夢枕獏(作)×谷口ジロー(画)の傑作漫画「神々の山嶺」をアニメ映画化した『神々の山嶺』(7月8日公開)のスケッチ画・絵コンテが解禁された。谷口の思いを引き継ぎ、7年の歳月をかけて完成させた本作の製作過程がうかがえる貴重で芸術性が高いものとなっている。

「誰もが谷口ジローの作品に敬意を抱いていて、彼をがっかりさせたくない、という強い思いがありました」

本作は第47回セザール賞アニメーション映画賞を受賞し、フランスで大ヒットを記録した日本原作のアニメーション映画。「登山家マロリーはエベレスト初登頂に成功したのか?」登山史上最大の謎の鍵を握る一台のカメラと孤高のクライマー・羽生。そして、彼を追うカメラマン・深町が初登頂の謎に迫りながら前人未到の冬季エベレスト南西壁無酸素単独登頂に挑む姿を描く。フランスで大ヒットを記録し今回、ついに堂々日本凱旋上映が決定。公開にあたり堀内賢雄、大塚明夫、逢坂良太、今井麻美といった日本を代表する豪華声優陣が吹き替えを務め世界初のアニメ版に息吹を吹き込んだ。

本作の原作漫画を手掛けたのは「『坊っちゃん』の時代」「遥かな町へ」「孤独のグルメ」など数々の傑作漫画を世に送り出し、2017 年にこの世を去った天才漫画家、谷口ジロー。谷口が夢枕獏の人気小説「神々の山嶺」を2000 年から 2003 年にかけて漫画化し全 5 巻で発行、フランスでは翻訳版が累計38万部を売り上げ、2005年にアングレーム国際漫画祭にて谷口が最優秀デッサン賞を受賞した。谷口自身も、2011 年にフランス政府から芸術文化勲章シュヴァリエ章を授与されるほど、フランスでも絶大な人気を誇る漫画家である。

この伝説の漫画に魅了されたプロデューサー、ジャン=シャルル・オストレロ、監督のパトリック・インバート、大ヒットアニメーション映画『ウルフウォーカー』の製作チーム、そして谷口ジロー自身も参加しこの壮大な作品を7年の歳月をかけ映画化。谷口は生前、「全身全霊を込めて描き上げた作品だからアニメーションで映画化されるのはとても嬉しい」と喜んだそうで、その反応が製作陣にとって大きな原動力となったという。

彼は同国の製作チームのもとを二度訪れ、作画やストーリーの確認に携わっていた。惜しくも完成版を観ることは叶わなかったが、本作は第 74 回カンヌ国際映画祭でプレミア上映されたのち、フランスの 300 以上の劇場で公開され、大ヒットを記録。同国のアカデミー賞にあたるセザール賞では長編アニメーション映画賞を受賞した。

アニメーション化にあたり、プロデューサーのステファン・ローランツは、「誰もが谷口ジローの作品に敬意を抱いていて、彼をがっかりさせたくない、という強い思いがありました」と語り、緻密な谷口の画力を受け継いだ写実的な表現を追求し、その真に迫ったリアルさをキャラクター造形にも取り入れていった。漫画版「神々の山嶺」には、高山の環境が忠実に再現されており、小さなコマの中に目がくらむようなエベレストの絶景を表現した谷口ジローが視覚以外の感覚に訴えようとしていたことは明らかであり、その画力に、読者は時が止まったように感じることもあれば、読者の脳の中で壮大なパノラマが映し出されることもある。読者はその雄大さに圧倒され、めまいすら覚えるのだ。

しかし監督は漫画の原作は大きな指針としながらも、距離を置き、エベレスト登頂に成功した人らの協力を仰ぎ、寒さの感覚、テントの中で寝たときの風の轟音、ロープの結び方、息切れなど、「リアル」を見極めるための生の情報を集めアニメーション化に生かした。下絵の段階から、監督パトリック・インバートにはキャラクター造形のビジョンが見えていた。「漫画の原作はあらゆる創作の拠り所にはなったが、漫画を再現するのとは違う作業が待っていた。谷口の絵には細かいディテールが描き込まれていて、それをそのままなぞるつもりはありませんでした。線の数を減らしたことで、かえってアニメーターは顔の表情に集中することができました。2Dでリアルな顔を描くには、目の位置などの細かい精度が要求されます。片目が少しずれているだけで、観客に違和感を与えてしまいますから」

さらに、谷口とは別の構図を編み出すことにも挑戦。葛飾北斎、小津安二郎、今敏、高畑勲、宮崎駿など日本の偉大なアーティストからも大きな影響を受けならがらも、逆光や構図のバリエーションなどあらゆるテクニックを使って、自分たちの方法でスクリーンに没入できるように試行錯誤を重ね、たくさんのアイディアを試したという。

そして谷口が亡くなる直前の2016年に脚本と下絵を見せることができ、「とても好意的な感想でした。そもそも彼の作品も小説の漫画化なので、翻案という作業を尊重してくれていることが伝わってきました」とプロデューサーで脚本も担当したジャン=シャルル・オストレロはその反応に胸を打たれたという。

谷口への最大のリスペクトを込めてフランスチームが最高傑作漫画のザイルを繋いだ冒険ミステリー『神々の山嶺』は7月8日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開。

作品情報

神々の山嶺(いただき)
2022年7月8日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開

STORY
「登山家マロリーがエベレスト初登頂を成し遂げたかもしれない」といういまだ未解決の謎。その謎が解明されれば歴史が変わることになる。カメラマンの深町誠はネパールで、何年も前に消息を絶った孤高のクライマー・羽生丈二が、マロリーの遺品と思われるカメラを手に去っていく姿を目撃。深町は、羽生を見つけ出しマロリーの謎を突き止めようと、羽生の人生の軌跡を追い始める。やがて二人の運命は交差し、不可能とされる冬季エベレスト南西壁無酸素単独登頂に挑むこととなる。

監督: パトリック・インバート
原作:「神々の山嶺」作・夢枕獏 画・谷口ジロー(集英社刊)
日本語吹き替えキャスト:堀内賢雄 大塚明夫 逢坂良太 今井麻美
2021年/94分/フランス、ルクセンブルク/仏語/1.85ビスタ/5.1ch/原題:LE SOMMET DES DIEUX /吹替翻訳:光瀬憲子
配給:ロングライド、東京テアトル

© Le Sommet des Dieux - 2021 / Julianne Films / Folivari / Mélusine Productions / France 3 Cinéma / Aura Cinéma

公式サイト longride.jp/kamigami/

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