囚人たちに演技を教えることになった俳優の奮闘を実話を基づいて映画化したヒューマンドラマ『アプローズ、アプローズ!囚⼈たちの⼤舞台』(7月29日公開)の予告編が完成。またエマニュエル・クールコル監督の特別インタビュー映像も解禁された。
本作はカンヌが笑って泣いて絶賛した、実話を元にした感動作。何をやってもうまくいかない⼈⽣崖っ淵俳優エチエンヌは、訳あり、癖ありの塀の中の囚⼈たちに更生のため演技レッスンを行うことに。演目はサミュエル・ベケットの『ゴドーを待ちながら』。エチエンヌの情熱は次第に囚⼈たち、刑務所の管理者たちの⼼を動かすこととなり、難関だった刑務所の外での公演にこぎつける。彼らの芝居は観客やメディアから予想外の⾼評価を受け、再演に次ぐ再演を重ね、遂にはあの⼤劇場、パリ・オデオン座から最終公演のオファーが届く。果たして彼らの最終公演は観衆の歓喜の拍⼿の中で、感動のフィナーレを迎えることができるのだろうか?
このたび解禁された予告編は、40秒バージョンと2分バージョンの2種。映画『ホテルアイリス』(永瀬正敏主演)の予告編が100万回再⽣に迫る勢いでバズったことでも話題となった映像作家の遠⼭慎⼆がディレクションを⼿掛けた。
予告編(40秒バージョン)
予告編(2分バージョン)
予告は刑務所を訪れた売れない俳優・エチエンヌの悪戦苦闘からスタート。エチエンヌは「負け⽝たちが明るい未来を望む話だ」と、 サミュエル・ベケットの「ゴドーを待ちながら」を演⽬に選び演技レッスンを始めるが、囚⼈たちは茶化すばかりでまともに相⼿にせず、刑務所の管理者からも呆れられる始末。しかしエチエンヌの情熱が徐々に周囲に伝播していき、囚⼈たちも毒づきながらも稽古に奮闘、ついには⼤劇場での公演を迎えるまでがテンポよく描かれる。
⼀⽅で刑務所側の反発や、囚⼈たちの葛藤なども明らかに。終盤には⼤舞台での公演を迎える姿が。アプローズ(喝采)が鳴り響くなか、彼らは公演を成功させることはできるのか? エモーショナルなクライマックスへの期待が⾼まる予告編に仕上がった。
また昨年開催されたフランス映画祭横浜で、上映会場限定で公開されたエマニュエル・クールコル監督のインタビュー動画も同時に特別解禁。クールコル監督は、バイプレイヤーとして俳優の実績を積む傍ら、フィリップ・リオレ監督との共同脚本作品『マドモワゼル』や『灯台守の恋』などで、繊細な⼼理描写を巧みに描写する筆致が⾼い評価を得ている。
実話を元にした本作の製作のきっかけについて、「受刑者たちがベケットを演じるということ、そして結末に驚いた」と明かすクールコル監督。また実際に運営されている刑務所での撮影の苦労にも⾔及。刑務所スタッフ全員と打ち合わせを重ねるほか、事前にキャストと刑務所を訪問したという。最後には「私がつくりたいのは、⼈間や⼈間性を信じる映画。私たちの時代はすでに気が滅⼊るものですから。それでも⼈々に何か明るいものを⾒せたい」と改めて本作に込めた思いを語っている(インタビュー全文は以下にて)。
『アプローズ、アプローズ 囚⼈たちの⼤舞台』は7⽉29⽇(⾦)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿ピカデリー、シネ・リーブル梅⽥、なんばパークスシネマ、アップリンク京都、名古屋ミッドランドスクエアシネマなど全国30館前後で同⽇初⽇スタート。
事前の業界向けプレゼンテーションでも、先⾏して作品を観た興⾏関係者からは称賛の声が届いており、配給元にも予想外のオファーが多数寄せられているという。
エマニュエル・クールコル監督インタビュー
——どこでこの実話を知ったのですか?
「プロデューサーから聞いたんです。数年前彼からDVDを渡されました。実話のドキュメンタリーです。80年代のスウェーデンでの話です。映画にすべきだと⾔われました。彼は正しかったですね。それでこの物語を使い、今のフランスを語ろうと思いました」
——この話のどこに惹かれたのですか?
「最初は単純にいい話だと思いました。刑務所の映画を作るつもりはなく国内の刑務所のことも知りませんでした。受刑者たちがベケットを演じるというのは少しとっぴですし驚きました。その結末にもです。それで映画にしたいと思いました」
——刑務所の世界をどのように調べたのでしょうか。
「まず関係者に会いました。それから知⼈の俳優でエチエンヌのように受刑者に演劇を教える⼈に会いました。されに撮影の舞台となった刑務所の⽂化活動のコーディネーターにも会いました。イレーヌ・ミュスカリです。パリで上演されら受刑者たちの舞台を⾒に⾏きそこで彼⼥に会いました。彼⼥が扉を開けてくれ刑務所の演技のアトリエの参加させてもらい何か⽉かかけてドキュメンタリーを撮影しました。ですから現場で調べたといえますね。リアルな映画をするために観察する最⾼の機会でした」
——刑務所内の撮影で特別な問題はありましたか?
