2023年のサンダンス映画祭で話題を呼び、新進気鋭の製作・配給スタジオ「A24」配給で全米大ヒットを記録し、今最も世界の注目を集めるホラー映画『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』が12月22日(金)より公開されるのに先立ち、本作の監督であり、双子の大人気YouTuberとしても活動しているダニー・フィリッポウとマイケル・フィリッポウが緊急来日。10月16日(月)に東京・新宿の新宿ピカデリーにて行なわれた来日プレミア試写会に登壇し、上映後に映画を観終えたばかりの観客との質疑応答を行った。
母を亡くした女子高校生がSNSで流行りの「#90秒憑依チャレンジ」に参加し、そのスリルと快感にのめり込んでしまったことからかつてない事態に発展していく本作は、A24が北米配給権を勝ち取り、『ミッドサマー』や『ヘレディタリー/継承』を超える“A24ホラー史上最高興行収入”を記録する大ヒットに。ロッテントマトでも95%フレッシュをたたき出し、監督続投でA24製作による続編『Talk 2 Me』(原題)も早くも決定している。監督は、本作で衝撃的な長編映画監督デビューを果たしたダニー&マイケル・フィリッポウ兄弟。超人気YouTuberでもあるふたりのチャンネル「RackaRacka(ラッカラッカ)」は、ブラックで尖ったコメディや、日本アニメの自家製実写版など超個性的でエッジの効いた動画が高評価を集め、受賞歴も。ふたりはすでに『ストリートファイター』の実写映画化を手掛けることも決定している。
この日行われた来日プレミア試写会では、映画の上映が終わると、会場は大きな拍手に包まれ、ダニー&マイケルが登場。ちなみにダニーは人気漫画「HUNTER×HUNTER」のキャラクターがデザインされたパンツ姿。マイケルも「ゴースト映画って最高だし、中でも日本のゴースト映画って最高ですよね? こうやって日本でみなさんに紹介したいと思って、わざわざ“憑依(降霊術)”をテーマにしたゴースト映画を選びました(笑)」と茶目っ気たっぷりに語るなど、共に日本への愛着を隠そうとしない。
YouTubeチャンネル「RackaRacka(ラッカラッカ)」も人気を集めている2人だが、長編映画デビュー作となる本作を作り始めた経緯について、ダニーは「もともと長編映画を作りたいという思いをずっと持っていた。YouTubeはその準備のため、映画スタイルを探す手段としてやっていて、2018年にこれからは映画にフォーカスしようと決めて、脚本を書き始めたんだ。それが『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』になったんです」と説明する。
本作は2023年のサンダンス映画祭で大きな反響を呼んだが、現地の観客の称賛の声に加えて「サンダンスのプレミアの後、ジョーダン・ピールやアリ・アスター、ピーター・ジャクソンにサム・ライミなど、自分たちが尊敬する人たちが連絡をくれて、本当にラッキーだった」とふり返るダニー。マイケルも「すごい人たちから連絡が来て、シュールな気持ちだったし、もったいなすぎるような気分だったよ。アメリカの観客はハッキリと声に出して叫んだり『そこ行っちゃダメ!』とか言ったりするんだ」と楽しそうに述懐する。中には気絶してしまった観客もいたそうで「嬉しすぎて泣いたよ(笑)」(ダニー)とのこと。
ふたりが監督を務めるA24製作の続編も決定しているが、ダニーは「サンダンスでの上映の時にA24の方が来てくれたんだけど、それ以外にも大きなスタジオや配給会社の人たちが来てくれました。その中でもA24の方たちが自分をプレゼンしてくれて、それだけでも夢がかないました。僕たちは『もちろんA24』でお願いしますと。続編は、何も書いてない時点でA24からOKをもらって、本当にラッキーだと思ってる」と語り、マイケルは「サンダンスではあまりにいろんなことが早く起こり過ぎたね。小切手を持って『買うよ』と言い出す人までいたりして、セールスをやってくれてる人が震えながら『これどうするどうする?』って言ってて『“どうする?”じゃなくて、それは君の仕事だろ!』って言ったんだけど(笑)。A24の大ファンだったから『すぐに決めようよ』と言いました。彼らの前では『別に…』って顔をしてたけど、実はすごく喜んでました(笑)」と現地で味わった興奮と熱狂を明かした。
観客からは「マクドナルド」のドナルド・マクドナルドや「セサミストリート」のクッキーモンスター、ビッグバードをパロディにしつつ、過激な描写が特徴的なYouTubeチャンネル「RackaRacka」、そして今回の映画において、どのようなことをイメージして、シナリオを描き、撮影を行なっているのか? と創作スタイルに関する質問が。
