本年度ノーベル文学賞を受賞した仏作家、アニー・エルノーが若き日の実体験をもとに描いた傑作小説「事件」を映画化した『あのこと』が12月2日(金)より Bunkamura ル・シネマ 他にて絶賛公開中。本日12月10日に行われるノーベル賞授賞式を祝し、本作を象徴するシーンの本編映像が解禁された。
『パラサイト 半地下の家族』でアカデミー賞®4冠に輝いたポン・ジュノ監督が審査員長を務めた2021年ヴェネチア国際映画祭での最高賞受賞を皮切りに、世界の映画賞を席巻した衝撃作『あのこと』。舞台は1960年代、法律で中絶が禁止され、処罰されていたフランス。望まぬ妊娠をした大学生のアンヌが、自らが願う未来をつかむために、たった一人で戦う12週間が描かれる。全編アンヌの目線で描かれる本作は、観ている者の主観を揺るがすほどの没入感をもたらし、溺れるほどの臨場感であなたを襲う。タイムリミットが迫る中、闇をくぐり抜け、アンヌがたどり着く光とは?
本日12月10日は、ノーベル賞授賞式がスウェーデンのストックホルムで行われる。本作の原作小説「事件」の作者アニー・エルノーが、今年の文学賞を受賞、彼女も授賞式に参加予定だ。
このたびの受賞を記念して解禁された本編映像は、妊娠への焦りと恐怖を一人で抱えきれなくなった主人公アンヌが、親友に事実を告げるシーン。映画の舞台となる1960年代のフランスでは、人工中絶は法律で禁じられており、何らかの処置を受けた女性とそれを施した医師や助産婦、さらには助言や斡旋をしたものまでに懲役と罰金が科されていた。
アンヌと同じ学部に通い、ともに勉学に励み、時には3人でクラブへ夜遊びに出かける、心許せる親友であるエレーヌとブリジット。彼女たちの前で膨らんできたお腹を見せると2人は「ウソでしょ」と絶句する。「処置する。お願い、誰か探して」と助けを求めるアンヌに、エレーヌは手を差し伸べようとするが、ブリジットは「私たちには関係ない。刑務所に入りたい?」とエレーヌを止める。そして「好きにして。でも巻き込まないで」とアンヌを冷たく見放すも、やるせない表情を見せる――。
いくら親友でも中絶に手を貸せば自身も罪を問われることになってしまう時代。彼女たちもアンヌと同じように夢を持ち、大学まで進学した自身の努力を簡単に無駄にするわけにはいかないのだ。妊娠をしただけで、友情すらも失い、孤独な状況下におかれるしかないという、女性への理不尽な待遇をうけるアンヌの表情が切ない。
本作の監督を務めたオードレイ・ディヴァンは、脚本を執筆する前に作者のアニー・エルノーと一緒に過ごし、エルノーから当時のこと詳しく聞いたという。ディヴァン監督は、その時のことについて「話をしながらエルノーは目に涙を浮かべていました。80歳を超え今なおいえていない彼女の痛みと激しい悲しみをどうにかして世に伝えたいと強く思いました」と語っている。またエルノー本人は小説の中で「わたしの経験を過去の話として埋もれさせてしまってもよい理由があるとは思えない」と記しており、相当な覚悟を持って「事件」を執筆したことが分かる。経験を見事に糧にし、ノーベル文学賞を受賞するまでに至った彼女の経験と信念を映し出したといえる映画『あのこと』は現在絶賛公開中。
さらに『あのこと』の公開を記念して、アニー・エルノー原作映画『シンプルな情熱』(21)が、Bunkamura ル・シネマで特別上映されることが決定した。原作は、アニー・エルノーが 1992 年に発表した作品。自身の実体験が赤裸々に綴られ、日本でも時代をリードし続ける人気作家から熱く支持され、大反響を巻き起こした。
パリの大学で文学を教える教師のエレーヌは、年下で既婚者のロシア外交官アレクサンドルとパーティで知り合い恋に落ちる。昼下がりに、自宅やホテルで逢瀬を重ね、彼との抱擁にのめり込んでゆくエレーヌだったが…。
エレーヌには『若い女』(17)でリュミエール賞有望女優賞を受賞した、実力派レティシア・ドッシュ。アレクサンドルを演じるのはセルゲイ・ポルーニン。19歳で英国ロイヤル・バレエ団の史上最年少プリンシパルに選ばれた2年後、人気絶頂の真っただ中で突如として退団を発表。現在は全身にタトゥーをまとう異端のダンサー、そして俳優としての新たなステージを竜巻のごとく席巻中の危険な香りを放つアーティスト。
