コロナ禍のインドで配信公開され、 配信サイトのサーバが数日間ダウンするほどの事態を巻き起こした話題作『グレート・インディアン・キッチン』(1月21日公開)の予告編が完成した。教育を受けた若い女性が、家父長制とミソジニー(女性蔑視)に直面して味わうフラストレーションがドキュメンタリーのようなリアルなタッチで描かれていく。

本作は、家族制度の暗部に切り込んでいく“ホームドラマ”。ケーララ州北部のカリカットの町で、高位カーストの男女がお見合いで結婚するところから物語は始まる。夫は由緒ある家柄の出で、伝統的な邸宅に暮らしている。中東育ちでモダンな生活様式に馴染んだ妻は、夫とその両親とが同居する婚家に入るが、台所と寝室で男たちに奉仕するだけの生活に疑問を持ち始める——。

2021年1月、コロナ禍のインドで無名の配信サービスによってひっそりとオンライン封切りされた本作は、インドの南西の端にあるケーララ州の公用語マラヤーラム語で作られた。当初観客として見込まれていたのは、そのマラヤーラム語話者の約3,480万人だった。13.8億のインド総人口の3%以下である。

登場人物も舞台となる場所も限られた、ミニマリズム的なこの作品のオンライン封切りに当たっては、宣伝らしい宣伝も行われなかった。しかし公開後間もなくから主に女性の観客の間で大評判となり、ほどなく彼女たちは自主的に宣伝活動を始め、アクセス集中のため弱小配信サイトのサーバが数日間ダウンするほどの事態となった。
クチコミからの大ヒットによって、大手であるインド・アマゾンのプライムビデオによる配信も2か月後にスタートし、英語字幕の力によってインドのさらに多くの観客の間にも共感の輪が広がり、そこから上海国際映画祭を始めとする国内外の映画祭への出品にもつながっていった。日本では「インディアンムービーウィーク2021パート1」(6月)と「パート2」(9月)で上映され、男女の観客から圧倒的な支持を得た。
このたび解禁された予告編では、ぎこちないお見合い、色鮮やかな婚礼の場面、手料理の映像から始まり、物静かで知的な雰囲気に見える夫、そして新婚早々の若夫婦がふざけ合い睦み合う様子が短いカットの積み重ねによって描写される。
しかしそのほほえましい雰囲気は中盤から一転し、フラストレーションを募らせる妻の表情にスポットが当たっていく。ほんの数秒挿入される華麗な舞踊のシーンは何を意味するのか。妻は何に怒り、何をしようとしているのか。
歴史ある邸宅の中で続いてきたミソジニー(女性蔑視)への激烈な批判。 映像は「キッチンという名の牢獄、名前を持たない“妻”と“夫”の物語」という言葉で締めくくられている。
『グレート・インディアン・キッチン』は2022年1月21日(金)より新宿ピカデリー他全国順次ロードショー。
グレート・インディアン・キッチン
2022年1月21日(金)より新宿ピカデリー他全国順次ロードショー
出演:ニミシャ・サジャヤン スラージ・ヴェニャーラムード 監督:ジヨー・ベービ
原題:The Great Indian Kitchen / 2021年/ マラヤーラム語/ シネスコ/ 5.1ch/ 100分
配給:SPACEBOX
©Cinema Cooks, ©Mankind Cinemas, ©Symmetry Cinemas
公式HP:tgik-movie.jp