6月3日(金)、国立映画アーカイブで開催中の「EUフィルムデーズ2022」にてマルタ映画『ルッツ 海に生きる』のトークショーが行われ、タレントのユージと伊藤さとりが登壇した。
地中海の島国マルタ共和国製作の映画として日本初上陸となる『ルッツ 海に生きる』は、マルタ特有の伝統漁船ルッツの漁師ジェスマークの物語。誇りを持てる漁師という仕事と、家族を養うためにお金を稼がなければならないという現実との狭間でもがく主人公の苦悩と葛藤を描く。今回のイベントでは映画の内容にちなんで、仕事と家庭、子育ての両立についてのトークが繰り広げられた。
ユージ:海、空、映像の色合い、とてもよかったですね。この映画は、僕にとっては客観的にはとても見ることができなかったです。まるで自分が映画の中にいるような気持になってしまい、主人公のおかれた状況に胸が痛くなりました。
伊藤:彼の良いのは、本当に子育てもちゃんとやっていますよね。でも好きな仕事も続けていきたい、その気持ちがとてもすてきですよね。こんなによく理解している本作のアレックス・カミレーリ監督は、まだ独身だそうで意外でした。
ユージ:僕が共感したのは父になった瞬間の気持ちです。もちろん、すごく嬉しいのに、どうしようもない不安にも襲われるんです。自分の未熟さを実感して、前に進もうとしても、後戻りしてしまうような感覚になる。そんな父の気持ちがよく表れていました。
伊藤:でも彼は何も妻に相談せずに、どんどん決めてしまうでしょ。あと義母への対応の下手さ、あれはちょっと…。
ユージ:僕は彼の肩をもってあげたい。妻に相談ってなかなかできないですよ。悩みごとは自分だけでなんとかしたいと思ってしまう。だって妻や家族に相談したら、家族も一緒に悩んでしまうでしょ。気を遣ってしまいますよ。でも後でばれて、めちゃくちゃ怒られるのですけれど。
伊藤:“男なるものは”という日本の感覚は、マルタも一緒ってことなんでしょうかね?
ユージ:彼は徐々に漁師として追い詰められて、危ない方向に向かっていくでしょ。悪魔の囁きって聞こえてくるんですよ。そこもすごくリアルでした。彼は役者じゃなくて、本物の漁師だと聞いて驚いてしまいました。彼のこれからもすごく気になります。
伊藤:この映画に出たことで、魚を買ってくれる人が増えたそうなんです。潤っていますね。
ユージ:彼には潤ってほしいと思いますよー。彼はあの船の伝統があるから、葛藤しているんですから。実は自分はそういうところ、断捨離できてしまうタイプなんです。目に前に来た波には乗るタイプです。次に大きな波が来るかもしれないといって待ったりはしません。次々にきた波に乗ります。そんな感じなので、建築関係、塗装業・・・と一丁前を目指すのですが、いつも半人前で終わってきました。
伊藤:でもちゃんと波に次々と乗っていますよね。
ユージ:芸能界に入って、役者になろうと思っていたら、番宣が楽しすぎて、今度はバラエティがやりたいと思い、今の仕事になりました。これからどうなるかはわかりませんが、僕の船に、今は家族が乗ってきてくれています。だから僕はかじ取りに回って、船底を修理したり、後ろで支えていたい。家族には楽しんでよい景色を眺めてほしいんです。プライドを持っている場合じゃないよなと思います。あと、妻への思いやりをとにかく大切にしたいと思っています。僕には3人の子供がいるのですが、一番上の子は妻の前の夫との子供で、下の二人は僕との間の子供です。上の子とは血はつながっていません。でも血の繋がりなんて見えないし、関係ないと思っています。妻と僕のつながりで生まれた家族なんです。子供達には僕が妻を愛していて、妻が僕を愛している姿を見てもらいたいんです。
伊藤:なんかとっても素敵ですね。私もよく子供に「二人は愛し合っているの?」と聞かれます。喧嘩をしていると手をつなぐように言われたりもします・・・。子はかすがいですね。
ユージ:僕は母子家庭で育ったのですが、母に彼氏ができると、僕はとても嬉しかったんです。でも母は、僕の顔ばかりうかがっていた。別れた後に聞くと「お母さんはあなたといるのが一番幸せだから」と言われて・・・。「ちがう!僕はお母さんに幸せになってほしいんだよー」と思っていました。だから、僕と妻が愛し合っているのを見せることが、子供たちにも伝わると思っているんです。
伊藤:映画でも描かれている部分ですが、ユージさんにとって人生の岐路と思った時ってありますか。
ユージ:19歳の時に、アメリカにいる父に会いに行ったんです。暮らしたことも殆どなかった父と暮らすことになったんです。その一年が岐路だったと思います。父はハリウッドで俳優をしていました。よく「お父さんはハリウッド俳優なんですね」と言われますが、違います。ハリウッドで俳優をしている人はたくさんいるんです。でも、僕は頑張って俳優をしている父を見て、かっこいいなと思ったんです。それで、二十歳になって日本に戻り、俳優になりたいと思って。父の背中を見てそう思ったんです。
『ルッツ 海に生きる』は6月24日(金)より、新宿武蔵野館ほかにて公開。
ルッツ 海に生きる
2022年6月24日(金)より、新宿武蔵野館他にて公開
監督:アレックス・カミレーリ 出演:ジェスマーク・シクルーナ、ミケーラ・ファルジア、デイヴィッド・シクルーナ
2021年/マルタ/カラー/ビスタ/5.1ch/95分/日本語字幕:杉本あり 後援:駐日マルタ大使館
配給:アーク・フィルムズ/活弁シネマ倶楽部
©2021 Luzzu Ltd
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