本年度・第94回アカデミー賞にて、史上初となる国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞、長編アニメーション賞3部門同時ノミネートの快挙を成し遂げた、デンマークほか合作によるドキュメンタリー映画『FLEE フリー』(6月10日公開)の本編冒頭映像が解禁された。主人公の青年アミンが本作のために自身の物語を初めて語り始める場面が捉えられている。
本作は、主人公のアミンをはじめ周辺の人々の安全を守るためにアニメーションで制作された。いまや世界中で大きなニュースになっている難民やアフガニスタンを巡る恐ろしい現実、祖国から逃れて生き延びるために奮闘する人々の過酷な日々、そして、ゲイであるひとりの青年が自分の未来を救うために過去のトラウマと向き合う物語を描く。多くの観客に深い感動と衝撃を与え、昨年のサンダンス映画祭でワールド・シネマ・ドキュメンタリー部門の最高賞であるグランプリを獲得、また、アヌシー国際アニメーション映画祭でも最高賞となるクリスタル賞ほか3部門を受賞するなど、ドキュメンタリー、アニメーションという表現の垣根を越えてジャンル横断的に高い評価を受け、4月12日現在、各国の映画祭で82受賞136部門ノミネートという圧倒的な評価を獲得している。
主人公アミンが誰にも明かしたことのなかった自身の過去を、長年の親友である映画監督(本作の監督ヨナス・ポヘール・ラスムセン)に対して初めて語る物語を録音し、それを元にアミンの人生で起きた記憶を鮮やかに描くためにアニメーションが用いられている本作。
このたび解禁された冒頭映像は、ラスムセン監督の「君にとっての“故郷”とは?」という問いに対して、アミンが言葉を絞り出すように「それはどこか…安全な地。そこに…いることができて、よそへ行かずにすむ所。一時的ではない場所」と答えるところから始まる。その音声にのせて、今まさに崩れ去ろうとする場所から人々が逃げ惑う姿を象徴的なアニメーションで捉えた印象的な場面が映し出される。
目を閉じ、大きく深呼吸した現在のアミンの姿から切り替わるのは、彼の一番古い記憶である幼い頃の姿だ。ご機嫌そうに街を走り踊るアミンが大事にしている初代ウォークマンで聴いているのは、a-haの世界的大ヒット曲「テイク・オン・ミー」。場所はアミンの生まれ故郷であるアフガニスタン、カブール。活気に満ち人々が自由を謳歌していた当時の街の様子がアーカイブ映像で映し出される中、アミンはその頃の自分の思い出を語っていく。
監督によると、この「テイク・オン・ミー」はアミン自身のプレイリストに実際に入っていたもので、劇中何度か登場するアミンが音楽を聴くシーンで流れる曲は、いずれもアミンのプレイリストから採用した曲だという。
この映像のテロップにある通り、“アミン”という名前は、彼やその家族たちの安全に配慮し本作のために使用している仮名だ。本作のタイトルである「FLEE」とは英語で危険、災害、追跡者などから安全な場所へ逃げることを意味する。この冒頭映像で映し出される“難民になる前”のアミンとその家族は、父親不在の不安の中でも穏やかに暮らしていたが、この後、内戦の拡大をきっかけに着の身着のまま故郷であるアフガニスタンを脱出することになる。本作は、祖国から逃れ生き延びたアミンが、本当の意味での“故郷”を探し求める物語でもあるのだ。
アミンは、本作完成後のインタビューで「難民に関する物語は、全般的に人々が難民と共感する道を開くことがあまりないので、だからこそ僕の物語を見てもらいたいと強く思ったのです。難民であるということがどのようなことなのか、リアルに描写されることが僕にとって非常に重要なことで、ヨナスならそれができると思っていました」と語っている。
『FLEE フリー』は6月10日(金)新宿バルト9、グランドシネマサンシャイン 池袋他全国ロードショー。
FLEE フリー
2022年6月10日(金)新宿バルト9、グランドシネマサンシャイン 池袋他全国ロードショー
STORY
アフガニスタンで生まれたアミンは、幼い頃、父が連行されたまま戻らず、残った家族とともに命がけで祖国を脱出した。やがて家族とも離れ離れになり、数年後たった一人でデンマークへと亡命した彼は、30代半ばとなり研究者として成功を収め、恋人の男性と結婚を果たそうとしていた。だが、彼には恋人にも話していない、20年以上も抱え続けていた秘密があった。あまりに壮絶で心を揺さぶられずにはいられない過酷な半生を、親友である映画監督の前で、彼は静かに語り始める…。
監督:ヨナス・ポヘール・ラスムセン 脚本:ヨナス・ポヘール・ラスムセン、アミン・ナワビ
製作プロダクション:Final Cut for Real『アクト・オブ・キリング』 製作総指揮:リズ・アーメッド、ニコライ・コスター=ワルドー
原題:Flugt 英題:FLEE 時間:89分 制作年:2021年 製作国:デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フランス合作 言語:デンマーク語、英語、ダリー語、ロシア語、スウェーデン語 レーティング:未定 日本語字幕:松浦美奈 後援:デンマーク大使館
配給:トランスフォーマー
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