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アニエス・ヴァルダ監督の代表作の一つであり、「漂流する女性」映画の金字塔的作品『冬の旅』が11月5日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次にて公開。このたび、第二弾ビジュアルと著名人によるコメントが解禁。またシアター・イメージフォーラムにて公開初日と二日目にトークイベントの開催が決定した。

「永遠に新しく、鮮烈で、観る者の胸に切実に訴えかける」

2019 年 3 月に生涯現役を貫いて 90 歳で逝去した、映画作家アニエス・ヴァルダ。『ラ・ポワント・クールト』(54)での鮮烈なデビューから、遺作となった『アニエスによるヴァルダ』(19)までフィクションとドキュメンタリーを縦横無尽に行き来し、常に市井に生きる人々の飾らない姿を活写し続けた。2015 年にはカンヌ国際映画祭名誉パルムドールを、2017 年には米アカデミー賞名誉賞を受賞し、グレタ・ガーウィグ、ケリー・ライカートといった今を時めく世界の映画人たちからも敬愛される、唯一無二の映画作家だ。

そんな彼女の劇映画の最高傑作との呼び声が高い作品が、1985 年に発表された『冬の旅』。フランス片田舎の畑の側溝で、凍死体として発見された若い女モナ。彼女の死に至るまでの数週間の足取りを、路上で出会った人々の証言から辿っていく―。

第 42 回ヴェネチア国際映画祭では最高賞の金獅子賞に輝き、主演を務めたサンドリーヌ・ボネールも第11回セザール賞最優秀主演女優賞を受賞。日本では 1991 年に劇場公開され、その後も限定的な上映は何度かあったが、今回は、2014 年にアニエス・ヴァルダ本人と撮影監督を務めたパトリック・ブロシェによる監修で 2K 修復された DCP 素材による上映となる。

今回解禁となった第二弾ビジュアルは、2014 年に修復されたことを記念して、フランス本国で作られたキーアートと同じカットを使用したものとなっている。

あわせて、ヴァルダに魅了され、彼女の作品を愛する著名人からのコメントも解禁。コラムニストの山崎まどかは「『冬の旅』は永遠に新しく、鮮烈で、観る者の胸に切実に訴えかける」と寄せ、作家の松田青子は「この理不尽で不条理な現代社会の中で、あきらめない、我慢できない女性の心には、モナがいる。自由を希求する彼女の不屈の魂は、永遠に生きている」と、初公開から 30 年以上経った今なお、観客の胸を打つ作品であることに言及した。

他にも、児玉美月、真魚八重子、斉藤綾子、いちむらみさこからコメントが到着している。コメント一覧・全文は記事下部にて。

また、シアター・イメージフォーラムではトークイベントの開催が決定。初日 11/5(土)11 時 25 分の回上映後には映画研究者/明治学院大学教授の斉藤綾子が、11/6(日)13 時 50 分の回にはコラムニストの山崎まどかが登壇する。詳細はシアター・イメージフォーラム公式サイト(https://www.imageforum.co.jp/theatre/ )にて。

『冬の旅』は11月5日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。

『冬の旅』コメント全文(敬称略・順不同)

放浪の物語が帰郷によって完結することは「オデュッセイア」から定められた筋書きだった。
そこから外れて終わりのない旅路をさまよう、コミュニティからの追放者たちの物語はようやく語られ始めたストーリーなのだ。
本来ならば女には許されない自由の獲得と、手の切れるような冷たい孤独と、
飼い慣らされない者だけが持つ悲しみと輝き。
「冬の旅」は永遠に新しく、鮮烈で、観る者の胸に切実に訴えかける。
山崎まどか(コラムニスト)

この理不尽で不条理な現代社会の中で、あきらめない、我慢できない女性の心には、モナがいる。
自由を希求する彼女の不屈の魂は、永遠に生きている。
松田青子(小説家)

アニエス・ヴァルダ再評価の波のなかで編まれた『アニエス・ヴァルダ 愛と記憶のシネアスト』に寄稿した『歌う女 歌わない女』の論考において、わたしはヴァルダを「やわらかな革命者」と形容した。
『冬の旅』は、映画史において女性表象を刷新した一本だと断言できる。
そしてヴァルダがもたらした〈変革〉は、これからもたゆむことなく引き継がれてゆくに違いない。
児玉美月(映画執筆家)

どうにもしてあげられない。
スクリーンに映る身勝手で、わがままで、どんどん汚れて臭気を増す彼女の、冬にさすらうという強い衝動の手助けができない。
最期を知りながらも、彼女の涙を拭ってあげられない。そのことで胸が苦しい。
真魚八重子(映画評論家)

映像作家であり、女性監督であることが何ら矛盾しなかったアニエス・ヴァルダにとって、写真を撮り、映画を作ることは「映像で書く」というシネクリチュールの実践を意味した。
亡くなるまで、自作について語り、映画に対するパッションを持ち続けたヴァルダの社会に対する批判の眼は老いることなく、その精神は瑞々しさを失うことはなかった。
一人の少女の死で始まり、死で終る『冬の旅』は、まさに零度のシネクリチュールである。
ヴァルダの移動カメラが捉えるのは、社会のルールや価値観に従うのではなく、自ら自由を選んだ少女の生き様。
それはミステリアスで、穢れ、脆く、抗い続ける、開放された崇高な魂の軌跡だ。
サンドリーヌーヌ・ボネール演じるモナに注がれるヴァルダの視線は限りなく厳しく、果てしなく暖かい。
ヴァルダが遺してくれた奇跡のようなモナの姿は、その悲惨な生と死を超えて、私たちの記憶の中で永遠に力強く生き続ける。
斉藤綾子(映画研究者/明治学院大学教授)

生き倒れた若い女性モナに、アニエス・ヴァルダが命を吹き込んだ。
女がひとり放浪することは簡単ではないが、モナの旅は、身体や性を理不尽に扱うシステムへの抵抗だ。
飢え、暴力、寒さ。残酷な現実の中でモナは誰にも心を明け渡さず、ぞんざいな態度で刹那的にやりすごす。
それでも、出会う女性たちがモナの孤独と自由に魅了されるのは、彼女たち自身に内在する「ホームレス」に響くからだ。
わたしたちはモナを忘れられない。
いちむらみさこ(ノラ)

作品情報

冬の旅
2022年11月5日(土)、シアター・イメージフォーラムほか全国順次にてロードショー

監督・脚本・共同編集:アニエス・ヴァルダ 撮影:パトリック・ブロシェ 音楽:ジョアンナ・ブルゾヴィッチ
出演:サンドリーヌ・ボネール、マーシャ・メリル、ステファン・フレイス、ヨランド・モロー
原題:SANS TOIT NI LOI (英題:Vagabond)/1985 年/フランス/ヨーロッパ・ビスタ/カラー/105 分

配給:ザジフィルムズ

© 1985 Ciné-Tamaris / films A2

公式サイト www.zaziefilms.com/fuyunotabi

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