10月26日(月)~11月4日(水)開催予定の「第39回東京国際映画祭(TIFF)」。日本映画の海外発信力の強化、アジアの次世代育成と共創、そして多様な映画文化の継承と普及を目指し、本年から始まる3つの新たな取り組みが発表された。
「Nippon Cinema Now」部門での新賞創設、東南アジア映画を特集する新部門「CROSSCUT ASIA+(クロスカットアジア・プラス)」の設置、そして長年映画界に貢献してきた女性を顕彰する「川喜多かしこ映画文化賞」の創設という、映画祭の未来を見据えた新たなステップを踏み出す。
①「Nippon Cinema Now」部門に2つの賞を新設
海外に紹介したい日本映画という視点から、日本映画の「今」を世界へ発信してきた「Nippon Cinema Now」部門。本年より新たに「Nippon Cinema Now作品賞」と「Nippon Cinema Now審査委員特別賞」の2賞を設ける。
国内外で日本映画への注目が高まるなか、新鋭から気鋭の監督まで、まだ見ぬ「新しい日本の才能」をより力強く支援し、世界へ届けることを目的としたもの。審査委員には海外の識者も加わり、グローバルな視点から日本の新たな才能を発掘する。
【久松猛朗フェスティバル・ディレクター コメント】
Nippon Cinema Now部門へのコンペティション新設を通じ、日本の優れた新しい才能に光をあて、世界へ発信していきます。彼らの次なるチャレンジへの勇気を与えるとともに、グローバルな舞台へと飛躍する後押しをしたいと思います。東京国際映画祭は新しい才能が世界へ羽ばたくためのプラットフォームとしての役割を担い、日本の映画産業の発展に貢献したいと考えています。
②新部門「CROSSCUT ASIA+(クロスカットアジア・プラス)」誕生
国際交流基金(JF)との共催により、東南アジア映画の特集上映部門「CROSSCUT ASIA+(クロスカットアジア・プラス)」を新設する。
2014年から2019年まで設置されていた「国際交流基金アジアセンターpresents CROSSCUT ASIA」の、「東南アジアの豊かな映画文化を紹介する」という趣旨を継承する同部門。東南アジアと日本の気鋭の映画プログラマーが、毎年異なるテーマに基づき、独自の視点で協働して選んだ作品を上映する。
第1回となる今回は、インドネシアのラスリーンと日本の上田真之をプログラマーに迎え、〈Side by Side〉をテーマに、クラシック作品から最新作まで6作品を上映。本企画アドバイザーであるマーク・ノーネスの助言も得ながら、記憶の継承やコレクティブによる映画製作、映画を通じて異なる歴史や経験が出会い直す現在の試みについて考える機会を創出する。
■「CROSSCUT ASIA+」部門上映作品
『フィリピニャーナ』 (英題:Filipiñana)
監督: ラファエル・マニュエル(Rafael Manuel) 2026年/シンガポール、イギリス、フィリピン、フランス、オランダ
あらすじ: 富裕層が集うカントリークラブで働きはじめる新人イサベル。客と従業員が別世界を生きるその場所で、次第にその華やかさの裏にあるものを知っていく。

『プルティウィをめぐる4つの季節』 (英題:Four Seasons in Java)
監督: カミラ・アンディニ(Kamila Andini) 2026年/インドネシア、フランス、オランダ、ノルウェー、サウジアラビア、シンガポール、ポーランド
あらすじ: 長い服役を終え、故郷へ帰るプルティウィ。息苦しい村で、行き場を失った者たちと、もう一度生きる道を探していく。

『人間に生まれるなら』 (英題:Becoming Human)
監督: ポレン・リー(Polen Ly) 2025年/カンボジア
あらすじ: 都市化が進むカンボジア。古い映画館の守護霊は、生まれ変わるか、人間の友人とともに居場所のない幽霊としてこの世に留まるか、選択を迫られる。

『トゥラン』 (英題:Turang)
監督: バクティアル・シアギアン(Bachtiar Siagian) 1957年/インドネシア
あらすじ: 再発見されたインドネシア映画。独立戦争下のタナ・カロで、負傷したルスリと彼を介抱するティピの恋と、オランダ軍に抗い生き抜こうとする村人たちを描く。

