フランスの映画音楽の巨匠ミシェル・ルグランのドキュメンタリー『ミシェル・ルグラン 世界を変えた映画音楽家』 が9月19日(金)より全国順次公開。このたび、豪華著名人12名のコメントが到着した。さらに、トークつき先行有料上映会の開催が決定した。

本作の公開にあたり、ミシェル・ルグランを敬愛する各界の著名人12名からコメントが寄せられた。1979年に公開された監督:ジャック・ドゥミ&音楽:ルグランによる実写映画『ベルサイユのばら』の原作者である漫画家・声楽家の池田理代子。ミュージカル「シェルブールの雨傘」でギイ役を演じたミュージカル俳優の井上芳雄。ジャズや映画音楽の批評を通じてルグランを論じてきた音楽家・文筆家の菊地成孔。『CURE』(97)、『愛がなんだ』(19)、『近畿地方のある場所について』(25)などの音楽を手掛け、ルグランから大きな影響を受ける作曲家のゲイリー芦屋。渋谷系ムーブメントを牽引し、ルグランの音楽を強くリスペクトしてきた音楽家の小西康陽。ルグランを敬愛し、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(21)のサウンドトラック収録曲にオマージュを込めて作曲したと語る作編曲家の鷺巣詩郎。ジャズを基盤に映像音楽やポップスを横断する活動スタイルにおいて、ルグランと共鳴する部分も多いピアニスト、作・編曲家の島健。ルグランと同じくパリ国立高等音楽院を卒業し、父・服部克久が彼と深い親交を結び、自身もその音楽観を継ぐ作曲家の服部隆之。ルグラン本人と深い親交を持ち、日本の窓口を務め、彼に関する書籍を多数執筆してきたアンソロジストの濱田髙志。シティポップ・ブームの立役者であり、「北ウイング」「悲しみがとまらない」「真夜中のドア〜Stay With Me」など数々のヒット曲を手掛け、ルグランを敬愛する作曲家の林哲司。1970年からルグランが亡くなるまでの間、長い間友人関係にあった作曲家の村井邦彦。そしてルグランと数々の共演を重ね、友情と音楽的絆を築いてきた歌手の森山良子といった豪華著名人が名を連ねた。コメント全文・一覧は以下のとおり。

またアフタートーク付き先行有料上映会の開催が決定。9月16日(火)に、本作へのコメントも寄せた菊地成孔と濱田髙志をゲストに迎え、先行有料上映会が開催。詳細は以下のとおり。
コメント一覧(五十音順・敬称略)
池田理代子(漫画家・声楽家)
「ベルサイユのばら」初の実写映画『レディ・オスカル』に稀代の天才ミシェル・ルグランが素晴らしい音楽をつけてくれていることは、私の最大の誇りである。
井上芳雄(ミュージカル俳優)
「シェルブールの雨傘」では、始めから終わりまで常に音楽が流れ続け、一つの旋律が形を変えて喜びも悲しみも表現します。この映画を見て、ルグランの生き様もまさにその通りだなと感じました。最後の時まで自ら音楽を奏で続け、その才能とエゴで天使にも悪魔にもなる姿に。とにかく、全てのものを融合しながら作曲する天才の様子に圧倒されました。そして、今も僕たちの中には彼のメロディが流れ続けています。
菊地成孔(音楽家/文筆家)
あなたはこの映画で、初めてルグランの全てを知る
ゲイリー芦屋(作曲家)
ミシェル・ルグラン、彼こそが「音楽」そのものだった。映画の中で、音楽が笑い、音楽が怒り、音楽が悩み、音楽が躍動し、音楽が終わっていく様に私はひたすら心を揺さぶられ続けた。
そうだ、音楽を愛することで人は出会い、人生を切り拓いていく。ミシェルの人生を通して描かれる、音楽の奇跡と生きる喜びが、それを鮮やかに示している。
映画を観ている間、胸に熱いものがこみ上げ、気づけば止め処なく涙が溢れていた。
