アカデミー賞の前哨戦ともいわれる第46回トロント国際映画祭(以下TIFF)で観客賞を受賞した、ケネス・ブラナー監督の最新作『ベルファスト(原題)』(Belfast)。ブラナーの半自伝的映画である本作には、自身が監督を務めた2011年公開のマーベル映画『マイティ・ソー』にまつわるイースターエッグ=小ネタが隠されているという。

"Kenneth Branagh" by Air Force One is licensed under CC BY-NC-ND 2.0
あの神様の登場に、作品を見たファンも歓喜!

2021年9月10日よりオンラインと対面形式で開催され、9月18日(日本時間)に幕を閉じた第46回トロント国際映画祭(以下TIFF)。最高賞にあたるピープルズ・チョイス・アワード(観客賞)を受賞したケネス・ブラナー監督の最新作『ベルファスト(原題)』(Belfast)は、ブラナーが幼少期を過ごした1960年代の北アイルランドを舞台に、紛争の中で育った9歳の少年バディ(ジュード・ヒル)の姿を描く自伝的作品だ。

“シェイクスピア俳優”として名高いブラナーは、英国の名門RADA(王立演劇学校)を卒業後、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーに参加し多数の舞台や映画に出演。近年は『エージェント:ライアン』(14)やディズニーの実写版『シンデレラ』(15)の監督など、ハリウッド大作にも参加している。そのきっかけとなったのが、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の第4作目『マイティ・ソー』。ブラナーはアスガルドの王家にシェイクスピア的な感覚を持ち込み、全世界で約5億ドルの興行収入を記録し、成功を収めた。

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▲左から『マイティ・ソー』ロキ役のトム・ヒドルストン、ケネス・ブラナー、ソー役のクリス・ヘムズワース

『ベルファスト』は主人公バディが若き日のブラナーであるとは直接言及されていないが、ブラナーはベルファストで生まれ、家族でイギリスに引っ越すまでの9年間を同地で過ごした。米VarietyやScreen Rantによると、本作は当時の暴力的な不安を背景にしながらも、ユーモアと感動的なシーンに満ちており、その中のひとつにバディが舗道に座ってソーのビンテージコミックを読むシーンもあるという。トロント映画祭で本作を見た観客は、 未来の映画監督が幼い頃から雷神に情熱を傾けていたことを示すようなこのシーンを喜び、拍手を送っていたとのこと。

さらに、バディの寝室にアガサ・クリスティの小説が置かれている描写もあるそう。これはブラナーが主演・監督を務めた名探偵ポアロの映画化作品『オリエント急行殺人事件』と次回作『ナイル殺人事件』にちなんだもの。ほかにバディと彼の家族(ジェイミー・ドーナンカトリーナ・バルフ)が当時のコンテンツを楽しむシーンには、ジェーン・フォンダの『バーバレラ』、ラクエル・ウェルチの『恐竜100万年』、オリジナル版『スター・トレック』シリーズ(邦題『宇宙大作戦』)などが含まれているという。

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▲主人公の父親を演じる同郷の俳優ジェイミー・ドーナンとケネス・ブラナー

ブラナーは受賞後、「TIFFでの『ベルファスト』の初上映は、私のキャリアの中で最も記憶に残る経験のひとつでした。これほど多くのカナダの映画ファンが本作を深く理解してくれたことは、私とジェイミー・ドーナンにとって絶対的なものでした」と語っている。

『ベルファスト』は2021年11月12日に全米公開予定。

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