ヒトラー率いるナチス支配下のドイツ“第三帝国”にかかわった市井の人々の証言を記録したドキュメンタリー『ファイナル アカウント 第三帝国最後の証言』がいよいよ今週末8月5日(金)より公開。このたび、戦争体験者であり本作のトークイベントにも登壇したジャーナリストの田原総一朗のコメント映像が解禁された。また、本作を一足早く鑑賞したナチス研究者やジャーナリスト、俳優など著名人から絶賛コメントも到着した。
ヒトラー率いるナチス支配下のドイツ“第三帝国”が犯した、人類史上最悪の戦争犯罪“ユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)”。本作はその「加害者側」の人間や目撃者たちの証言、当時の貴重なアーカイブ映像を記録したドキュメンタリー。武装親衛隊のエリート士官から、強制収容所の警備兵、ドイツ国防軍兵士、軍事施設職員、近隣に住む民間人まで、「現代史の証言者世代」と呼ばれる高齢になったドイツ人やオーストリア人などが、戦後の長い沈黙を破って当時について語る。
このたび到着したコメント映像で田原は「僕もね、日本が太平洋戦争に敗れたのは小学校五年生の夏休みですからね。太平洋戦争は正しい戦争だと思い込んでいた。ところが、8月に先生やマスコミの言うことが180度変わった。どうも偉い人の言うことは信用できないなと、マスコミも信用できないなと。やっぱり僕は具体的に言うと、伝聞推定ではなくて、一次情報を自分で確かめなきゃいけない」と語り、その思いがジャーナリストを目指すきっかけになったという。
さらに「この映画も含めて、戦争を知っている世代の表現を若い人たちに聞いて学んで、そして頑張ってほしい。というのは表現している人たちも、僕も含めてもう数年で死ぬ訳ね。これからの10年20年を支えるのは若い世代ですから、本当に頑張ってほしい」と映画をアピールしつつ、若い世代へのエールを送り、コメントを締めくくった。
あわせて映画評論家やドイツ研究者など15名から本作へコメントが寄せられた。「戦下の2022年に放たれた爆弾のような力作」、「究極の作品だ」、「見逃してはいけない!」、「翻訳をする手が震えた」といった、絶賛の声が届いている。コメント全文・一覧は以下にて。
『ファイナル アカウント 第三帝国最後の証言』は8月5日(金)より、TOHOシネマズ シャンテ、渋谷シネクイントほか全国ロードショー。
著名人コメント(五十音順・敬称略)
「普通の」ドイツ人がいかにナチになり、異常が日常となっていったか。
それは戦後いかに認識されたか。
重い記憶を体験者自らに語らせた稀有のドキュメンタリーである。
大木 毅(現代史家)
怪物よりも危険なのは何も疑うことなく信じ込む普通の人間だ―
映画冒頭のこの警句は、メディア情報に踊り、レッテル貼りに狂奔し、
他者を叩いて愉悦する今の日本人が、彼らと同じである事実を突き付けてくる。
大久保義信(月刊『軍事研究』副編集長)
国家は10年あれば変えられる―祖父母をホロコーストで殺害されたルーク・ホランド監督が、
ヒットラー・チルドレンから聞き取った250の証言は、
いまは亡き監督が21世紀の私たちにおくった「世界遺産」である。
大谷昭宏(ジャーナリスト)
答えを提示する作品ではない。問いを投げ続ける作品である。
罪とは何か、責任とは何か。明確な答えが出る問いではない。
だが、人びとが広い視点でものを考えるのを止めたときに何が起こったのかを、
この映画は見事にえぐり出している。
小野寺拓也(ドイツ現代史研究者/東京外国語大学大学院 准教授)
第二次世界大戦から七十七年。
あの戦争はついに歴史の彼方へと消え去りつつあり、
当事者がリアルに証言する映画はもう出てこないだろう。
まさにわたしたちの「同時代」の最後を見届ける作品なのだ。
佐々木俊尚(作家・ジャーナリスト)
当事者たちの間で「沈黙」に隠された意味は自明だった。
だがそれは次世代に何も伝えないだろう。
「沈黙」されたものは忘却されるどころか禍々しく再び頭をもたげている。
そんな危うい時代に私たちは生きている
渋谷哲也(日本大学文理学部教授/ドイツ映画研究者)
戦争という国家的な罪を、国民はどう受け止めるのか?
歴史に刻まれた蛮行を含め、人はその責任とどう向き合うべきか?