「執筆活動から⼤変でしたよ。まずどのように演劇を映画に持ち込むのか。うまくいっている例は少ないですからね。だから悩みながらベケット作品の断⽚を選びリハのシーンを書きアドリブの余地も残しました。ただ練習して上演をするという線的な物語にとどまらないためです。ドラマチックな動きを⾒つけて⾯⽩くて感動的なものにしたかった。刑務所での撮影は⼤変でしたよ。刑務所で撮影するというのは撮影のためにできていませんし、まだ運⽤されている刑務所でしたから。最⼤限のリアリティを求めるには⼊念な準備が必要で⼤仕事になりました。うまくいきましたよ」
——キャスティングについて教えてください。
「求めたのはフランスの刑務所の多様性を反映した俳優です。それがベースでした。次に強い個性を持つ俳優を探しました。基本的には映画の中では登場⼈物の過去は語られません。個々の事情は不明です。だから⼀⽬みて歩んできた⼈⽣を感じさせる⼈が必要でした。性格や話し⽅、体つき、気性からです。⾵景画を作るように⻑⾝の⼈、太い⼈、黒人、⽩⼈、若者に年寄り、複雑な個性を持つ⼈を配置していきました」
——テンポのいい映画です。何度もリハーサルを⾏いましたか?
「撮影前の3⽇間ベケットのリハをしました。私が映画のために抜き出した箇所です。演技の練習をするのと私の要望をわかってもらうためです。⼤変だったのはプロの俳優たちと素⼈や新⼈たち受刑者たちが1つの作品で演じることです。彼らは無統制で⾃然体の受刑者を演じつつ、⼀⽅で演劇やリハーサルの演技もしました。不器⽤で実直ながらも進歩を⾒せる演技です。これはプロの俳優には難しい。最初に演劇のシーンの準備をした後はリハはせず本読みをしました。⾃発的な要素を残しておきたかったからです。⽣きたものにしたかった。アドリブも⼊れられるようにしました」
——主演にカド・メラッドを選んだのはなぜですか?
「彼は⼤衆的なコメディ映画でよく知られた俳優です。でも彼は他のこともできる。そう知っていました。カナルプリュスで放送されたドラマ「バロン・ノワール」に彼が出演していて政治家の役を演じていました。その演技の中にエチエンヌを作る要素を感じたんです。⾮常に頑固で気分屋でエネルギーにあふれ気前のよい⼈物です。エチエンヌ役にぴったりでした」
——脚本を読んだカド・メラッドの反応は?
「脚本を読んですぐにOKしてくれました。役にもこの物語にもすごく興味を持ってくれました。それからは待ちました。この映画のテーマですよ。主演俳優の時間が空くのを待ちました。カドは他の仕事で忙しかったのです。撮影に⼊るまで1年待ちました。その間に先ほど話したドキュメンタリーを撮りました。それがいい準備になりました」
——刑務所内での撮影は俳優たちに刺激を与えたと思いますか?
「最初に彼らと⼀緒に刑務所を訪問しました。どんな場所かを⾒てもらい理解してもらいました。刑務所の雰囲気は⾮常に独特で強烈に訴えてくるものがあります。それから撮影を始めました。こういった条件の撮影現場はもちろん演技に影響します」
——刑務所を⾒た後で、脚本内容を変更しましたか?
「実話に関しては演出家が演劇のワークショップに来るという⼤筋は変えていません。『ゴドーを待ちながら』を受刑者に教え、成功し、地⽅でも公演するという⼤筋は守りました。私が作ったのは登場⼈物たちです。そこが架空の部分で、受刑者たちやエチエンヌは実在の⼈物ではありません。実際は全員違います。スウェーデンの演出家ヤン・ヨンソンの演劇への情熱などの要素は多少残しましたが、彼はもっと⾼齢です。娘の存在も架空のものです。私がつくったのは⼈気が下降気味の俳優で刑務所のプロジェクトの巻き返しを狙っている。これはフィクションです。でも最終的にはかなり実話に忠実になりました。ヨンソンも気に⼊ってくれました。映画を⾒て感動していました。1週間前スウェーデンでの上映で彼に再会し元受刑者にも会えたんです。実話に登場する元受刑者でエンドロールの最後の写真に写っています。彼も感動していました。これがこの映画の成功の証です。⾮常にフランスらしいファッションでフランスの現実に即した映画ですが同時に普遍的な要素があります。スウェーデンの演出家の⼼に響きましたし、観客たちの⼼にも響くと思います。この映画は世界中で公開が決まっています。30から35カ国で購⼊されました。さまざまな映画祭に参加しどこでもいい評価を受けました。様々な⽂化の⼈々に気に⼊ってもらえました」
——参考になった映画はありますか?