『未明のとき』 (英題:Small Hours of the Night)
監督: ダニエル・フイ(Daniel Hui) 2024年/シンガポール
あらすじ: 独立直後のシンガポール。暗い部屋で女性が男に尋問される。長い一夜、奇妙な墓石裁判をめぐる声が二人に憑き纏い、アイデンティティの境界が揺らぐ。

『瞬く光の陰で』 (英題:Behind The Flickering Light: The Archive)
監督: ハフィズ・ランチャジャレ(Hafiz Rancajale) 2013年/インドネシア
あらすじ: 映画保存に生涯を捧げたミスバッハ・ユサ・ビラン。インドネシアに東南アジア初のシネマテークを築いた歩みと、危機に瀕するその現在を見つめる。

③女性映画人を顕彰する「川喜多かしこ映画文化賞」を贈賞
公益財団法人川喜多記念映画文化財団は、日本と海外の映画文化振興に成果をあげた女性を顕彰する功労賞「川喜多かしこ映画文化賞」を創設する。
同賞は、戦前から戦後にかけて欧州の名作を日本に紹介し、フィルム・ライブラリー助成協議会の設立や、国立映画アーカイブの前身である東京国立近代美術館フィルムセンターの立ち上げにも貢献した川喜多かしこの功績を称えるもの。「マダム・カワキタ」として東西の映画文化の架け橋となった彼女の志を未来へつなぐ、「女性による、女性のための顕彰事業」として創設された。
女性映画人の草分けとも言える川喜多の名を冠し、同賞は女性への贈賞を前提とすることから、女性の選考委員によって受賞者を選考。贈賞式は、第39回東京国際映画祭のウィメンズ・エンパワーメント部門内で行われる。
記念すべき第1回受賞者には、1950年代よりフランスで『勝手にしやがれ』『太陽がいっぱい』『ぼくの伯父さん』など数々の名作を買い付け、日本に紹介してきた映画評論家の秦早穗子が決定。ジャーナリスト、批評家として長年にわたり日仏、そして世界の映画文化交流に多大な貢献を果たしてきた。
第1回「川喜多かしこ映画文化賞」の選考委員は、坂野ゆか(川喜多記念映画文化財団常務理事)、山﨑敏(東宝東和代表取締役社長)、恩田泰子(読売新聞編集委員)。
[秦 早穗子コメント]
川喜多かしこ映画文化賞、第1回にというお話をいただいた時、辞退を決心した。かしこ夫人は、戦前・戦後を通して、女たちが参加も許されなかった時代、映画の輸出入、わけても選択に独自の目を持って活躍された。今も続く映画史の1頁であり、女の暦史でもある。ある時、かしこ夫人は、私に囁かれた。「女として、忍耐の場、いろいろありますものね。」実に、意味深い言葉。そのことを、つとにお伝えしたく、賞をいただくことを決意した。
まとめ(注目ポイント)
- 第39回東京国際映画祭、10月26日開幕2026年10月26日から11月4日までの10日間にわたり開催。
- 「Nippon Cinema Now」に2つの新賞日本映画の新たな才能を世界へ発信する作品賞と審査委員特別賞を創設。
- 東南アジア映画の新部門「CROSSCUT ASIA+」〈Side by Side〉をテーマにクラシックから最新作まで6作品を上映。
- 「川喜多かしこ映画文化賞」を創設映画文化振興に貢献した女性を顕彰する新たな功労賞としてスタート。
- 第1回受賞者は映画評論家・秦早穗子1950年代から日仏および世界の映画文化交流に尽力。
第39回東京国際映画祭/TIFFCOM 2026 開催概要
【第39回東京国際映画祭】
開催期間:2026年10月26日(月)~11月4日(水)【10日間】
■主催:公益財団法人ユニジャパン
公式サイト www.tiff-jp.net
【TIFFCOM 2026】
開催期間: 2026年10月28日(水)~10月30日(金)【3日間】
■主催:経済産業省、総務省、公益財団法人ユニジャパン
公式サイト tiffcom.jp




