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アメリカのアンダーグラウンド・コミックを代表する漫画家、イラストレーターのロバート・クラムのドキュメンタリー映画『クラム』(2月18日公開)に小説家の保坂和志をはじめ、根本敬、鈴木惣一朗、中原昌也ら総勢20名の著名人から推薦コメントが到着した。

「映画が映したことのない何かが剥き出しになってる。それを説明するのは簡単じゃない」

カウンターカルチャーを象徴するキャラクター「フリッツ・ザ・キャット」、「ミスター・ナチュラル」を生みだし、またジャニス・ジョプリンのアルバム「チープ・スリル」のジャケットを手掛けるなど、60 年代後半のアメリカにあって、一躍脚光を浴びる存在となったロバート・クラム。本作は彼の戦前のブルースへの偏愛、ともに精神を病んでいる兄チャールズ・弟マクソンからの影響、LSD の使用、⼥性に対する過度な恐怖⼼と特異な性的嗜好などそのコミックに劣らず異例ずくめの人物像と彼を⽣み出した家庭環境、⾃由の国アメリカのダークサイドが映し出すドキュメンタリー。監督は、クラムとともにストリングス・バンド「チープ・スーツ・セレネーダーズ」で活動し、のちにアメリカの人気コミック作家ダニエル・クロウズ原作の『ゴーストワールド』(2001)を撮ったテリー・ツワイゴフ。

このたび本作をいち早く鑑賞した著名人から推薦コメントが到着。作家・美術家・ミュージシャンなど総勢20名からコメントが寄せられている(コメント一覧・全文は以下にて)。あわせてコメントチラシのビジュアルに採用された別バージョンのビジュアルも解禁された。

『クラム』は2月18日(金)新宿シネマカリテほか全国順次公開。

コメント⼀覧(五十音順)

みずからの欲望に忠実に、好きなことに全身全霊を傾けて⽣きる──そのような⽣き方はいま、横並び主義を尊ぶこの国では“異端”“エゴイスティック”のように称されてしまうのかもしれない。
しかし僕はクラムのピュアな人⽣と、形容しがたい屈折を湛えたコミックスを愛してやまないのだ。
赤田祐⼀(『Spectator』編集者)

ロバ―ト・クラムは、1960 年代に始まったいわゆるアメリカのアンダーグラウンド・コミックスの旗⼿と言われがちだが、彼がマンガのなかで用いた Keep on trucking! 「歩き続ける!」ということばが好きだ。「がんばれ!」という意味で、いまなお世界の悩める若者たちをはげまし続けていると、私には思えるからである。
小野耕世(映画評論家)

ひたすら痛ましい映画です。「普通のハイスクールライフを送れていたら黒人街に行って古い SP レコードを漁ることもなかった」と語るクラムは、いつかの⾃分の似姿のようで直視できませんでした。
川勝徳重(漫画家)

「人間はもっと知的好奇⼼を持つべきだ」と言い、人間の闇の部分を陰影に満ちたタッチで描き出したクラムとその愛する戦前の音楽はポリコレ先進国となった米国と追随しかねない日本人が今、見るべき映画かも知れない。
川田寿夫(バイヤー)

描かずにはいられない。強迫的細密タッチで紡ぐロバートのアンモラルな作品群はドラッグや時代の申し子だが、暴力や病の問題を抱えた「クラム家」の家族からの影響も強かった事がヒリヒリと伝わってくる。丁寧な鉛筆下描き、レコード棚の細やかなインデックスなど画面の隅々に覗く彼の⽣真面目さも興味深かった。
眼福ユウコ(画家/イラストレーター)

「君に恋したことは⼀度もない。でも欲望はあったよ。僕が恋しているのは、娘ただひとり」かつての恋人を前に悪びれもせず言い放つクラム。この欲望をかたちづくった総てが、彼の家庭環境と当時のアメリカ社会にあるのかはわからない。しかし、三つ子のようなクラム家の兄弟の中、ロバートが、⾃らの暗い欲望やレイシズムから目を逸らさないことで⽣き延びたことはわかる。
久保玲子(映画ライター)

商業主義やアメリカ社会の病巣を描いたロバート・クラム。
かつて保守派に「道徳とモラルがない」と糾弾された彼は、現代ではリベラル派に「社会正義に欠ける」と糾弾されている。
社会規範は移り変わり、ポリティカル・コレクトネスはグローバル企業のマーケティング戦略になった。
果たして、クラムの視点は古びているのだろうか?
柴田英里(現代美術作家/文筆家)

