1980年代初頭のロンドンを舞台に、働く女性を実験性と芸術性に満ちた独創的なアプローチで描く2作品『ザ・ゴールドディガーズ』(83)と『ナイトシフト』(81)が、8月22日(土)より、渋谷ユーロスペースにて同時公開されることが決定した。あわせて特報予告と各作品のメイン画像が解禁された。
二つの映画(フィルム)に共通するのは、ネオリベラリズム(新自由主義)が台頭する「1980年代初頭」の「ロンドン」を舞台に「女性監督」が手がけた「最初の長編映画」であり、「音楽」が極めて重要な役割を果たしていること。そして、「働く女性」が映し出されているということだ。『ザ・ゴールドディガーズ』は「スター女優」と銀行員の女性、『ナイトシフト』はホテルの受付として働く女性が主人公として登場する。
『ザ・ゴールドディガーズ』は、イギリスを代表する映画監督の一人、サリー・ポッターの長編デビュー作。その後『オルランド』(92)や『タンゴ・レッスン』(97)などを監督し、世界的な評価を得ている。近年フェミニズム映画の金字塔として評価を高めており、世界中で上映が相次いでいる本作。脚本は、ポッターと二人の盟友によって書かれた。前衛的なロックグループ「ヘンリー・カウ」などで活動した音楽家のリンジー・クーパー、そしてパフォーマンス・アートの先駆者であるローズ・イングリッシュ。クーパーは音楽も担当しており、技巧を凝らした美しい旋律を奏でるスコアを提供。一方、イングリッシュは美術と衣装を担い、本作のユニークな世界観を支えている。

撮影監督は、シャンタル・アケルマン監督『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』(75)を手がけたバベット・マンゴルト。主演は『ダーリング』(65)でアカデミー賞主演女優賞を受賞したイギリスを代表する俳優、ジュリー・クリスティ。映画(映画史)に囚われた女性像を体現する主人公ルビーを、存在感たっぷりに演じた。
『ナイトシフト』は、昨年逝去したロビーナ・ローズが遺した唯一の長編監督作品。主演は英国のパンクカルチャーのアイコン的存在であり、デレク・ジャーマンの『ジュビリー』(78)にも出演した、ジョーダン(パメラ・ルーク)。撮影は米国のインディペンデント映画作家、ジョン・ジョストが手がけた。音楽は伝説的楽団「ペンギン・カフェ・オーケストラ」のサイモン・ジェフスが担当。ほか、1980年代初頭のロンドンのアート&カウンターカルチャーに関わる人物たちが参加。ミニマルかつリミナルな独自の世界観を作り上げた。数十年の間、鑑賞困難な状況にあったが、2024年に4K修復がなされ世界各国で上映が続いている。

製作から40年余りの時を超えて、スクリーンに映し出される『ザ・ゴールドディガーズ』と『ナイトシフト』。時代の転換期に登場したオルタナティヴでエッジィな挑戦は、今、どのように受け止められるのか。
今回各作品の特報が解禁。『ザ・ゴールドディガーズ』の特報では壁をドラムのようにバチで叩くリズミカルな音と、機械の持続音に合わせて、ロンドンとアイスランドのシーンが次々と映し出され、作品のキーとなるダンスも見られる。どのシーンも息を呑むような美しいモノクロ映像だ。『ナイトシフト』では能面のように無表情なホテルの受付係が映し出され、ロビーにあるディスクオルゴールの夢心地な音が聞こえてくる。幻燈のような映像と音に釘付けになる。
上映作品
『ザ・ゴールドディガーズ』 国内劇場初公開
1983年|イギリス|モノクロ|89分|原題:The Gold Diggers
監督:サリー・ポッター/脚本:リンジー・クーパー、ローズ・イングリッシュ、サリー・ポッター/撮影:バベット・マンゴルト/音楽:リンジー・クーパー/編集:サリー・ポッター/美術:ローズ・イングリッシュ/振付:サリー・ポッター/出演:ジュリー・クリスティ、コレット・ラフォン、ヒラリー・ウェストレイク、デヴィッド・ゲイル、ジャッキー・ランズリー、ロル・コックスヒルほか
ロンドン中心部「シティ」の銀行でデータ入力係として働く黒人のフランス人女性セレステ(コレット・ラフォン)。「数字を移動するだけ」の労働の空虚さに疑念を抱き、やがて「金」と「権力」の関係に強い関心を抱くようになる。一方、「スター女優」のルビー(ジュリー・クリスティ)は、自らの幼少期の記憶と覆い隠された自分自身の歴史を辿り、「偶像」としての自分を客観的に見つめ直す。迫りくる非人格的で官僚主義的な男たちと、規制と規則によって張り詰めた不条理な空間。二人は出会い、言葉を交わし、やがて予感する。男性の経済的覇権争いと「神秘的でいて無力で美しい」という理想的な女性像とのあいだに、何らかの結びつきがあるのではないかと感じ始める。
監督:サリー・ポッター
