国家主導の“ゲイ狩り”が横行しているロシア支配下のチェチェン共和国の驚くべき実態を追ったドキュメンタリー映画『チェチェンへようこそーゲイの粛清ー』が本日2月26日(土)より全国映画館にて公開を迎えた。

同性愛者たちが国家警察や自身の家族から拷問を受け、殺害され、社会から抹消されているロシア支配下のチェチェン共和国。本作は決死の国外脱出を試みる性的少数者たちと、彼らの救出に奔走する活動家たちを追ったドキュメンタリー。
監督を務めるのは、作家としても受賞歴があり、アカデミー賞ノミネートの経歴を持つデイヴィッド・フランス。本作ではこれまでも重要なテーマとしてきたLGBTQ問題を前面に打ち出し、ロシアのチェチェン共和国で現在起こっている人道的危機の驚くべき実態を描いていく。

監督はチェチェン共和国当局によるLGBTQ迫害の犠牲者を救出する活動家たちの中に入り、ゲリラ撮影の手法で彼らが直面する困難と日々の地下活動を撮影。ゲイやトランスジェンダーであることは悪とされているチェチェンでは、LGBTQの人々は当局が関与する拘留、拷問、命の危険に瀕し、息をひそめ恐怖に怯えて暮らしている。ロシアLGBTネットワークや、モスクワLGBT+イニシアティブコミュニティセンターの活動家グループに密着して撮影された映像は、LGBTQに対する恐ろしく残忍な虐待の様子を伝える。

本作には、助けを求める性的少数者の男性や女性が登場し、率直に勇気をもって自らの経験を語る。フランス監督は命の危険に晒された避難者の身元を保護するため、彼らの声を変え、偽名を使い、また、ディープフェイクの使用法を更に進化させた「フェイスダブル」を採用した。これはドキュメンタリー映画としては初の試みで、この方法で顔を変えることにより、感情のある印象的な映像が生まれ、避難者らは報復を恐れず語ることができ、彼らの苦境を直接伝える作品となっている。

『チェチェンへようこそーゲイの粛清ー』は本日2月26日(土)、東京ユーロスペース、シネヌーヴォ、MOVIX堺、元町映画館にて公開。

監督コメント
私はジャーナリスト兼作家としての長年の仕事の中で、差別を受け、無視され、憎悪されているアウトサイダーや、社会の極限に追いやられた人々に焦点を当ててきた。
ドキュメンタリー映画の制作において、私はアウトサイダー活動を主題としている。最初の映画作品『HOW TO SURVIVE A PLAGUE(疫病を生き抜く)』では、伝染病がもたらした混乱に対する社会の対応を変えるべく、専門家でもない市井の人々がAIDS活動家として立ち上がった運動初期の様子を記録した。次いで、急進的なジェンダー運動の始まりを描いた『マーシャ・P・ジョンソンの生と死』では、現代のLGBTQ活動の礎となっただけでなく、1970年に性的マイノリティ権利団体を設立した活動家に着目した。
本作『チェチェンへようこそーゲイの粛清ー』は、この三部作の最後にあたる。今回も常識を超えて活動するごく一般の人たちを撮影しながら、ずっと心に抱いている疑問を投げかけている。あえて問題に目を背ける人々がいる中、彼らはなぜ甚大なリスクを冒してまで活動に取り組むのか。つまり、何がその英雄的活動を支えているのか。
撮影も終わり、地下活動パイプラインのメンバーと別れる時、この作品を発表し私が撮影したことが公になれば、もう二度とここへ戻れないと分かっていた。彼らの活動の尊さに感謝の涙があふれた。彼らの無私無欲で人道的な行動、あらゆる困難に立ち向かう実直で勇敢な活動を目撃する機会を与えてもらった。そのことに感謝している。
上映劇場
東京:Eurospace / 宮城:フォーラム仙台 / 神奈川:横浜シネマリン / 埼玉:川越スカラ座 / 栃木:小山シネマロブレ、宇都宮ヒカリ座 / 愛知:シネマスコーレ / 大阪:MOVIX堺、シネ・ヌーヴォ 京都:出町座/ 兵庫:元町映画館 / 長野:松本シネマセレクト
※公式サイトにて随時更新
チェチェンへようこそーゲイの粛清ー
2022年2月26日(土)東京ユーロスペース、シネヌーヴォ、MOVIX堺、元町映画館にて公開
監督:ディヴィッド・フランス
2020年/アメリカ/107分
配給:MadeGood Films