鬼才ロバート・クラムの最重要映像。何か特別に感動的なエピソードや演出があるわけでもないのに、見終えた後、強烈に⼼に残る不思議な温かさよ‥それは、どんな最低な時でも笑っているクラムの笑顔が、いつも⽣きる希望を示しているから。素晴らしかった。
鈴木惣⼀朗 (a.k.a ワールドスタンダード)

ロバート・クラム。言わずと知れたアンダーグラウンドコミックの創始者。描きたいことを描きたいように描いた人。言うなれば、地球の良⼼。居てくれて、ありがとう。
長尾謙⼀郎(漫画家)

描かずにはいられないクラムの原点、描いていないと気が変になるクラムの理由が浮かび上がる強烈な作品。これはクラムの『くそったれ! 少年時代』だ。父親の暴力、兄弟との確執、⼿懐けられない欲望、孤独や疎外感、そして普通からの解放。美しく歪んだ猛毒のコミックスの奥には昔の SP 盤のブルースの優しさと人間らしさが鳴り響いている。
中川五郎(フォーク歌⼿/翻訳家)

当時観て「こんなジジイになってはならない!」と念仏を唱えた。が、現在の⾃分はあの時の彼より歳上…いま見直すのが、とても怖い。
中原昌也(ミュージシャン/作家)

家族って何だろう、幸せって何だろう?
そんなホッコリした気持ちになる映画…な訳ないだろうが。
根本敬(特殊漫画家)

⾃分の⼼の穴や痛みを見つめ、⾃身を保つために創作活動をするタイプの人がいる。
故に正直で痛々しく、愛おしい。
長谷川愛(現代美術家)

正義は勝つ。それでも悪は、苦しみ、もだえながら、⽣を試みた。この最低な世界で。最低な⽣に抗いながら。
樋口恭介(作家)

抑圧、差別、恐怖、妄想、誇張……目を背けたくなるような⼼のなかを痛ましいほどにかわいく不気味に描く、クラムの天才ぶりよ。
平山亜佐子(文筆家/挿話蒐集家)

めまいがするほどの最悪が渦巻く水の底。彼は浮かび上がってからもなお、その闇に囚われている。恐怖と渇望が暴力に変わる、吐き気がするようなそんな瞬間を僕たちは今この時代にもなんども目にする。ここに反射するのはその姿だ。彼は笑顔をたたえて言う、「なんと最低に輝いているんだろう、それで僕はぺちゃんこ」。
福富優樹 (Homecomings)

映画が映したことのない何かが剥き出しになってる。
それを説明するのは簡単じゃない。
保坂和志(小説家)

SP 盤蒐集も、フェティシズムも、溢れ出る創作意欲も、厭世的態度も、根っこではつながっている。
どれか⼀つの露出部分を取り上げてクラムを嫌悪し、否定することは容易だ。
しかし大事なことはそういった枝葉ではなく、それらを包み隠さず吐き出し続けることでクラムがなんとか⽣き延びてきたという事実だ。
堀部篤史(誠光社店主)

私たちはやっぱり人間で、身体はこんな形をしてそれぞれ異なっていて、家族というものがいるってことを誰よりも近く誰よりも遠くから見ているように感じた。その深海に潜む何かを彼は指先から⽣み出し続ける。やばいな、、と思いつつもロバートの“なんと最低に輝いているんだろう”の言葉に共感する私たちは、彼と異なることなんてないのかもしれない。
真舘晴子(The Wisely Brothers/ミュージシャン)

繊細な左⼿から迷いなく⽣み出される線の集積が、みるみるうちにすこぶる魅力的な絵に変化してゆく、この魔法を見せられているような感動!
そんな才能溢れる男の、世間に対する暴言やゲスな嗜好がなぜか嬉しくて、この映画を観ると乾杯したくなるんです。
「何て最低に輝いてるんだ」って言いながら。
涌井次郎(ビデオマーケット店主)

作品情報

クラム
2022年2月18日(金)新宿シネマカリテほか全国順次公開

監督:テリー・ツワイゴフ
プロデューサー:リン・オドネル/共同プロデューサー:ニール・ハルフォン/エグゼクティブ・プロデューサー:ローレンス・ウィルキンソン、アルバート・バーガー、リアンヌ・ハルフォン/撮影:マリーズ・アルベルティ/録音:スコット・ブラインデル/編集:ヴィクター・リヴィングストン/音楽:デイヴィッド・ボーディングハウス
出演:ロバート・クラム チャールズ・クラム マクソン・クラム エイリーン・コミンスキー
原題:CRUMB

1994 年/アメリカ/カラー/ヨーロピアン・ビスタ(1.66:1)/モノラル/120 分

配給:コピアポア・フィルム

©1994 Crumb PartnersⅠALL RIGHTS RESERVED

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