第76回カンヌ国際映画祭の開催10日目となる5月25日(木)、コンペティション部門に出品されている『PERFECT DAYS』(日本公開未定)のヴィム・ヴェンダース監督、主演の役所広司、中野有紗、アオイヤマダ、田中泯がレッドカーペットに登場した。公式上映時には約10分にわたるスタンディングオベーションが巻き起こった。
数々の傑作を世に送り出し続けたヴィム・ヴェンダース監督が、日本の公共トイレのなかに small sanctuaries of peace and dignity(平穏と高貴さをあわせもった、ささやかで神聖な場所)を見出し、清掃員の平山という男の日々の小さな揺らぎを丁寧に追いながら紡いだ『PERFECT DAYS』。平山を演じるのは、ヴィム・ヴェンダースが長年リスペクトしてやまない俳優、役所広司。共演は、平山のもとに突然訪れる姪役に新人の中野有紗。その母、平山の妹に麻生祐未。平山と奇妙なつながりをもつホームレスに、ダンサーの田中泯。同僚の清掃員に、柄本時生。そのガールフレンドに、アオイヤマダ。平山が休日に訪れる居酒屋のママに、石川さゆり。その元夫に、三浦友和。他にも豪華キャストが登場する。
フランス時間5月16日に華々しく開幕した第76回カンヌ国際映画祭。開催10日目となる5月25日(木)、晴れやかな日差しに迎えられ、15時半頃、『PERFECT DAYS』のコンペティション上映を直後に控えたヴィム・ヴェンダース(監督)、主演の役所広司、中野有紗、アオイヤマダ、田中泯がレッドカーペットに登場した。大きな声援と祝福を受け、ゆっくりとレッドカーペットを進むと、劇中で使用されている楽曲Lou ReedのPerfect Dayがかかり、監督が思わず踊りだす場面も。
レッドカーペットの前に実施された取材では、「編集ではみんなの顔を見ていたけど、カンヌで実際に会うことができてとても嬉しい」と顔をほころばせていた監督。役所について聞かれると「彼の作品は、かなりの数を見た」という。「警官としても侍としても素晴らしい、なんという役者なんだと思っていた。役所さんと仕事するのは夢のようでした」と役所への思いを明かす。他キャストについても「この作品にはスピリチュアルなレベルがあって、みなそれを感じてくれていた」とキャストへの厚い信頼を明かした。
役所は監督から学んだことについて話題が及ぶと「常に楽しそうにしていたので、その姿勢がキャストを励まし、大きな演出になっていた」という。平山の姪を演じた中野は「本当にありのままのわたしとキャラクターを重ねて演じるような環境をヴィムが整えてくださったので、自然に演じることができた」、ホームレスを演じた田中は「映像にとらえたものは全部その場でやったもの。わたしはスピリットそのものです」、アオイは「ヴィムさんも、役所さんも周りを引き立ててくれる人だなと思った」と語った。
直後に実施されたコンペティションでは、2,300人以上を収容できるパレ・デ・フェスティバル・エ・デ・コングレにて、満員の観客の中上映された。会場に監督とキャストが現れると、観客は総立ちで迎え、約5分間におよび拍手が鳴りつづけ期待の大きさを感じさせる。その後静寂に包まれ上映が開始。2時間5分の上映が終了するや否や、会場は一気に熱を帯び、観客は一斉に立ち上がって約10分にわたるスタンディングオベーションが起こった。感激につつまれる監督を役所、中野、アオイ、田中が優しくつつみこみ、映画同様、あたたかく感動的な上映となった。
熱気はそのままに、キャストのみ上映後の囲み取材が実施された。熱いスタンディングオベーションを受けた気持ちについて聞かれると、役所は「みなさん、褒めるの上手ですよね(笑)」と照れつつも「監督が言ってたんですけど、褒められても自分がうまいと思わないで、けなされても自分がダメだと思わないで、映画で語りなさい、と。まさにそうだなと。でも今日みたいな温かい拍手を受けて、ああお客さんが喜んでくれてるんだ、良かったな、と単純に思いました」と顔をほころばせた。
中野は「どういう反応がくるのかなと不安だったけど、きっと感じるものがあるんじゃないかという望みはありました。スタンディングオベーションで拍手と喝采を感じた時にそれが確信に変わりました」という。田中は「映像のお仕事で(スタンディングオベーションを受けたのは)初めてです。嬉しいというよりも『役所さん、やったね!!』という気持ちで、抱きつきたかったです」と主演の役所と喜びを共有。最後にアオイは「役所さんが爆発するわけでも、変身するわけでもない映画なんですが、日常の幸せ、平和の象徴が描かれた映画が評価された、ということがとても嬉しく思いました」と締めくくった。
『逆転のトライアングル』のリューベン・オストルンド監督がコンペティション部門の審査委員長を務める第76回カンヌ国際映画祭。カンヌの常連であるヴィム・ヴェンダース監督が、日本を舞台にした本作で計21作品の中から最高賞となるパルム・ドールを狙う。主演男優賞はじめ各賞が発表となるのは、現地時間27日。各賞の行方に注目だ。
PERFECT DAYS
日本公開未定
STORY
東京・渋谷でトイレの清掃員として働く平山(役所広司)。彼は淡々と過ぎていく日々に満足している。毎日を同じように繰り返しているように見えるが、彼にとってはそうではなかった。毎日はつねに新鮮な小さな歓びに満ちていた。まるで風に揺れる木のような人生である。昔から聴き続けている音楽と、休日のたびに買う古本の文庫を読み耽るのが、歓びである。いつも持ち歩く小さなフィルムのカメラで木々を撮る。彼は木が好きだった。自分を重ねているのかもしれない。あるとき彼は、思いがけない再会をする。それが彼の過去にすこしずつ光をあてていく。
キャスト
役所広司 柄本時生 中野有紗
アオイヤマダ 麻生祐未 石川さゆり
田中泯 三浦友和 他
スタッフ
監督:ヴィム・ヴェンダース
脚本 :ヴィム・ヴェンダース 高崎卓馬
製作:柳井康治
エグゼクティブ・プロデューサー :役所広司
プロデュース:ヴィム・ヴェンダース 高崎卓馬
國枝礼子 矢花宏太 ケイコ・オリビア・トミナガ 大桑仁 小林祐介
撮影 :フランツ・ラスティグ
インスタレーション:ドナータ・ヴェンダース
編集 :トニ・フロシュハマー
美術 :桑島十和子
キャスティング・ディレクター :元川益暢
ロケーション :高橋亨
スタイリング:伊賀大介
ヘアメイク:勇見勝彦
原題: 『PERFECT DAYS』/上映時間:124分 / 製作:日本 / 日本配給:未定
プロダクション Wenders Images Wenders Foundation Spoon
© 2023 MASTER MIND Ltd.
この記事が気に入ったらフォローしよう
最新情報をお届けします
Twitterでフォローしよう
Follow WEEKEND CINEMA