ダニーは「映画もYouTubeも両方とも『自分たちを表現しよう』と考えて作っています。YouTubeはテクニックやいろんなことを学ぼうという気持ちで『今回はエフェクトを試そう』とか『今回はスタントを使ってみよう』とか 、いろいろとトライしているんです。なるべく派手に、カオスな感じで、ものを壊したり、血を流したりして注目を浴びようとしています。逆に映画のほうは、『より深く自分たちを表現したい』と思って作りました」と説明する。さらに、「映画は撮影が本当にタフだったので、編集の方は本当にしんどかったと思います。僕とマイケルと編集の方とで用意した3種類の編集バージョンを見比べて、シーンごとにどれが一番いいかというものを見ながら編集していきました」と明かした。
特に、今回の映画では「ホラーでありつつ、ドラマも見せたいと思ってバランスを考えました」と語るダニー。「最初はもっとバイオレンスだったんだけど、そういうシーンを削除してるんだ」と語り、登場人物のひとりが憑依した“霊”によって苦しめられる痛々しいシーンを例に「映画では15秒しかないけど、本当は2分30秒あったんだ。でも、これはちょっと酷いなと思って…(笑)」と説明し、会場は笑いに包まれていた。
マイケルもダニーの言葉を捕捉し「ホラーのためのホラーじゃなく、キャラクターの視点から見て『怖い』と感じる映画を目指したんだ。スプラッターを作りたかったわけじゃないんだ」と映画では、より登場人物たちの“ドラマ”の部分が深く描かれていると語った。
ダニーは以前から、R・L・スタイン(アメリカの小説家)の児童ホラー文学「グースバンプス」に影響を受けたと語っているが、この点について「子どもの頃に読んで、ワクワクしたよ。6歳の時に『自分もR・L・スタインのようになりたいな』と思ったんだ」と語る。さらに、今回の映画を作る上で影響を受けた作品について「ロシア映画の『父、帰る』、それから映画のトーンの部分では『殺人の追憶』、あとは『ぼくのエリ 200歳の少女』にも影響を受けています」と明かした。
本作で、特徴的なキーアイテムとして登場するのが、主人公たちが「#90秒憑依チャレンジ」を行なう際に使う不気味な呪物の「手」。これは、何からインスピレーションを受けたのか? という質問に、ダニーは「最初に書き上げた脚本の初稿では、(霊を呼ぶためのアイテムが)何かをハッキリさせてなかったんです。でも書き終えて読んでみたら、“手”とか“触る”とかコネクションについての描写がたくさん出てきて、このホラーのシンボルになるものは何かと言ったら“手”だと、たどり着いたんだ」と説明。ちなみに、映画に登場するこの「手」にはびっしりと文字が記されているが「手の歴史を表したいと思ったんだ。世界中を回ってきて今回、映画に出てくるティーンたちの手に渡ったので、世界中のいろんな霊や恐ろしいものが書いてあるようにしてあるよ」(ダニー)とのこと。
最後にダニーは観客に向けて「何を言えばいいかわからないけど、今日は来てくれてありがとう。この映画を楽しんでもらえたら嬉しいです」と挨拶。このコメントにマイケルが「つまんないな~」と噛みつき「僕がダニーにパンチをお見舞いして終わるよ」とダニーに口撃を食らわせるなど、ふたりのコンビネーションが光る和やかな雰囲気の中でトークイベントは幕を下ろした。
今回の来日に合わせて、「#90秒憑依チャレンジ」に欠かせない「手」が登場。今日、初めて対面したふたりもその完成度に驚いており、フォトセッションでもご機嫌そうに「手」を使ったポージングを次々披露。この「手」は、今後日本公開に向けて、東京近郊に神出鬼没に現れるかも?
『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』は12月22日(金)丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国ロードショー。
TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー
2023年12月22日(金)丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
STORY
母を亡くした高校生のミアは、気晴らしに仲間とSNSで話題の「#90秒憑依チャレンジ」に参加してみる。ルールは簡単。呪物の「手」を握り、「トーク・トゥ・ミー」と唱えると、霊が憑依する――ただし、必ず90秒以内に「手」を離すこと。ミアたちはそのスリルと快感にのめり込み、憑依チャレンジを繰り返してハイになっていくが、仲間の1人にミアの母の霊が憑依し――。
監督:ダニー&マイケル・フィリッポウ 出演:ソフィー・ワイルド, アレクサンドラ・ジェンセン, ジョー・バード
原題:Talk to Me|95分|オーストラリア|カラー|シネスコ|5.1chデジタル|字幕翻訳:風間綾平|PG12
配給:ギャガ
© 2022 Talk To Me Holdings Pty Ltd, Adelaide Film Festival, Screen Australia
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