レバノン出身のダニエル・アービッド監督が、女性ならではの視点で原作のスピリットを忠実に映画化することに成功。2020年カンヌ国際映画祭に公式選出され絶賛された。恋という名の情熱とは、自分自身を発見し、人生をさらに自由に羽ばたくためのギフトだと教えてくれる、胸が高鳴る愛と官能の物語だ。
『シンプルな情熱』は12月16日(金)より Bunkamura ル・シネマにて特別上映。『あのこと』のチケットや半券提示で当日一般料金が¥300引きとなる。概要は以下にて。
『シンプルな情熱』 特別上映
[上映期間]2022 年 12 月 16 日(金)より特別上映[会場] Bunkamura ル・シネマ
(東京都渋谷区道玄坂 2-24-1 Bunkamura 6F)
http://www.bunkamura.co.jp/cinema/
[料金] 一般・\1,800 学生・\1,500 (平日は学生・\1,200) シニア・\1,200(税込)
【毎週火曜日は\1,200(税込)均一】
『あのこと』のチケットや半券提示で当日一般料金が¥300 引き
※ご提示のチケットは半券・特別鑑賞券・QR チケットも可
STORY
去年の九月以降、私は、ある男性を待つこと以外、何ひとつしなくなった―
パリの大学で文学を教えるエレーヌはあるパーティでロシア大使館に勤めるアレクサンドルと出会い、そのミステリアスな魅力に強く惹かれたちまち恋におちる。自宅やホテルで逢瀬を重ねる度に、彼との抱擁がもたらす陶酔にのめり込んでいく。今まで通り大学での授業をこなし、読書も続け、友達と映画館へも出かけたが、心はすべてアレクサンドルに占められていた。年下で気まぐれ、妻帯者でもあるアレクサンドルからの電話をひたすら待ちわびる日々の中、エレーヌが最も恐れていたことが起きてしまう──。
原作:アニー・エルノー「シンプルな情熱」(ハヤカワ文庫/堀茂樹訳)
監督:ダニエル・アービッド 出演:レティシア・ドッシュ『若い女』、セルゲイ・ポルーニン『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』、ルー=テモー・シオン、キャロリーヌ・デュセイ、グレゴワール・コラン
原題:Passion simple/フランス・ベルギー/フランス語・英語/2020/99 分/R18+/日本語字幕:古田由紀子/配給:セテラ・インターナショナル
アニー・エルノー 【PROFILE】
1940 年、フランス、ノルマンディーのリルボンヌ生まれ。両親はカフェ兼食料品店を営んでいた。ルーアン大学、ボルドー大学で学び、卒業後、教員となり高校や中学で教える。1974 年、「Les Armoires vides」(原題)で作家デビュー、以後の全著作を名門出版社ガリマールから上梓する。性の欲望をテーマにした「シンプルな情熱」でセンセーションを巻き起こし、「場所」でルノードー賞、「Les Années」(原題)でマルグリット・デュラス賞とフランソワ・モーリアック賞を受賞。2017 年に全作品に対して、マルチメディア作家協会からマルグリット・ユルスナール賞を授与される。2022 年ノーベル文学賞受賞。ほとんどが自伝的な小説で、オートフィクションの作家と呼ばれている。本作の原作「事件」は、「嫉妬」(早川書房)に併録されている。
あのこと
2022年12月2日(金)Bunkamura ル・シネマ他 全国順次ロードショー
STORY
アンヌの毎日は輝いていた。貧しい労働者階級に生まれたが、飛びぬけた知性と努力で大学に進学し、未来を約束する学位にも手が届こうとしていた。ところが、大切な試験を前に妊娠が発覚し、狼狽する。中絶は違法の 60 年代フランスで、アンヌはあらゆる解決策に挑むのだが──。
監督:オードレイ・ディヴァン
出演:アナマリア・ヴァルトロメイ『ヴィオレッタ』
サンドリーヌ・ボネール『仕立て屋の恋』
原作:アニー・エルノー「事件」
配給:ギャガ
2021/フランス映画/カラー/ビスタ/5.1ch デジタル/100 分/翻訳:丸山垂穂
© 2021 RECTANGLE PRODUCTIONS - FRANCE 3 CINÉMA - WILD BUNCH - SRAB FILM
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