夢枕獏(作)× 谷口ジロー(画)の傑作漫画をアニメーション映画化した『神々の山嶺』がいよいよ明日7月8日(金)より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国公開。このたび、谷口ジローの意思を継ぎ、実現不可能と言われた伝説の登山漫画のアニメ化に挑んだパトリック・インバート監督のインタビューが到着した。
本作で見事第47回セザール賞アニメーション賞を受賞したインバート監督は制作段階で一番苦労した点について「原作が1500ページにも及ぶ大作なので、谷口ジローさんのスピリットや考え方をそのまま忠実にしながら、90分に短くするという作業が非常に難しかったです」と脚本作成が難航したことを吐露。「人物の描写や、深い心理的な部分については、より複雑なので、谷口さんの他の漫画を読むなど、谷口さんについて理解することで脚色ができました」と原作へのリスペクトを欠かさなかったことも話す。そうして、脚本が完成したのは、実に4年の歳月が経過していたという。
本作の大きな見どころの一つが山の描写だ。ここにも、苦労は絶えなかった。「私自身、登山をしないので、まずは山についてインターネットや本から色々な資料や知識を得ました。スタジオに、実際の登山家を呼び、どうやって山に登るのか、具体的なジェスチャーを加えて色々教えてもらいました。ヒマラヤ登山は、日本やフランスの山とも、アルプスの山々を登るのとも違い、厳しさがあります。そこをできるだけ忠実に、リアルに、写実的に描くように気をつけました」とリアルを追求した描写の背景も明かした。
山の描写と合わせて、日本の描写も再現度が高い本作。ここでも監督は、「先ほどの山と一緒で、日本文化についてもインターネットでたくさんの資料や画像など、様々なものを参考にしました。フランス人には、日本文化のファンの方がすごく多く、スタッフの中にも日本に住んでいた人がいます。また、私の友人で、コンサルタントをしている日本人の方は、フランスに住んで20年になります。彼らから、日本の文化、上下関係といった人間関係や死生観などいろいろ教えてもらいました。例えば、日常生活では靴を脱ぐという習慣などです。また、日本の住居は、畳一畳の大きさが決まっているというところから教えてもらいました」と細部にまでこだわった描写にも、日本のことを詳細に調べ尽くした事を明かした。
作中の深町の本棚が映るシーンでは、スタジオジブリや寺田克也、松本大洋の本が並んでいる。居酒屋ではロック・パイロットの曲が流れている。「これらを描写したのは、もちろん、日本の偉大な漫画家たちへのオマージュです。気づいていただけたというのはすごく嬉しいです。最も好きなアニメ映画は、高畑勲監督の『おもひでぽろぽろ』です」と監督は嬉しそうに話す。
日本の文化やアニメから非常にたくさんの影響を受けましたとも語る監督は、今回の日本での劇場公開について、「すごく嬉しいです。緊張もしますけど。アニメ大国において、私の作ったアニメ作品が公開されるというのは、幸せでもあり、ちょっと怖い気持ちもあります」と、嬉しさ半分、緊張半分といった様子で話してくれた。
またプロデューサーのオストレロは、幼い頃から山を愛し、山に関する本もたくさん読んでいた中で、「原作漫画の『神々の山嶺』を読み終えた時、すぐにアニメーション化したいという強い気持ちが込み上げました」と明かす。続けて、「周りからは、あの谷口ジローさんの原作をアニメ化するなんて気でも狂ったのではないのか、とまで言われましたが、どうしても実現させたいという気持ちが勝り、自身のキャリア史上最も大事なプロジェクトとして実現しようと決心したのです」と語る。
伝説の登山漫画「神々の山嶺」をアニメーション化に至った経緯は、1通の手紙から始まったという。「アニメーション化を決意した理由や、その経緯、今までアニメーション化が難しいとされてきたが、必ず実現させる決意の固さを、とにかく精魂込めて手紙に記しました。その手紙を読んで、谷口さんがどのような反応をしたのかは分かりませんが、数ヵ月後、承諾していただき、契約に向けて動きましょう、ととても前向きなお返事をいただきました」と、熱い想いを手紙に込めたことを告白した。その想いが谷口ジローに届き、実を結んで、本作が誕生した。
さらに今回、パトリック・インバート監督から日本の観客へのメッセージ動画も到着。
動画の中で監督は「この映画が日本で公開され、日本の皆様に見ていただけることを大変光栄に思います。この作品は原作が日本で生まれ、小説が漫画になり、それがフランスに渡り、フランスでも出版され、そしてフランスで映画化されました。映画はフランスと日本の文化の懸け橋のような作品となっています。私自身日本の芸術や映画からも大変影響を受けており、今回このような形で今まで日本からいただいていた事に対して恩返しが出来るということを大変喜んでおります。この映画が日本の皆様にも気に入っていただけたらこの上ない喜びです」と語っている。
『神々の山嶺』は明日7月8日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開。
神々の山嶺
2022年7月8日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開
STORY
「登山家マロリーがエベレスト初登頂を成し遂げたかもしれない」といういまだ未解決の謎。その謎が解明されれば歴史が変わることになる。カメラマンの深町誠はネパールで、何年も前に消息を絶った孤高のクライマー・羽生丈二が、マロリーの遺品と思われるカメラを手に去っていく姿を目撃。深町は、羽生を見つけ出しマロリーの謎を突き止めようと、羽生の人生の軌跡を追い始める。やがて二人の運命は交差し、不可能とされる冬季エベレスト南西壁無酸素単独登頂に挑むこととなる。
監督: パトリック・インバート
原作:「神々の山嶺」作・夢枕獏 画・谷口ジロー(集英社刊)
日本語吹き替えキャスト:堀内賢雄 大塚明夫 逢坂良太 今井麻美
2021年/94分/フランス、ルクセンブルク/仏語/1.85ビスタ/5.1ch/原題:LE SOMMET DES DIEUX /吹替翻訳:光瀬憲子
配給:ロングライド、東京テアトル
© Le Sommet des Dieux - 2021 / Julianne Films / Folivari / Mélusine Productions / France 3 Cinéma / Aura Cinéma
公式サイト longride.jp/kamigami/
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