HDリマスターで甦るアッバス・キアロスタミ監督の名作『クローズ・アップ』が「the アートシアター」のVol.4作品として、9月3日(土)より渋谷ユーロスペースほか、全国のアートハウスにて公開されることが決定した。
※2022年8月26日追記/本作の日本公開は延期されました。詳しくはこちら→https://weekend-cinema.com/35712

ヴェルナー・ヘルツォーク監督が、「史上最も素晴らしい映画作りについてのドキュメンタリー」と激賞するなど、世界中のシネアストたちからの絶賛を集めながらも、日本での上映機会が限られていた本作。昨年開催された“連続講座「現代アートハウス入門」ネオクラシックをめぐる七夜 Vol.2”での 1 回限りの上映は即満席となり、スクリーンで観たいとの声が多数上がるなか待望の劇場公開となる。
『友だちのうちはどこ?』やカンヌでパルムドールを受賞した『桜桃の味』などで知られる巨匠アッバス・キアロスタミ。『クローズ・アップ』はその美しく独創的なフィルモグラフィにおいてもひときわ異彩を放ち、いまなお数多くのシネアストを魔法のように魅了し続けている作品。

ある男が映画監督のモフセン・マフマルバフになりすまし、裕福な一家を騙したという詐欺事件を知ったキアロスタミ監督は、すぐに裁判所を訪れ、その公判の模様をカメラに収めることに成功する。さらに、事件に至る過程を当事者たち自身に演じさせて再現することで、事の次第を明らかにしていく。ドキュメンタリーと再現、虚構と現実を精巧に織り上げていった果てに、ついに映画は詐欺容疑で逮捕された青年の心の奥に秘められた真実を探り当てる。めくるめくサスペンスと不意打ちをくらわされたような衝撃的な感動。時代を超えても色褪せない名作が、HD リマスター版でスクリーンに甦る。
このたび「現代アートハウス入門」で本作のレクチャーを担当し、最新作『LOVE LIFE』(9/9 公開)が第79回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門に選出された深田晃司監督からコメントが到着した(コメントはページ下部にて)。
さらに、本公開に合わせて制作した新たなポスタービジュアルも解禁された。大島渚監督作『戦場のメリークリスマス 4K 修復版』『愛のコリーダ 修復版』、ウォン・カーウァイ監督特集上映「WKW 4K」(8/19 公開)などの宣伝美術を手がけるグラフィックデザイナーの成瀬慧によるデザインだ。

初日特典として、東京・ユーロスペースの初日 9 月 3 日(土)の来場者には本邦初公開時(1995 年)予告篇 35mm フィルムから作った「オリジナル栞」をプレゼント。
上映期間中、ユーロスペースでは山本久美子(東京外国語大学附属アジア・アフリカ言語文化研究所フェロー〈ペルシア文学・映画研究〉)、深田晃司(映画監督)らによるレクチャーを実施予定。日時などは追って劇場ホームページなどで発表される。
深田晃司(映画監督)コメント
奇跡。そうたやすく使うべきではないこの言葉を呟かざるをえない希少な機会の一つは
『クローズ・アップ』を前にしたときである。
人も空き缶も虚構も現実も何もかもがカメラの前で等価になる美しさと残酷さ。必見。
the アートシアターとは
時代や国や地域を超え、私たちに迫り、生々しい手触りを遺す映画。the アートシアターでは、HD リマスターにより鮮烈に甦り、今なお輝きを増す珠玉の作品をセレクト。時にその衝撃から人生までをも変えてしまう特別な映画体験をお届けするプロジェクト。
《これまでの上映作品》
Vol.1 ビクトル・エリセ監督『ミツバチのささやき』『エル・スール』[2017 年 3 月開催]
Vol.2 ヴィターリー・カネフスキー監督『動くな、死ね、甦れ!』[2017 年 10 月開催]
Vol.3 ジャック・ドワイヨン監督『ポネット』[2020 年 6 月開催]
クローズ・アップ
2022年9月3日(土)より3週間限定公開[東京]ユーロスペースほか全国順次
監督・脚本・編集:アッバス・キアロスタミ 撮影:アリ=レザ・ザリンダスト
出演:ホセイン・サブジアン、ハッサン・ファラーズマンド、アボルファズル・アーハンハー、メフルダード・アーハンハー、モフセン・マフマルバフ
1990 年|98 分|イラン|英題:CLOSE-UP
配給:ノーム/東風
© 1990 Farabi Cinema