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フェンシング代表として活躍した異色の経歴をもつ俊英ネリシア・ロウが監督・脚本を手がけたフェンシングを題材とした破滅的心理スリラー『ピアス 刺心』(絶賛公開中)でW主演を務めた台湾の実力派俳優ふたり、リウ・シウフーとツァオ・ヨウニンが緊急来日し、12月14日(日)に行われた公開記念舞台挨拶に登壇した。

『ピアス 刺心』公開記念舞台挨拶は東京のヒューマントラストシネマ有楽町で開催。チケットは即完ということで、会場は満席。そんな熱気あふれる観客に向けて、まずはシウフーが「皆さまこんにちは、わたしはリウです。よろしくお願いします」と日本語であいさつすると、ヨウニンも日本語で「皆さまこんにちは、わたしはツァオです。どうぞよろしくお願いします」と続け、会場から大きな拍手を受けた。

この日が日本で初の映画舞台あいさつとなったシウフーは、「僕自身、この映画がものすごく大好きなんですが、日本の皆さんがどういう感想を持っていただけるのかと緊張しています」と切り出し、本作のテーマについて「僕がこの映画が好きなのは、愛というものを非常にユニークな視点で追求しているからです。もし自分が愛した人が、皆から怪物だと言われるような事態となった時、あなたならどうするのか、といったテーマを追求しているんです。皆さんにも自分と同じように、この映画を好きになってほしいと願っています」と観客に呼びかけた。

続くヨウニンも満席の会場を見渡して、「何よりも感動しているのは日本で上映できたということ。日本の配給会社にも感謝しています。しかもこんなにもたくさんの方が見に来てくださって、皆さまにお会いできたことにとても感激しています」としみじみ語ると、「この映画が皆さんの日常の中で、何か新しい気付きをもたらすようなきっかけになればいいなと願っています」と付け加えた。

本作の重要なモチーフとなるフェンシングシーンだが、ほとんどのシーンを彼ら自身で演じたという。その準備期間を振り返ったシウフーは「僕たちはとても長い訓練を重ねました。もともと自分は運動がそれほど得意ではありません。でもこれは演劇のリハーサルと同じで、時間をかけて真剣に取り組めば、あるレベルまでは到達することができるものだと思ったんです」と語る。そうした中で、シウフーが自分の脚に筋肉がついてきたなと実感できたあたりで、ネリシア・ロウ監督は「じゃあ撮影をはじめましょうか」と笑いながら言ったという。

対するヨウニンは「この映画には長い準備期間があり、役作りにうちこめる時間を与えてもらえたことはとてもうれしかった」と切り出すも、本作のメガホンをとったロウ監督が元フェンシング選手であったことに触れ、「やはりフェンシングの指導が本当に厳しくて。トレーニングの過程は本当に大変で、なかなか難しいものでした。監督は僕たちの動きのひとつひとつ、細部まで細かく指導をしてくれました」と振り返った。

本作の撮影監督を務めたのはポーランド出身のミハウ・ディメク。『EO イーオー』にて全米映画批評家協会賞を受賞するなど、世界の名だたる撮影賞を受賞した注目の撮影監督となるが、「彼のレンズを通して、実際の演技以上に感情や質感を感じとることができた」と絶賛するシウフー。さらに「彼は画面のシンメトリー(対称性)にこだわっているので、僕らの感情表現に加え、立ち位置も非常に重要でした。特定のポイントに正確に移動し、そこから感情をつなげていく必要があったからです。これはとても面白い試みでした」と振り返った。

ヨウニンも「英語が苦手なので、現場ではジェスチャーでコミュニケーションを取っていましたが、非常に優しく、深い愛情とともに接してくれた」と明かし、「彼の美的感覚や映像言語は、われわれ俳優にとっても大きな助けとなりましたし、普段の自分では見せないような姿をスクリーンに映し出してくださって。自分にもこんな表情があったのかと気付かせてもらいました」と感謝の言葉を述べた。

本イベントが始まる直前にも、シウフーの髪をヨウニンが整えてあげるひと幕があり、仲むつまじい姿を見せていたふたりだが、実は本作が初共演となる。そこでお互いの印象について質問が及ぶと、「実は最初はちょっと怖いなと思って緊張していました。僕がこの映画業界に入る前から活躍していた大先輩ですからね」と笑ったシウフー。だが実際に会ってみると「すぐに兄のように気遣ってくれる人だと気付いたんです。前にヨーロッパの映画祭に行った時も、髪の毛を整えてくれたりと、彼の気遣いは本当に自然で。だから本当に居心地が良くて。俳優同士の波長が合うのは、とても貴重で重要なこと」だと感じたという。

