HDリマスターで甦るアッバス・キアロスタミ監督の名作『クローズ・アップ』が「the アートシアター」のVol.4作品として、9月3日(土)より渋谷ユーロスペースほか、全国のアートハウスにて公開。このたび、映画作家の小田香が制作を手掛けた予告編が完成した。さらに『ドライブ・マイ・カー』で第94回アカデミー賞国際長編映画賞を受賞した濱口竜介監督からのコメントが到着した。
※2022年8月26日追記/本作の日本公開は延期されました。詳しくはこちら→https://weekend-cinema.com/35712

ヴェルナー・ヘルツォーク監督が、「史上最も素晴らしい映画作りについてのドキュメンタリー」と激賞するなど、世界中のシネアストたちからの絶賛を集めながらも、日本での上映機会が限られていた本作。昨年開催された“連続講座「現代アートハウス入門」ネオクラシックをめぐる七夜 Vol.2”での 1 回限りの上映は即満席となり、スクリーンで観たいとの声が多数上がるなか待望の劇場公開となる。
ある男が映画監督のモフセン・マフマルバフになりすまし、裕福な一家を騙したという詐欺事件を知ったキアロスタミ監督は、すぐに裁判所を訪れ、その公判の模様をカメラに収めることに成功する。さらに、事件に至る過程を当事者たち自身に演じさせて再現することで、事の次第を明らかにしていく。ドキュメンタリーと再現、虚構と現実を精巧に織り上げていった果てに、ついに映画は詐欺容疑で逮捕された青年の心の奥に秘められた真実を探り当てる。めくるめくサスペンスと不意打ちをくらわされたような衝撃的な感動。時代を超えても色褪せない名作が、HD リマスター版でスクリーンに甦る。
このたび解禁となった予告編は、映画作家の小田香(『セノーテ』『鉱 ARAGANE』)が制作を手掛けたもの。予告編制作に際して「素晴らしいショットやイメージというのは、一瞬で時空を超えさせてくれるのだと、しみじみ感じました」とコメントしている。コメント全文は以下にて。
さらに最新作『LOVE LIFE』(9/9公開)が第79回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門に選出された深田晃司監督からのコメントにつづき、『ドライブ・マイ・カー』で第94回アカデミー賞国際長編映画賞を受賞した濱口竜介監督からもコメントが寄せられた。コメントは以下にて。
『クローズ・アップ』は9月3日(土)より3週間限定公開、東京・ユーロスペース、10月より大阪・シネ・ヌーヴォほか全国順次公開。
濱口竜介監督コメント
自分が見たものを信じられずに何度も見てしまう。
イラン社会をすり抜けつつ恩寵のような偶然をすべてものにしてしまう、もはや悪魔的なまでの狡猾さと執念。
なぜこの世にこんな映画が存在するのかまったくわからないが、目の前にある以上は信じざるを得ない。
キアロスタミによる映画の存在証明。
――濱口竜介(映画監督)
小田香コメント
予告篇制作に不慣れで、確認作業をするために、繰り返し同じ場面を見ました。その度に胸を打つショットたち。
主人公の顔つき、花束の鮮やかさ、転がっていく空き缶の音から、ぐんぐんと映画に引き込まれ、はっと編集机に戻ってくる、という時間を過ごしました。
素晴らしいショットやイメージというのは、一瞬で時空を超えさせてくれるのだと、しみじみ感じました。
――小田香(映画作家)
クローズ・アップ
2022年9月3日(土)より3週間限定公開、東京・ユーロスペース、10月より大阪・シネ・ヌーヴォほか全国順次公開
STORY
バスで隣に座った婦人から声をかけられた映画青年サブジアン。持っていた映画の本について尋ねられ、思わず自分は本の著者である映画監督のモフセン・マフマルバフだと名乗ってしまう。すんなりとその嘘を信じた婦人は、家族全員が映画好きだと言って彼を家へ招き入れる。嘘に嘘を重ね、一家を架空の映画製作に巻き込んだサブジアンは、ついには詐欺罪で逮捕されてしまう。そして迎えた判決の時、サブジアンが明かす真実とは…。
監督・脚本・編集:アッバス・キアロスタミ 撮影:アリ=レザ・ザリンダスト
出演:ホセイン・サブジアン、ハッサン・ファラーズマンド、アボルファズル・アーハンハー、メフルダード・アーハンハー、モフセン・マフマルバフ
1990 年|98 分|イラン|英題:CLOSE-UP
配給:ノーム/東風
© 1990 Farabi Cinema