孤独死や独居が国家課題のヨーロッパを舞台に、“同時安楽死”を選択した老夫婦を描く『両親が決めたこと』予告編解禁

2024年トロント国際映画祭にて「作品賞」を受賞した映画『両親が決めたこと』が2026年2月6日（金）よりシネマート新宿ほか全国順次公開。このたび予告編映像＆場面写真が解禁された。

本作は、ヨーロッパで急激に増加する〈デュオ安楽死〉を選択した老夫婦と、その決断を受け止める子どもたちの心の機微を描いた家族ドラマ。人生の最終章においてなお、互いを想い続ける夫婦の姿を、静かで力強く描き出す。

このたび解禁された予告編では、終末期を迎えた母クラウディアと、母と共に〈デュオ安楽死〉を決意をした父フラビオの告白をきっかけに、物語が大きく動き出す。

すでにそれぞれの家庭を持ち、実家を離れて暮らす親の介護世代に差し掛かった三兄弟が、久しぶりに実家に集い、泣き、叫び、怒り、感情をぶつけ合う姿が印象的に描かれている。年齢を重ね、立場が変わっても、親の前では子どもであり続ける――そんな“家族は変わらない”という感覚を強く想起させる内容となっている。〈デュオ安楽死〉を巡って次第に浮かび上がる葛藤と愛情が切り取られ、重いテーマを扱いながらも、あくまで“家族の物語”として描かれ、本編への期待を高める内容となっている。

さらに今回の予告編では、〈デュオ安楽死〉を選ぶ夫婦の存在が初めて明確に示され、その動機や背景の一端も垣間見える。本作の脚本家クララ・ロケは取材の中で、「欧州では急速な高齢化とともに、孤独死や独居が深刻な社会問題となり、国によっては“孤独省”や“孤独担当大臣”が設置されるほど、孤独そのものが国家レベルの課題になっている」と語る。

充実した公的ケアを誇る欧州でさえ、働き手不足、家族が遠方に暮らす“分散家族”、介護の長期化、医療・介護費の増大といった現実が福祉を圧迫。その中で、「パートナーを失って生き続ける精神的苦痛」や「尊厳の喪失への恐れ」を抱える高齢者が増え、「同時に逝くことこそが最も幸福」という考えに至る精神的構造が生まれている。本作はその社会背景を親と子の視点を通してリアルに映し出している。

予告編は、バスで席を譲ってもらった際、末期がんの母を座らせようと父が言ったことばで締めくくられる。他人には言えない言葉を自然に交わせるのは、長年かけて築かれた揺るぎない信頼関係があるからこそ。過酷な現実の中でも、互いを笑わせ、寄り添い続ける二人の関係性を象徴する印象的なセリフとなっている。本作は、デュオ安楽死という社会的テーマを通して、現代社会が直面する「孤独」と「家族のかたち」を静かに問いかける。