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第2回新潟国際アニメーション映画祭」が3月15日(金)より開幕し、オープニングセレモニーにはフェスティバルディレクターの井上伸一郎、そして長編コンペティションの審査員であるノラ・トゥーミー審査員長、マイケル・フクシマ、齋藤優一郎が登壇。そしてオープニング作品となる塚原重義監督『クラメルカガリ』の上映が行われ、塚原重義監督と共に映画祭プログラムディレクターの数土直志が登壇しトークショーを行った。

「アニメーションに希望を託しましょう」と力強く開会を宣言

昨年3月の第1回映画祭より、世界で初の長編アニメーション中心の映画祭として、また多岐にわたるプログラムとアジア最大のアニメーション映画祭として、日本のみならず世界へも発信される「新潟国際アニメーション映画祭」。第2回の開幕日、3月15日(金)に行われたオープニングセレモニー並びにオープニング上映のMCを務めたのは、ニッポン放送アナウンサーで、年間500本のアニメーションを見ているという、アニメファンからの信頼も厚い吉田尚記。

フェスティバルディレクターの井上伸一郎は開会宣言で2024年1月1日に起きた能登半島地震の被災者へお見舞いの言葉を述べた。ここ新潟も能登半島地震で一部被害を受けていることもあり、さらに「13年前、2011年3月11日の東日本大震災でも大きな被害が出まして、エンターテイメント産業に関わる人間として、自分達に何ができるのか、非常に心が不安になったことを覚えています。私は、東日本大震災の6ヶ月後に現地入りしまして、その時に被害のあった本屋さんや映画館が休んでいたところが開いていった時の、お客様の喜びの表情を今でも覚えています」と回想。

「どんな状況にあろうとも、エンターテイメントは人の心を豊かにし、希望を与える、そういう存在だというのをその時に確信しました。日本だけでなく世界に目を向けても、戦争など大変な時代ではございますが、アニメーションは世界を繋いで希望を与える、そういうものだと思っております。ここ新潟の地に今、世界中からアニメ関係者の皆さんが集まってきていただいております。これから6日間、みなさんと共にアニメを通して世界を見て参りたいと思います」と国際映画祭としての意義を述べ「アニメーションに希望を託しましょう」と力強く開会を宣言した。

また、長編コンペティション部門の審査員長ノラ・トゥーミーは「日本に来るのは初めてなんですけれども、非常に素晴らしい場所で、温かく迎えていただいていることを本当に嬉しく思います。もうすでに先程『犬王』(湯浅政明監督)の応援上映を見させていただきまして、本当に素晴らしい体験でした。そういう“素晴らしい体験”をこれからみなさんもされると思うと非常に嬉しく思います」とコメントを述べた。

審査員のマイケル・フクシマは「プログラムを見せてもらったら、“私が3人、3つ体があればよかった!”と思うくらい、素晴らしい映画が揃っていて、とても一人では見切れない!と思いました。ここにお集まりのみなさん、チームでしたらいくつかに分かれて全ての映画をご覧になり、そしてぜひ意見交換をして全てを堪能していただければと思っています」とプログラムの充実ぶりに言及した。

もう一人の審査員、齋藤優一郎はバイリンガルを生かして英語と日本語でスピーチし、「ここ新潟で長編アニメーションの新しい可能性を世界に発信していけたらと思っています」と、細田守監督作品で世界を舞台に活躍してきた経験を感じさせるコメントを述べた。

長編コンペティション受賞作、並びに大川博賞・蕗谷虹児賞の授賞式は映画祭最終日の20日(水)クロージングセレモニーにて行われる。

オープニングセレモニーに続き、オープニング作品となる塚原重義監督『クラメルカガリ』の上映前には、監督と共に映画祭プログラムディレクターの数土直志が登壇しトークショーを行った。

ワールドプレミアとなる『クラメルカガリ』、そして塚原監督の作品『クラユカバ』は長編コンペティション部門にノミネートされており、2本が同時に映画祭で上映される。数土は「塚原監督が東京国際アニメフェアでブースを出されていた時から知っていまして、これから出てくる監督なんだろうなと思っていました。6年くらい前にコンペに入った『クラユカバ』の企画をアヌシー国際映画祭に持って行かれたり」と、実はこの2本が非常に密接な関係のもと出来上がってきたことに言及。塚原は「そうですね、『クラユカバ』の構想が10年くらい前から始まってまして、その時からいろんなところに企画を持ち込む中で、アヌシーへ東京都の支援で出ることになりました」と説明。