1949年9月19日、英国ロンドン生まれ。母親は音楽の教員、父親はインテリアデザイナーで詩人のノーマン・ポッター。14歳で最初の8mm映画を作り始めると、英国の実験映画の拠点であった「London Filmmakers Co-op」(現在は「LUX」という組織に展開)に加わり、実験的な短編映画やエクスパンデット・シネマ(拡張映画)の制作を行う。その後、パフォーマンス・アーティスト、演出家として活発に活動。1978年には女性たちによって結成された即興音楽グループ「Feminist Improvising Group(FIG)」に歌手・パフォーマーとして加入。メンバーの音楽家リンジー・クーパーとの密接な協力関係を築き、そのコラボレーションは、80年代後半から90年代初頭に制作・発表された歌曲集「Oh Moscow」などに結実している。
1979年、短編映画『Thriller』を制作。1983年、初の長編監督作となる『ザ・ゴールドディガーズ』を発表。1990年にクリストファー・シェパードと共に製作会社「Adventure Pictures」を設立。1992年『オルランド』を発表。米アカデミー賞2部門にノミネートされるなど国際的な評価を得た。その後、『タンゴ・レッスン』(97)、『耳に残るは君の歌声』(00)、『ジンジャーの朝』(12)など話題作を手がけている。ロンドンのBFIサウスバンク、ニューヨークのMoMA、シネテカ・マドリードでは大規模な回顧展が開催。近年、シンガー・ソングライターとして『PINK BIKINI』(23)、『ANATOMY』(25)とアルバムを発表。映画、ダンス、パフォーマンス・アート、音楽と領域を横断する創作活動を行なっている。
『ナイトシフト』 国内劇場初公開
1981年|イギリス|カラー|68分|原題:Nightshift
監督:ロビーナ・ローズ/脚本:ニコラ・レーン、ロビーナ・ローズ/撮影:ジョン・ジョスト/音楽:サイモン・ジェフス/出演:ジョーダン、ジム・アダムス、アン・リース=モッグ、マイク・レッサー、バーブ・ジュンガー、マックス・ハンドリー、ヒースコート・ウィリアムズなど
ロンドン・ノッティングヒルにあるポートベロー・ホテル。夜勤の受付係はルーティンワークをこなしながら、静かに風変わりな宿泊客たちを見つめる。ライブを終えたバンドマンたち、おちぶれた伯爵夫人、夜通しポーカーに興じる男たち…。まるで幻燈のような光景が映し出され、睡眠と覚醒の間、ホテルは幽霊が彷徨うような境界的な空間へと化していく。
監督:ロビーナ・ローズ
1951年、デンマーク人とドイツ人の両親のもとに生まれ、ロンドンのノッティング・ヒルで育つ。ロンドンのオルタナティヴ・アート・センター「アート・ラボ(Arts Lab)」の映写技師としてキャリアをスタートさせた後、王立芸術大学(RCA)で学び、1977年に卒業。在学中には、ヘレン・ミレンやクエンティン・クリスプが出演した映画『Hamlet』(76、セレスティーノ・コロナド監督)の撮影に携わった。その後、彼女は『Birth Rites』(77)、『Jigsaw』(80)、『Nightshift』(81)と3つの実験的な映画を発表。なかでも、パンク・アイコンのジョーダンを起用した『Nightshift』は、後にニューヨーク近代美術館(MoMA)に収蔵されている。ドイツ学術交流会(DAAD)のフェローシップを受けた後はベルリンへ渡り、ドイツ映画テレビアカデミー(DFFB)で教鞭を執った。英国帰国後は、BBCコミュニティ番組制作部門で数々の映像作品を監督。農業における殺虫剤使用を初めて取り上げた作品などを制作した。その後、景観史を学んだ彼女は、環境活動家としての指導的な立場へと転身。CPRE London(英国の田園地帯を守る慈善団体)の議長を務めるほか、ポートベロー・ロードを保護する運動を共同で設立。2015年には「緑の党」の候補者としてケンジントン選挙区から出馬した。
まとめ(注目ポイント)
- 『ザ・ゴールドディガーズ』『ナイトシフト』2作品同時公開決定『ザ・ゴールドディガーズ』『ナイトシフト』が2026年8月22日よりユーロスペースほかで同時公開。
- 1980年代ロンドンを描く異色作ネオリベラリズムが台頭するロンドンを舞台に、働く女性たちの姿を映し出した作品群。
- 女性監督による長編デビュー作サリー・ポッターとロビーナ・ローズが初期に手がけた重要作をスクリーン上映。
- 国内劇場初公開『ザ・ゴールドディガーズ』『ナイトシフト』ともに国内劇場初公開作品として上映。
- 特報映像も解禁モノクロ映像の美しさが際立つ『ザ・ゴールドディガーズ』と幻想的な『ナイトシフト』の特報公開。
ザ・ゴールドディガーズ
ナイトシフト
2026年8月22日(土)渋谷ユーロスペースほか全国順次公開
『ザ・ゴールドディガーズ』
The Gold Diggers © 1983 Sally Potter, Rose English, Lindsay Cooper
『ナイトシフト』
Nightshift © Cinenova
配給:プンクテ 後援:ブリティッシュ・カウンシル