戦下の2022年に放たれた爆弾のような力作。
答は観客ひとりひとりの中にある。
相馬学(フリーライター)
ヒトラーだけが悪だったのか―。
ドイツでは近年、この問いに取り組む映画人が増えている。
「知らなかった」「自分に罪はない」と言い募る欺瞞を容赦なく炙り出すこのドキュメンタリーは、その究極の作品だ。自分ならどうするか。
戦争や虐殺、いじめなどが起きそうになるたび、この証言集を考えたい。
藤えりか(朝日新聞記者)
今でもヒトラーを支持する元親衛隊員が登場したのは想定内。
衝撃的なのは、過去を悔いる別の元親衛隊員に対して、
学生が「ドイツ人としての名誉も捨てたのか」と詰問する場面だ。
「過去の克服」は、なんと難しいことか。
並木均(ノンフィクション翻訳者)
「ホロコーストなど私は知らなかった」「直接手を下したわけでない」
「命令に従ったまでで仕方なかった」、国家による組織犯罪の〈責任〉は誰がどのように負うのか。
この問いは私たちにもつきつけられている。
初見基(近現代ドイツ文学・社会思想研究者/日本大学教授)
全体主義とは何か?それが戦争をする時には個々の行動に責任はあるのか?ないのか?
全体に責任を取らせることは可能なのか…?
そして我が身を振り返る。
支配階級が責任を取らない国で戦争が起きたらどうなるか?想像すると恐ろしい。
古舘寛治(俳優)
証言者たちが「はい、これで打ち止め!」と力を込めて黙る瞬間がある。
そこで続くべき言葉こそ真の本音なのだ。
終盤に向かうにつれ、その沈黙の壁を破り何かが次々とこぼれ出てゆく。
そこがキモだ。見逃してはいけない!
マライ・メントライン(ドイツ第2テレビプロデューサー)
「生まれながらの犯罪者はいない。作られるのだ」。
映画中で語られた、この言葉の重みをかみしめる。
それは、「失業とインフレが大変な時期」だったという。
ここで映し出しているのは、果たして「過去」なのだろうか。
安田菜津紀(認定NPO法人Dialogue for People副代表/フォトジャーナリスト)
楽しかった、知らなかった、私は関係ない……。
少年少女の心を捉えた「ナチズムの魅力」と、
少年少女の体に刻まれた「ナチズムの教育」に迫った作品。
私なら、抗うことができただろうか。
柳原伸洋(ドイツ・ヨーロッパ近現代史研究者/東京女子大学准教授)
ホロコーストで身内を失った監督が、自らの命を削りながらまとめ上げた証言の数々。
ごく普通の善良な市民が口にする衝撃的な内容に、翻訳をする手が震えた。
誰もが加害者になり得るということなのか。
吉川美奈子(ドイツ映画字幕翻訳者)
ファイナル アカウント 第三帝国最後の証言
※『ファイナル アカウント 最後の証言』から邦題変更
2022年8月5日(金)より、TOHOシネマズ シャンテ、渋谷シネクイントほか全国ロードショー
STORY
イギリスのドキュメンタリー監督ルーク・ホランドは、アドルフ・ヒトラーの第三帝国に参加したドイツ人高齢者たちにインタビューを実施した。ホロコーストを直接目撃した、生存する最後の世代である彼らは、ナチス政権下に幼少期を過ごし、そのイデオロギーを神話とするナチスの精神を植え付けられて育った。戦後長い間沈黙を守ってきた彼らが語ったのは、ナチスへの加担や、受容してしまったことを悔いる言葉だけでなく、「手は下していない」という自己弁護や、「虐殺を知らなかった」という言い逃れ、果てはヒトラーを支持するという赤裸々な本音まで、驚くべき証言の数々だった。監督は証言者たちに問いかける。戦争における“責任”とは、“罪”とは何なのかを。
監督・撮影:ルーク・ホランド/製作:ジョン・バトセック、ルーク・ホランド、リーテ・オード
製作総指揮:ジェフ・スコール、ダイアン・ワイアーマン、アンドリュー・ラーマン、クレア・アギラール/アソシエイト・プロデューサー:サム・ポープ
編集:ステファン・ロノヴィッチ/追加編集:サム・ポープ、バーバラ・ゾーセル/音楽監修:リズ・ギャラチャー
2020年/アメリカ=イギリス/ドイツ語/94分/カラー(一部モノクロ)/ビスタ/原題:Final Account/字幕翻訳:吉川美奈子/字幕監修:渋谷哲也/ナチス用語監修:小野寺拓也
配給:パルコ ユニバーサル映画/宣伝:若壮房
©2021 Focus Features LLC.
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