数土は「あの時の『クラユカバ』がいよいよ完成するという話を聞いて、これはぜひ映画祭に出してください!ってお願いをしに行ったんです。で、その時に『実はもう1本あるんですよ、同時に』と言われまして。それであればその1本は別の形で紹介したい。『うちでやってください!』と頼み込みました」と驚きの舞台裏を語った。

『クラメルカガリ』と『クラユカバ』は、4月12日に2本同時に劇場公開を迎えるが、その経緯について塚原監督は「(『クラユカバ』制作にあたって)クラウドファンディングをやって、パイロットフィルムを作ったんです。そのクラウドファンディングで支援してくださった方の中に(シナリオ原案の)成田良悟先生がいらっしゃいまして。せっかくできたご縁だし、せっかくなら『クラユカバ』のサイドストーリーのショートショートみたいな作品を書いてもらいたいとお願いしたら『書きますよ!』と。その数ヶ月後に上がってきた本は結構分厚かったです…」と『バッカーノ!』『デュラララ‼︎』で知られる小説家・成田良悟とのエピソードを明かした。

2つのアニメを連続で作ることに面白みを感じたという塚原監督は2作についてその違いと特徴を数土から聞かれると「一つは物語の視点ですね。『クラユカバ』が主人公の主観視点、『クラメルカガリ』は1つの街を舞台にした群像劇になっています。もう一つは、ビジュアルが近しい作品でありながら『クラユカバ』は構想期間が長かったということもあり、自分のドロドロした思いを入れ込んだダークな作風になっているんですけども、『クラメルカガリ』はカラッと明るい作品になっていますね」と語った。

上映後も塚原監督は登壇し、吉田尚記とトークショーを行った。本作は監督にとって『クラユカバ』に続く長編2本目であり、国内での上映は初とあって、ワールドプレミアの感想を尋ねられると「まだちょっと実感がないんです。ネガティブな意味ではなくて」と受け止めきれない様子。「少数精鋭のチームで作ってきて、これから作品が一人歩きしていくターンに入るんですけど、なんだか…言葉にならない気持ちです」と語った。

吉田は「アニメファンの1人として、もう絵の世界もセリフもアクションも音楽もストーリーも全て魅力的」と絶賛。「どこから作品を作るか、何を重視しているか」と問われると監督は「まだ長編2作目なので定まりきってないのですが」と前置きした上で「『クラユカバ』の方は長年構想してきたということもあって、自分の伝えたいメッセージを込めた作品なんですね。その上で見やすいエンタメであることに注力して作りました。『クラメルカガリ』はその直後に同じチームで制作に入り、やりたかったことを出し切ってしまった後なので、こちらは本当にまっさらな気持ちで純粋にエンターテイメントで作ったということがありました」と語った。そしてこぼれ話として「今ちょっと思い出したんですけど、登場人物の朽縄博士は、実は僕の大学時代の自主制作アニメの歴史と繋がっているんですよ。自分が過去にやり残したことをここで回収したという感じ。これは『クラユカバ』ともちょっと近いところがあって、過去とどう向き合うかというメッセージの強さは2作品共通しているところかなと思います」と語った。

吉田から「アニメーションでしか作れないとても魅力的な世界、もっとこの世界で作っていたいのか、もっと別のことをしたいのか、今の気持ちはどうでしょう?」と問われると塚原監督は「直近の気持ちとしてはより深掘りしていきたいですね」と率直な気持ちを語った。

この作品では「少年少女が成長して社会とどう関わるか」を自分の得意な手法で語れたと語る塚原監督。吉田は友人の声優で、本作のカガリの声を務めた佐倉綾音と本作についてLINEで話をしたと語り「映像、キャラもストーリーもすごく良くて、参加して嬉しい作品。良い作品は報われてほしい」との佐倉の言葉を伝えると塚原監督も嬉しそうにはにかんでいた。

「第2回新潟国際アニメーション映画祭」は3月20日(水)まで開催中。

開催情報

第2回新潟国際アニメーション映画祭
2024年3月15日(金)~20日(水)開催

英語表記:Niigata International Animation Film Festival
主催:新潟国際アニメーション映画祭実行委員会
企画制作:ユーロスペース+ジェンコ

公式サイト https://niaff.net

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