10月9日(土)岩波ホールにてロードショーされるパトリシオ・グスマン監督最新作『夢のアンデス』の公開を記念して、パトリシオ・グスマン監督の歩みと、もうひとつの9.11とも呼ばれ、世界に衝撃を与えた1973年のチリ・軍事クーデターとその後のチリの歴史的記憶を知るための3作を上映することが決定した。
「史上最高のドキュメンタリー映画」との誉れ高い4時間半の大作『チリの闘い』、最新作『夢のアンデス』が最終章となる、チリ弾圧の歴史を描く3部作の前2章『光のノスタルジア』と『真珠のボタン』の3作品を岩波ホールにて上映する。
チリの現代史と、その歴史的記憶、政治的トラウマ、地理の関係を俯瞰的に知るための貴重な機会となる。
グスマン監督の旧作は岩波ホールでの『夢のアンデス』公開中に週替わりで上映、『チリの闘い』は 3 部作を 2 回のみ一挙上映する。
上映スケジュールの詳細はこちらにて。
■チリ・軍事クーデターとは?
1973 年 9 月 11 日、チリ・軍事クーデター。世界で初めて選挙によって選出されたサルバドール・アジェンデの社会主義政権を、米国 CIA の支援のもと、アウグスト・ピノチェトの指揮する軍部が武力で覆した。ピノチェト政権は左派をねこそぎ投獄し、3000 人を超える市民が虐殺された。
■パトリシオ・グスマン監督 プロフィール
1941年、サンティアゴ生まれ。マドリッドの公立映画学校に通い、主にドキュメンタリーを学ぶ。軍事クーデターでサルバドール・アジェンデ政権が倒れた後、サンティアゴのエスタディオ・ナシオナル・デ・チリ(国立競技場)の独房に監禁され、処刑される恐怖を味わった。1973年、チリを後にした彼は、キューバ、スペイン、そして現在も暮らすフランスへと移り住んだ。これまでに多数の国際映画祭に選出され、いくつもの賞を受けている。
【上映作品】
① 『チリの闘い』(1975―1978年) 製作・監督・脚本: パトリシオ・グスマン/263分
(第一部:ブルジョワジーの叛乱(96 分) 第二部:クーデター(88 分) 第三部:民衆の力(79 分) )
東西冷戦期の 1970 年、チリでは選挙によって成立した世界初の社会主義政権が誕生し、サルバドール・アジェンデが大統領に就任した。「反帝国主義」「平和革命」 を掲げて世界的な注目を集め、民衆の支持を得ていたが、その改革政策は国内の保守層、多国籍企業、そしてアメリカ合衆国政府との間に激しい軋轢を生み、チリの社会・経済は混乱に至る。1973年9月11日、陸軍のアウグスト・ピノチェト将軍ら軍部が米国CIAの支援を受け、軍事クーデターを起こす。アジェンデは自殺(諸説あり)。以後、チリはピノチェトを中心とした軍事独裁政権下に置かれた。
パトリシオ・グスマンは、このチリにおける政治的緊張と社会主義政権の終焉を撮影・記録。クーデターの後、グスマンは逮捕・監禁されるも処刑の難を逃れ、フランスに亡命。撮影されたフィルムも奇跡的に国外に持ち出され、映画監督クリス・マルケルやキューバ映画芸術産業庁(ICAIC)の支援を得て、「史上最高のドキュメンタリー映画」 とも言われる破格の作品を完成させた。
・1975年・1976年カンヌ国際映画祭「監督週間」部門出品
・1975年・1976年・1979年ベルリン国際映画祭フィルム・フォーラム部門出品
・1979年ハバナ新ラテンアメリカ映画祭グランプリ
② 『光のノスタルジア』(2010年) 監督・脚本:パトリシオ・グスマン/90分
チリ・アタカマ砂漠。標高が高く空気も乾燥しているため天文観測拠点として世界中から天文学者 たちが集まる一方、独裁政権下で政治犯として捕らわれた人々の遺体が埋まっている場所でもある。 生命の起源を求めて天文学者たちが遠い銀河を探索するかたわらで、行方不明になった肉親の遺骨を捜して、砂漠を掘り返す女性たち……永遠とも思われる天文学の時間と、愛する者を失った遺族たちの止まってしまった時間。天の時間と地の時間が交差する。
・2011年 山形国際ドキュメンタリー映画祭 グランプリ受賞作品
③ 『真珠のボタン』(2015年) 監督・脚本:パトリシオ・グスマン/82分
全長およそ4300キロにも及ぶチリ南部、西パタゴニアの長い海岸線、その海底で発見されたボタン ──海に捨てられた遺体の衣服に付いていたそのボタンは、政治犯として殺された人々や、祖国と自由を奪われたパタゴニアの先住民たちの声を我々に伝える。海の水はビッグバンの際に宇宙空間から飛来したものだという。よって、有史以来、海は人類の歴史を記憶している。火山や山脈、氷河など、チリの超自然的ともいえる絶景の中で流されてきた多くの血、その歴史を、海の底のボタンがつまびらかにしていく。
・2015年 ベルリン国際映画祭 銀熊賞脚本賞受賞
・2015年 山形国際ドキュメンタリー映画祭インターナショナル・コンペティション部門出品作品
パトリシオ・グスマン監督最新作『夢のアンデス』
『光のノスタルジア』『真珠のボタン』に続く、チリ弾圧の歴史を描く3部作最終章
1973年9月11日、チリ、軍事クーデター、それは私たちの人生を変えた―
世界最長の山脈、アンデス。チリの国境に沿って大きくそびえる山々
その足元で繰り広げられる生と死をただ静かに見つめ続ける
絶望をこえ、過去と未来を見据え、どう生きるべきか、私たちの「今」を問う。
1973年9月11日、チリ・軍事クーデター。世界で初めて選挙によって選出されたサルバドール・アジェンデの社会主義政権を、米国CIAの支援のもと、アウグスト・ピノチェトの指揮する軍部が武力で覆した。ピノチェト政権は左派をねこそぎ投獄し、3000人を超える市民が虐殺された。南米ドキュメンタリーの巨匠パトリシオ・グスマン監督は、40年以上にも渡りチリの弾圧の歴史を描いてきた。『光のノスタルジア』(10)『真珠のボタン』(15)に続く一大叙事詩最終章となる本作は、かつて『チリの闘い』(1975-1978)で映像に残した、永遠に失われた輝かしいアジェンデ時代の歴史と、クーデター後、新自由主義の実験の場となってしまった祖国の現状を、アンデスのように俯瞰した視座から改めて見つめ直す。
2021年10月9日(土)より岩波ホールほか全国順次公開
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