画監督)×樋口泰人(boid/映画評論家)
『ニトラム/NITRAM』コメント一覧 ※順不同・敬称略
最初の10分(いや5分か)で引き込まれる。
決して認められない結末だけれど、彼の気持ちが食い込む。
山岸凉子(漫画家)
あらゆる愛情を踏みにじるこの男が、世界のどこかに実在していたと考えるだけで嫌になる。いったいどうすればよかったのか。答えはない。実に過酷な映画体験だった。
黒沢清(映画監督)
この殺人犯は悪魔ではない。僕たちとはきっと些細な違いしかない。それが現実だと思う。
石井裕也(映画監督)
開始早々、これは危険だと思い、観るのをやめようとした。でも主人公の視点にがっちりと固定されて、もう身動きが取れなかった。この、映画に"捕まる"という感覚は初めてだったし、捕まって本当に良かった。
尾崎世界観 (クリープハイプ)
手渡されなければならなかったものを手渡されることのなかったひとつの家族。その息子と母親と父親のそれぞれの物語が、からみあい、ばらばらになってただここに落ちている。
花火の煙、草地、海と、それらの前でどうしようもなく息をしている主人公の小さくて大きな肉体を、私は忘れることができない。
藤野可織(小説家)
監督のジャスティン・カーゼルは 『トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング』以上に大口径な写実を、主演のケイレブ・ランドリー・ジョーンズは 『アンチヴァイラル』の時よりも破滅的な暴発感をもたらした! ニトラムを無差別銃乱射事件へと駆り立てたものは何だったのか? この映画の“装填”が完璧であればある程、犯行の爆発は現実の銃社会に覆い隠されてしまう。
小島秀夫(ゲームクリエイター)
観客を選ぶ映画だが、僕は救われたような気がした。
豊田利晃(映画監督)
理解できない事件を起こした犯人の母の思考は意外にも、理解できる。
幸せになって欲しい、、こうなって欲しい、、。
親は願う。ただ時にそれは、その子の今に100%満足と思っていないのと同義になるのかもしれない。
子供は未完だ。でも成長して100%に近づく存在でなく、未完の今も明日も既に100%のまま成長す
る存在だと肝に銘じようと思わされた。
とても力を持った映画だ。
赤江珠緒(フリーアナウンサー)
事件とは何か、社会とは何か、狂気とは何か、人間とは何か。
ニュース報道では絶対にわからない、映画でしか捉えられない「現実」がここにはある。
金原瑞人(翻訳家)
『ニトラム』は謎の多いポートアーサー・マサカーの真相を解き明かすというよりは、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズの、ひとりの人間の複雑で不可解な生がごろんとそこにあるかのような演技に象徴される通り、我々を惨劇へと至る過程にただただ立ち会わせる。
だからこそこの映画を観た者は、誰もが事件と無関係でいられなくなる。
磯部涼(ライター)
だだ、絶望的な気持ちを抱えて生活する中で、愛される事と愛する事との感情が彼にとっての答えとして銃の乱射と結びつける事には理解できませんでした。
ただケイレブ・ランドリー・ジョーンズ演じるニトラムの悲しい表情に僕の中にもある孤独が反応しました。
落合宏理(ファッションデザイナー)
ニトラム/NITRAM
2022年3月25日(金)より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷&有楽町ほか全国公開
監督:ジャスティン・カーゼル 脚本:ショーン・グラント 製作:ニック・バッツィアス 撮影:ジャーメイン・マックミッキング ACS 美術:アリス・バビッジ 編集:ニック・フェントン 音楽:ジェド・カーゼル 音響:スティーブ・シングル
出演:ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、ジュディ・デイヴィス、エッシー・デイヴィス、ショーン・キーナンほか
2021 年 / オーストラリア / 英語 / ヴィスタ / 110 分 / 原題:NITRAM / 日本語字幕:金関いな
配給:セテラ・インターナショナル
© 2021 Good Thing Productions Company Pty Ltd, Filmfest Limited
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