ミシェルの音楽とともに生きた世代のみならず、これから初めて彼の音楽に触れるであろう未来の音楽ファンにこそ見てほしい、そんな永遠のマスタピースだ。
小西康陽(音楽家)
冒頭の古いインタヴュー映像で、あなたは映画音楽のバッハになる? と尋ねられ、微笑しつつ否定する若き天才。この場面から釘付けになりました。いまどき『ロシュフォールの恋人たち』が好き、なんて言うのは日本人だけかな、と思っていましたがフランス人も、世界中の誰もが大好きなんだと知ってうれしくなったり。かと思えば、譜面の不備で思い切り不機嫌になる、オケの音がまとまらず悪態をつく、あのマエストロでさえもリハーサルでは「ク●じじい」になるんだ、と思ったら涙があふれて画面が見えなくなりました。この映画が素晴らしいのはミシェル・ルグランの人と作品を心から愛している人によって作られているからなのだと思います。
鷺巣詩郎(作編曲家)
20世紀における、もっとも雄弁なスコアの書き手のひとり。
まばたきと共に新曲が生まれるほど多産型なのは、ずば抜けた編曲能力の賜物。
ミシェル・ルグランのスコア無しに、今の私は無い。
1992年、息子バンジャマンと仕事を共にし、最愛のミシェルにたどり着き再確認できた。
晩年までまったく衰えなかったその大編成表現から多くの閃きをもらい、
2019年、彼の死は私にシン・エヴァンゲリオン内にオマージュを残すことを促した。
島健(ピアニスト、作・編曲家)
ミシェル・ルグランの86年の歴史が、若かりし日々から生涯最後のコンサートまで、
貴重な映像の連続で丁寧に描かれた作品です。
なかでも、ディジー・ガレスビーをはじめ、ジャズ界のレジェンド達と共演している若き日の映像や、
パリ音楽院で多くの有名作曲家を育てた伝説の名教師ナディア・ブーランジェの映像は初めて観ました。
そして多くの映画監督の巨匠達との革新的な名作誕生のエピソードや、
創作の過程において絶対に妥協しない厳しい姿勢に、驚きと感動を覚えました。
エンドロールで流れる「風のささやき」の弾き語りは、今でも胸の奥に響いています。
服部隆之(作曲家)
音楽の神様に愛された音楽家ミシェル・ルグラン。彼はジャズと映画音楽に愛を注ぎ込んだ。
パリ国立高等音楽院の和声のクラスで徹底的に叩き込まれたであろうle style(ル・スティル)(作曲家の様式)を一度手放し再構築したルグラン節。
これが世界中の人々に愛される。彼の音楽は潔くユーモアが有って、なにより美しい。そして美声の持ち主だ。
ハイトーンのベルベットボイスで歌う。僕は彼の声が大好きだ。
人声を基に楽器が発展していった歴史を鑑みれば、歌は音楽を表現するための最強のツールとも言える。
天から祝福されたルグランは何でもできるのである。
伝説の人物と同時代を共に過ごせた喜びを噛みしめながら、この映画を観ようではありませんか!
濱田髙志(アンソロジスト)
神に与えられた才能を最後の一雫まで作品に昇華させた
ミシェル・ルグランは、“永遠の初心者”であり続けることを
自身に課した、孤高の音楽家だった。
その華々しい活動の裏側で抱えた苦悩と葛藤、
栄光と挫折を繰り返した天才の姿を活写した本作は、
彼の遺言にして身をもって示す後進へのエールである。
林哲司(作曲家)
ミューズの申し子のような音楽家の足跡―
その才能が、あくなき音楽への好奇心と挑戦に裏付けられたものだと改めて感じた。
ことに映画音楽において、音楽家の枠を超え、映画そのものの完成を見つめる“もう一人の監督”の視線が、あの名曲の数々を生み出したのであろう。
その彼を世界の場へ送り出す、キッカケの助言はなんと巨匠・ヘンリー・マンシーニ!