「刑務所の映画を観ましたが“作りたくないもの”の参考になりました。脱獄や刑務所の⽇常なんてテーマは映画でもテレビでもありふれています。だからすでに作られたものから距離を置くために映画を観たんです。私が⽬指したのはそういう映画ではなく演出するエチエンヌや演劇的な視点から離れない映画であり、受刑者たちがテキストや演劇、演出家と向き合う姿のみを⾒せる映画です」
——現実主義的なアプローチは重要でしたか?
「ええ、実話と現実に忠実を描くためです。フランスでは先ほど話したようにドキュメンタリーも撮りましたが多くの刑務所が演劇のアトリエを実施してます。もちろん外部の劇場で上演するとは限りません。でもこの⽂化活動は⾏政にも認められていて⾮常に重要なものだと思います。この現実から離れず忠実でいたかったし“こういう活動があるんだ”と⼈々に知らせたかった。刑務所の職員に話を聞いたり刑務所の⽂化活動の携わる⼈々に話を聞くと皆⾔いますよ“このとおりです”と」
——映画において楽観性は⼤事ですか?
「私はそう思いますよ。単純な映画でなくても⾼い要求を保ちつつ希望のある映画は作れます。絶望的な映画はたくさんありますが、その分野では競争しません。いろんな映画がありますが私が作りたいのは、何というか⼈間や⼈間性を信じる映画です。私たちの社会は、私たちの時代はすでに気が滅⼊るものですから。それでも⼈々に何か明るいものを⾒せたい。それは存在しますし、それに光を当てたい。だから登場⼈物のやる気を削いだりしません」
——この映画を刑務所で上映しましたか?
「はい、これからも上映しますよ。撮影した刑務所で1度⾒せました。新型コロナウイルスのせいでストップしてましたが、でも2週間後にまた上映します。2回上映して受刑者たちに⾒せます。それから来週は国⽴映画センターで上映します。法務⼤⾂と⽂化⼤⾂に⾒せるんです。これからも⾒られますよ」
アプローズ、アプローズ!囚人たちの大舞台
2022年7月29日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿ピカデリー他にて全国公開
STORY
囚人たちの為に演技のワークショップの講師として招かれたのは、決して順風満帆とは言えない人生を歩んできた役者のエチエンヌ。彼はサミュエル・ベケットの『ゴドーを待ちながら』を演目と決め、訳あり、癖ありの囚人たちと向き合うこととなる。エチエンヌの情熱は次第に囚人たち、刑務所の管理者たちの心を動かすこととなり、難関だった刑務所の外での公演にこぎつける。しかし思いも寄らぬ行動を取る囚人たちとエチエンヌの関係は、微妙な緊張関係の中に成り立っており、いつ壊れてしまうかもしれない脆さを同時に孕んでいた。それは舞台上でもそのままに表出し、観客にもその緊張感がじわじわと伝染し始める。ところが彼らの芝居は観客やメディアから予想外の高評価を受け、再演に次ぐ再演を重ね、遂にはあの大劇場、パリ・オデオン座から最終公演のオファーが届く! 果たして彼らの最終公演は観衆の歓喜の拍手の中で、感動のフィナーレを迎えることができるのだろうか?
出演:カド・メラッド ([コーラス][オーケストラ・クラス]) タヴィッド・アラヤ / ラミネ・シソコ / ソフィアン・カーム / ピエール・ロッタン / ワビレ・ナビエアレクサンドル・メドヴェージェフ / サイド・ベンシナファ /マリナ・ハンズ(世界にひとつの金メダル) ロラン・ストッカー(セザンヌと過ごした時間)
製作:ダニー・ブーン (ぼくの大切なともだち・俳優) 他
監督・脚本: エマニュエル・クールコル (アルゴンヌ戦の落としもの)
共同脚本: ティエリー・カルポニエ (パリ特捜刑事) 撮影: イアン・マリトー (アルゴンヌ戦の落としもの)
音楽: フレッド・アブリル (サウンド・オブ・ノイズ)
主題歌: “I Wish Knew How It Would Feel to Be Free” ニーナ・シモン
宣伝デザイン : 内田美由紀(NORA DESIGN)
予告編監督 : 遠山慎二 (RESTA FILMS)
2022年フランス映画 | 105分 | フランス語 |シネマスコープ 2.29:1 | 5.1ch | DCP・Blu-ray
配給 : リアリーライクフィルムズ
©️2020 – AGAT Films & Cie – Les Productions du Ch’timi / ReallyLikeFilms - Photo ©️Carole Bethuel
©️2020 – AGAT Films & Cie – Les Productions du Ch’timi / ReallyLikeFilms
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