対するヨウニンは「最初にInstagramでシウフーの写真を見た時に、とてもきれいな顔をしている役者だと思ったんです。それからいろいろな作品を見て、特徴的な目をしているなと感じました。どこか吸い込まれるような深みがあって、『何を考えているのかな』と知りたくなりますし、彼との距離を縮めたいなとも思った」と語ると、「でもそんな必要はなかった。実際撮影が始まってみると、本当に波長が合うんです。たとえばエレベーターで知らない人といると気まずい空気が流れることがあると思いますが、彼とはそういう感覚がまったくない。ただそばにいて居心地がいい存在なんです」と付け加えた。

この日は映画のタイトル『刺心』にちなみ、「心に響いたエピソード」「いい意味で心を刺すような出来事」についての質問も。まずはシウフーが「日本に来る前にオンラインでインタビューを受ける機会があったんですけど、その時にオススメの映画として『国宝』という映画を教えてもらい鑑賞させていただきました。その主人公は小さい頃から芸術に興味を持っていたということで、僕自身の幼い頃のことを思い出しました。僕は小さい頃から独り言が好きでした。Aという役になったり、Bという役になったりしながら、ずっと一人でふたりの人格になりながら話していたんです。それで母に『変かな?』って聞いてみたんですけど、母は『これは神様がくれたプレゼントだよ』と言ってくれました。そのことを思い出した、というのが最近心に刺さったことです」と話題の映画の話から俳優への興味を後押ししてくれた家族とのエピソードを語った。

続いてヨウニンは「今日、日本の映画館にこれだけの観客が集まって、自分たちの映画を見てくれたというのを目の当たりにできたこと。これは僕にとっては非常に心に刺さった出来事です」と語り、会場を沸かせた。

そして最後のメッセージを求められたシウフーが「最後の体育館のシーンの撮影中、(ポスタービジュアルにもある)赤いカーテンの幕が僕の気持ちに合わせて揺れていて、それがすごく助けになった。その空間はまるで僕の心の内側のようでした。だから皆さんも、ぜひこの映画を何度も観て、細かいところまで楽しんでほしいですね」と語ると、ヨウニンも「この映画では、いろいろなキャラクターの視点で見ることができます。だから映画を観るごとに、別々のキャラクターの視点に立って物語を追ってもらいたいんです。もし自分がその立場だったら同じ選択をするだろうか? それとも違う考えを持つだろうか? だからこそ何度も観る価値がある映画なんだと思います」と観客に語りかけ、イベントを締めくくった。

まとめ(注目ポイント)

  • リウ・シウフー&ツァオ・ヨウニンが来日し登壇
    12月14日、『ピアス 刺心』の満席の舞台挨拶が行われ、W主演を務めた台湾の実力派俳優ふたりが登壇。
  • 髪を整え合う兄弟のような絆
    初共演ながら「波長が合う」と語り、仲睦まじいエピソードを披露。登壇直前に髪を直してあげる姿も。
  • 映画『国宝』で蘇る母の言葉
    リウ・シウフーは『国宝』を鑑賞したエピソードも披露。幼少期の独り芝居を「神様のプレゼント」と肯定してくれた母の記憶を語った。
  • 元選手監督による過酷な特訓
    元フェンシング選手のネリシア・ロウ監督による厳しい指導の下、長い訓練を経て殆どの場面を本人が演じた。
作品情報

ピアス 刺心
2025年12月5日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー

出演:リウ・シウフー(劉修甫)、ツァオ・ヨウニン(曹佑寧)、ディン・ニン(丁寧)
監督・脚本:ネリシア・ロウ(劉慧伶) プロデューサー:サム・ウェイシ・チュア、ジェレミー・チュア、パトリック・マオ・フアン、イザベラ・イゲル、ジョン・M・ロウ 共同プロデューサー:エブリル・クオ、シュー・グオルン、アンジェイ・ルツャネク エグゼクティブ・プロデューサー:ジョン・M・ロウ、ダニエル・ヤング、ジェニファー・ジャオ、リン・ティエングゥイ アソシエイト・プロデューサー:エリック・メンデルソン 撮影監督:ミハウ・ディメク 編集:ネリシア・ロウ、エリック・メンデルソン プロダクション・デザイナー:マーカス・チェン、シュ・グゥイティン 衣装:リー・ルオシュン 作曲:ピョートル・クレク サウンド・デザイナー:ドゥ・ドゥーチー、ウー・シュウヤオ

原題:刺心切骨 英題:Pierce 字幕翻訳:中沢志乃 後援:駐日シンガポール共和国大使館、台北駐日経済文化代表処 台湾文化センター 配給:インターフィルム

2024年/シンガポール、台湾、ポーランド/106分/中国語/1.66:1 ビスタ/5.1ch/DCP

© Potocol_Flash Forward Entertainment_Harine Films_Elysiüm Ciné

公式サイト https://pierce-movie.jp

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