謝意をにじませた笑顔は、まさに才能が才能を呼ぶ感動のシーンだ。
晩年の現場。頭の中で既に完成された「音」へ、いち早くたどり着きたいもどかしさにいら立つ、少年のような熱狂は変わらなかった。
完成=それはこの偉大な音楽家の創作のエゴのゆくえ。
村井邦彦(作曲家)
1950年代から亡くなる寸前のコンサートまで、豊富な映像と音が素晴らしかった。
どこを切っても連続して流れるミシェルのエネルギーに満ちた思想と意欲が感じられ感動しました。
亡くなるまで走り切ったね、素晴らしい人生だったね、という言葉を天国のミシェルに送りたいです。
森山良子(歌手)
『シェルブールの雨傘』や『ロシュフォールの恋人たち』、そして『イエントル』——。
ミシェル・ルグランの音楽は、私の心を何度も震わせてきました。特に「Papa, Can You Hear Me?」を初めて聴いた瞬間、どうしても彼と一緒に音楽を作りたいという衝動に駆られたことを、今もはっきり覚えています。
その思いを抑えきれず、コンサートで来日していた彼の楽屋を訪ね、今まで自分が歌ったミシェルの曲をカセットテープにまとめて手渡しました。数ヶ月後、パリで再会。スクーターでふらりとホテルに現れたミシェルは、私のコンサート映像を観て「面白いね、一緒にやろう!」と笑顔を見せ、その場で共演が決まりました。ニューヨークのカーネギーホールを皮切りに、日本全国でのコンサートツアーが始まり、厳しくも優しい彼とステージを共にする日々が続きました。
この映画を観て、スクリーンの中のミシェルと過ごした日々が鮮やかによみがえりました。
「くだらない音楽は絶対にやるな」という言葉は、今も私の音楽人生を支えています。
ミシェルはもういませんが、彼が残してくれた情熱やこだわりは、今も私の中にあります。
それは、歌うことへの情熱を深く教えてくれた時間でした。
あの日々が確かに私の中で息づき続けていることを、この映画が静かに思い出させてくれました。
アフタートーク付き先行有料上映会
【日時】9月16日(火) 19:20の回(上映後 トークイベント開催)
【会場】新宿武蔵野館(東京都新宿区新宿3-27-10 武蔵野ビル3F)
【登壇者(敬称略)】菊地成孔(音楽家/文筆家)、濱田髙志(アンソロジスト)
※登壇者は都合により、予告なく変更となる場合がございます。
【料金】2,000円(税込)均一
【チケット販売】オンライン:9月12日(金) 18時~ ※オンラインで残席が出た場合のみ劇場販売:9月14日(日) 劇場オープン~
※詳細は、新宿武蔵野館のHPをご確認ください。
ミシェル・ルグラン 世界を変えた映画音楽家
2025年9月19日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
監督・脚本:デヴィッド・ヘルツォーク・デシテス 脚本:ウィリー・デュハフオーグ 製作:マルティーヌ・ド・クレルモン・トネール ティエリー・ド・クレルモン・トネール デヴィッド・ヘルツォーク・デシテス 編集:マルゴッド・イシェール ヴァンサン・モルヴァン デヴィッド・ヘルツォーク・デシテス 撮影:ニコラス・ボーシャン リヤド・カイラット スタン・オリンガー 音響:テオドール・セラルド
音楽:デヴィッド・ヘルツォーク・デシテス ミシェル・ルグラン
出演:ミシェル・ルグラン アニエス・ヴァルダ ジャック・ドゥミ カトリーヌ・ドヌーヴ バンジャマン・ルグラン クロード・ルルーシュ バーブラ・ストライサンド クインシー・ジョーンズ ナナ・ムスクーリ
2024年/109分/フランス/原題:IL ÉTAIT UNE FOIS MICHEL LEGRAND/カラー/5.1ch/1.85:1
日本語字幕:大塚美左恵 後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ 配給:アンプラグド
©-MACT PRODUCTIONS-LE SOUS-MARIN PRODUCTIONS-INA-PANTHEON FILM-2024
公式サイト unpfilm.com/legrand
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