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『エンドロールのつづき』『バビロン』『フェイブルマンズ』『エンパイア・オブ・ライト』…2023年には奇しくも“映画を描く映画”の公開が相次ぐ。しかも、いずれも賞レースを賑わせている秀作ばかり。世界の名匠たちが、同時期に同じテーマの作品を撮った理由とは?
スティーヴン・スピルバーグ監督最新作の『フェイブルマンズ』(3月3日公開)、そして第95回アカデミー賞インド代表(国際長編映画賞)としてショートリストにも選出されたパン・ナリン監督の『エンドロールのつづき』(1月20日公開)。この2作品には大きな共通点がある。“映画の魅力に惚れ込んだ監督の自伝的物語”という点である。どちらも幼少時代に映画から受けた影響や家族の反応などがリアルに描かれ、世界中で多くの観客の感動を呼んでいる。
『エンドロールのつづき』のパン・ナリン監督は「キャストとスタッフ全員で『フェイブルマンズ』を見に行ったのですが、映画が始まると、少なくとも30回は『そんなことありえるの?』と顔を見合わせました」と『フェイブルマンズ』を観た驚きをTheWrap誌で明かしている。主人公の名前はサミーとサマイ。少年が持つ仲間たち、支えてくれる母と反対する父、さらには電車への共通のこだわりなど、『フェイブルマンズ』と『エンドロールのつづき』にあまりに類似点が多かったからだ。「映画人は皆、同じようなことを考えているのだと驚きました」とナリンは言う。
この2作品に加え、映画そのものを称賛する「映画についての映画」の公開も相次ぐ。サム・メンデス監督の『エンパイア・オブ・ライト』(2月23日公開)は1980年のイギリス南岸の静かなリゾート地を舞台に、人々の絆と“映画と映画館という魔法”を感動的に描く珠玉作。そしてデイミアン・チャゼル監督の『バビロン』(2月10日公開)は1920年代の激動のハリウッドで夢を叶えようとする男女を描く物語。いずれも映画を称え、映画が辿る時代の変化を描いている。
なぜ今、こうした映画そのものをテーマにした作品が増えているのか。米「Variety」はその理由を次のように分析している。「パンデミックが始まり、世界中の映画館は封鎖され、否定的な人々は映画鑑賞の終わりを予測した。多くの映画人が悩んだことだろう。『もしあと1本しか映画を作れないとしたら、自分は何をやりたいのか? 私の人生と仕事の集大成は何だろう?』。そのひとつの答えが、『映画についての映画』を製作することだったのかもしれない」。
実際、パン・ナリン監督はこう語っている。「なぜ私は映画を撮っているのだろう? その理由は何だったのだろう? いつから映画が好きになったのだろうとコロナ禍で内省し、物語を探し始めた」。スピルバーグも「コロナ禍がきっかけで、このこと(自伝的物語)を書こうと思った」、サム・メンデスも「ロックダウンは、私たち全員にとって、強烈な自己検討と反省の期間だった」とそれぞれにコロナ禍で受けた影響を明かしている。
そしてパン・ナリン監督はこうも語っている。「『エンドロールのつづき』は映画へのラブレターであり、スタンリー・キューブリックのような偉大な映画人に捧げるものだ。映画を通して自分がある。これは彼らにオマージュを捧げる唯一のチャンスかもしれない」。
映画人が映画への溢れんばかりの愛情を込めて制作した4本の新作に注目だ。
参考:
https://variety.com/2022/awards/awards/oscar-movies-about-movies-spielberg-fabelmans-mendes-empire-of-light-1235454855/
https://www.thewrap.com/last-film-show-director-pan-nalin-interview/
エンドロールのつづき
2023年1月20日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネリーブル池袋 他全国公開
STORY
9歳のサマイはインドの田舎町で、学校に通いながら父のチャイ店を手伝っている。厳格な父は映画を低劣なものだと思っているが、信仰するカーリー女神の映画は特別と、家族で街に映画を観に行くことに。人で溢れ返った映画館、席に着くと、目に飛び込んだのは後方からスクリーンへと伸びる一筋の光…そこにはサマイが初めて見る世界が広がっていた。映画にすっかり魅了されたサマイは、再び映画館に忍び込むが、チケット代が払えずつまみ出されてしまう。それを見た映写技師のファザルがある提案をする。料理上手なサマイの母が作る弁当と引換えに、映写室から映画をみせてくれるというのだ。サマイは映写窓から観る色とりどりの映画の数々に圧倒され、いつしか「映画を作りたい」という夢を抱きはじめるが―。
監督・脚本:パン・ナリン 出演:バヴィン・ラバリ
2021 年/インド・フランス/グジャラート語/112 分/スコープ/カラー/5.1ch/英題:Last Film Show/日本語字幕:福永詩乃 G 応援:インド大使館 配給:松竹
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