話題のドイツ映画『さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について』がいよいよ今週末6⽉10⽇(⾦)より Bunkamura ル・シネマほか全国順次公開。このたび、監督インタビューが到着。また本編映像の一部も初解禁された。
ナチズムの⾜⾳迫る 1931 年のベルリンを舞台にした本作はベルリン国際映画祭で絶賛され、ドイツ映画賞最多 10 部⾨ノミネート主要 3 部⾨受賞の注⽬作。1931 年、作家を志してベルリンにやってきたファビアン。⼥優を夢⾒るコルネリアとの恋、ただ⼀⼈の「親友」ラブーデの破滅。ナチスの台頭前夜、世界が⼤きく変わる予感と不安の中で、⻘年ファビアンの「これからどこへ歩き出せばいいのか」という焦燥が、現代の若者にもビビッドに重なる。
原作は、「⾶ぶ教室」「ふたりのロッテ」などで知られる児童⽂学の⼤家エーリヒ・ケストナー、唯⼀の⼤⼈向け⻑編⼩説にして最⾼傑作と謳われる「ファビアン あるモラリストの物語」。ドイツの名匠、ドミニク・グラフ監督が、ドイツ映画界のトップスター トム・シリングを主演に、刺激的にカリカチュアされた映像を縦横無尽に駆使し、90 年前の⼩説を「今、この世界の映画」として完成させた。
このたび到着したインタビューでは、本作が⽇本初公開となるドミニク・グラフ監督が、ファビアン(トム・シリング)とコルネリア(ザスキア・ローゼンダール)のラブストーリーについて、「現代」と 1930 年代ドイツとのつながりについて、そしてスーパー8などを使⽤した刺激的な映像表現などについて語っている(インタビュー全文は以下にて)。
また、それに合わせ、本編映像の⼀部が特別公開。ファビアンが恋⼈のコルネリアに物語のキーにもなるドレスをプレゼントする場⾯だ。恋に落ちて間もない⼆⼈の感情が瑞々しく、ベルリンで暮らす息⼦を⼼配して故郷からやってきたファビアンの⺟親の様⼦も胸をうつ。
世界が⼤きく変わる予感と不安の中で、右か左か、前か後ろか、⼀体どこへ⾏くべきなのか。きっと現代の若者たちもファビアンの惑いに共感を覚えるであろう、今年度最注⽬のドイツ映画『さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について』は6月10日(金)より Bunkamura ル・シネマ他全国順次公開。
ドミニク・グラフ監督インタビュー
——この映画は、現代の地下鉄の駅から、1930 年代初頭のワイマール共和国へと観客を連れて⾏く移動ショットから始まります。なぜこのようなオープニングにしたのですか?
現代とのつながりを作りたかったのです。僕はこの映画をドキュメンタリー⾵に始めたら素晴らしいだろうと考えました。僕たちはカメラを構えてトンネルを通り抜け、過去の時代に⾄ります。そこには光が降りそそいでいますが、同時にドイツの最も暗い時代——これからどこまで暗くなっていくのかさえ分からないような時代でもあるのです。
——ケストナーの原作「ファビアン あるモラリストの物語」をどのように脚本にしていったのでし
ょうか?
僕がこの⼩説を初めて読んだのは、1979 年の⻄ドイツでのことでした。魅⼒的な、素晴らしい⽂学だと思いました。何にもましてラブストーリーであり、対話であり、叙事的な観察記録であり…。僕は、“これはファビアンとコルネリアのラブストーリーにできる”と直感しました。街路やカフェを舞台にした、エピソードの集積からなるラブストーリー。そしてそれをめぐる時代性を、構造化を排した⼿法で捉えようと思ったのです。⼩説「ファビアン あるモラリストの物語」は、単なる状況や感情、考えの奔放な叙述として素晴らしい作例です。ある瞬間における、何⼈かの⼈物について記述したもの。その場⾯はほとんど全てケストナー的です。それはジャズのよう、終わることのない即興演奏のようだといえますね。
——トム・シリングを本作の主役に据えようと思った理由はなんですか?
トム・シリングがこの役を演じたくないと⾔ったなら、僕はこの映画を撮らなかったでしょう。僕にとって彼は、この複雑な主⼈公を演じる上で理想的な俳優でした。
——この映画は部分的にスーパー8で撮られていますね。どのくらいデジタルで撮られているのですか?
80%くらいはデジタルで撮られていて、スーパー8 の映像やベルリンを映したモノクロのアーカイブ映像を組み込みながら編集しました。とても⾳楽的な作業でした。
——ドイツでは近年、この時代を背景にした映画やテレビ作品が多く、それは「現代が当時の社会状況に似ているから」だという声を聞きましたが、どう感じますか?
はい、その通りです。危機的な政治状況のために、ドイツでは今再び、あの時代への関⼼が急激に⾼まっています。私は間違いなく2022 年のドイツ社会を当時と重ね合わせています。あのポーランドや右翼・左翼の間で引き裂かれ、政治が⿇痺した共和国と。しかし今、ドイツだけではなく、世界中のほとんど全ての場所が同じ状況にあると⾔えるのではないでしょうか?
さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について
2022年6月10日(金)より Bunkamura ル・シネマ他全国順次公開
STORY
時代は 1931 年のベルリン。狂躁と類廃の 20 年代から出⼝のない不況へ、⼈々の⼼に⽣まれた空虚な隙間に⼊り込むように、ひたひたとナチズムの⾜⾳が聞こえてくる。どこか現代にも重なる時代、作家を志してベルリンにやってきたファビアンはどこへ⾏くべきか惑い、⽴ち尽くす。コルネリアとの恋。ただ⼀⼈の「親友」ラブーデの破滅。コルネリアは⼥優を⽬指しファビアンの元を離れるが……。
英題:Fabian - Going to the Dogs|原作:エーリヒ・ケストナー「ファビアン あるモラリストの物語」(みすず書房)|監督:ドミニク・グラフ|出演:トム・シリング(『コーヒーをめぐる冒険』『ピエロがお前を嘲笑う』『ある画家の数奇な運命』)、ザスキア・ローゼンダール(『さよなら、アドルフ』『ある画家の数奇な運命』)
2021 年|ドイツ|178 分|スタンダード|字幕:吉川美奈子
配給:ムヴィオラ
©Hanno Lentz / Lupa Film
© 2021 LUPA FILM / DCM Pictures / ZDF / Arte
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