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チャイ売りから映画監督を目指した少年の驚くべき“実話”から生まれた感動作『エンドロールのつづき』が全国公開中。本作のトークショー付き上映会が1月21日(土)に実施され、パン・ナリン監督と年間100本以上も映画を観るほどの映画好きとして知られる芸人のこがけんが登壇、深い映画愛を語り合った。

監督「映画館がいっぱいになる方がアカデミー賞よりも重要」

チャイ売りの少年が映画と出会い、やがて世界で活躍する映画監督になる―。監督自身の驚くべき物語を映画化した『エンドロールのつづき』は、トライベッカ映画祭ほか、世界中の映画祭で5つの観客賞を受賞し、さらにバリャドリード国際映画祭では最高賞にあたるゴールデンスパイク賞をインド映画として初めて受賞。そして世界中の映画祭から喝采を浴び、第95回アカデミー賞インド代表(国際長編映画賞)に決定している。

本作上映前の満員の会場に登場した監督のパン・ナリンは観客の顔をみて嬉しそうに「本当に心から感動します。日本が大好きで数日滞在していますが、毎日感動しています。映画館に行くことが難しくなった時代でもありますが、皆さんは来てくれました。本当にありがとうございます」と感謝の意を述べた。

インドの正装でもあるクルターという衣装に身を包んで登場したこがけんは、自身の衣装について「素晴らしい衣装で本当に嬉しいんですけど、インドのホテルのドアマンみたいになってる! そして、こういう人が出る映画ではありません! 小道具として渡されたランプ、これも映画に出ません!」と自ら突っ込みを入れ会場に笑いを起こすと、監督は「素晴らしい!」と褒めつつ「そのランプを擦ると、スクリーンに素敵な映画が現れます」と見事な返しでコメント。「ロマンチックじゃないとこんな映画撮れない!」とこがけんを唸らせた。

13年ぶりの来日だという監督に日本でお薦めしたいところはあるか?と聞かれたこがけんは「本作の見どころの一つとして、お母さんがつくる料理がありますが、僕がお勧めするのは下北沢にある『とん水』というご夫婦がやっている定食屋ですね。そこのナスを焼いて七味と醤油をかけたものがとても美味しい! 是非行ってみてください」と具体的にお勧めすると、監督もうんうん、と頷く。さらにこがけんは「あとは北九州ですね。北九州が映画の撮影に協力的。どこでも爆破シーンを撮っていい。日本で爆破させたかったら北九州に行ってほしいなと思います」と撮影場所もお勧めした。

映画マニアで知られる監督は、どの様な映画をみているのか聞かれると「見る立場という意味ではなんでも見ます。日本映画は『たんぽぽ』などを見て、出てくる料理を食べてみたいなと思いました」と異文化を映画で学んでいたと回想。

すると、こがけんは本作の“料理”の部分に触れ、「この映画は、いわば“食テロムービー“といってもいいと思います。こんなに美味しそうな料理を綺麗に撮っているというところが素晴らしい!」と褒めちぎる。これに監督は「まさにその通りで、母の手料理というのは本当に美味しかったので表現したいとの思いがありました。キッチンも半分戸外で半分室内でしたので本作でも同じ様に表現しました。日本もイタリアも美味しいものがたくさんありますが、そういう国は文化や映画も素晴らしい。映画と食には何か関係があるんじゃないかと思います」と持論を展開した。

監督が本作を撮ろうと思ったきっかけは、久しぶりに故郷に帰り、劇中に登場する映写技師ファザルのモデルとなった友人との再会だったという。デジタルの波に飲まれて失職してしまった彼、そして映画監督を志していた子供時代の思い出が合わさり、インドの地方で暮らす無垢な少年の映画を作りたいと思ったという。

そんな監督にこがけんは「映画への愛情の深さにオーマイガー!です。映画好きというよりフェティシズムまでいっちゃっているのがすごい! 映画愛と行動力が合わさったときの破壊力。決して裕福な子供時代ではないサマイと、映写技師との話が『ニュー・シネマ・パラダイス』を思い起こさせるんですけど、本作はとってもリアル。ファザルとのやりとりがとっても面白いし、またフィルム映画の幕開けから終焉まで巡っているのがすごい。そして…ラストは鳥肌がたったのでみなさん楽しみにしてください!」と一気に本作の魅力を熱弁し、監督に「素晴らしい。私のエージェントになってください」と言わせる一幕も。

世界中で観客賞を受賞した本作が米アカデミー賞国際長編映画部門にノミネートを期待されていることについて聞かれた監督は「映画が好きで、観客に観てほしいという思いから映画を作り始めたので、今日のように自分の作品を観たい人で映画館がいっぱいになる方がアカデミー賞よりも重要でうれしいです。そして大好きな日本で公開されたことが賞をいただく以上のもの」とコメント。「常に観客のみなさんに自分の作品を届けたいという思いで映画を作ることからはブレないでいたい」との思いを観客に届けた。

最後にこがけんが「みなさんが思っているインド映画とは違うかもしれない。でもこれはパン・ナリン監督の映画愛がここまでいくんだ、ということを楽しみにしてほしい映画です。途中で眠ったりしたらオーマイガー!」とサービスたっぷりに伝えると、監督もこがけんに感謝の言葉を返し、「これからみなさんには映画を見ていただくわけですが、人に対してやさしい気持ちになり、笑って泣いて、最後にお腹を空かせて帰っていただければと思っています」と笑顔で締めくくった。

『エンドロールのつづき』は絶賛公開中。

作品情報

エンドロールのつづき
2023年1月20日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネリーブル池袋 他全国公開

STORY
9歳のサマイはインドの田舎町で、学校に通いながら父のチャイ店を手伝っている。厳格な父は映画を低劣なものだと思っているが、信仰するカーリー女神の映画は特別と、家族で街に映画を観に行くことに。人で溢れ返った映画館、席に着くと、目に飛び込んだのは後方からスクリーンへと伸びる一筋の光…そこにはサマイが初めて見る世界が広がっていた。映画にすっかり魅了されたサマイは、再び映画館に忍び込むが、チケット代が払えずつまみ出されてしまう。それを見た映写技師のファザルがある提案をする。料理上手なサマイの母が作る弁当と引換えに、映写室から映画をみせてくれるというのだ。サマイは映写窓から観る色とりどりの映画の数々に圧倒され、いつしか「映画を作りたい」という夢を抱きはじめるが―。

監督・脚本:パン・ナリン 出演:バヴィン・ラバリ
2021 年/インド・フランス/グジャラート語/112 分/スコープ/カラー/5.1ch/英題:Last Film Show/日本語字幕:福永詩乃 G 応援:インド大使館 配給:松竹

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公式サイト movies.shochiku.co.jp/endroll

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