チャイ売りから映画監督を目指した少年の驚くべき“実話”から生まれた感動作『エンドロールのつづき』が2023年1月20日(金)新宿ピカデリー他全国公開。このたび、主人公の少年が初めて映画に出会う瞬間を切り取った本編映像が解禁され、本作に登場する映画などについてアジア映画研究者・松岡環が解説を行った。
チャイ売りの少年が映画と出会い、やがて世界で活躍する映画監督になる―。監督自身の驚くべき物語を映画化した本作は、トライベッカ映画祭ほか、世界中の映画祭で5つの観客賞を受賞し、さらにバリャドリード国際映画祭では最高賞にあたるゴールデンスパイク賞をインド映画として初めて受賞。そして世界中の映画祭から喝采を浴び、日本でも大きな話題となった『RRR』などの話題作を抑え、第95回アカデミー賞インド代表(国際長編映画賞)に決定。さらにロスで行われた「アジア・ワールド・フィルム・フェスティバル2022」でも最優秀作品賞を受賞するなど、快進撃が続いている。大きな夢を抱く主人公、チャイ売りの少年サマイ役には3,000人の中から選ばれた新たな才能、バヴィン・ラバリが抜擢されている。
このたび解禁された本編映像では、インドのグジャラート州の小さな村チャララに住む主人公サマイが父親に「これが最後だ。カーリー女神様の映画だから」と映画館に連れて行かれるシーンから始まる。
厳格なバラモン階級の父は映画を低劣なものだと考えているが、信仰しているカーリー女神の映画は特別だという。人で溢れかえった街の映画館“ギャラクシー座”でなんとかチケットを手に入れて席に着くと、目に飛び込んだのは後方からスクリーンへと伸びる一筋の光…そこにはサマイが初めて見る世界が広がっていたのだった。
アジア映画研究者の松岡環が、本作で上映されている作品、そしてボリウッドについて説明する。グジャラートのカティヤワル半島の小さな村、チャララに住むサマイ一家が「これが最後」と観に行った映画とは「映画館の看板では『Jai Mahalali(カーリー万歳)』となっているが、映像は『Karishma Kali Ka(カーリーの奇蹟)』という1990年の映画から取ったソング&ダンスシーン」と解説する。
満席となったギャラクシー座に広がる大きなスクリーン、そこで繰り広げられる映画のシーンを映す映写機の光にサマイは魅了され、夢中になっていく。「サマイが夢中になったのは、ローカルなグジャラート語映画ではなく、毎年300本位前後を製作するヒンディー語映画。有名スターが出演し、多額の製作費を使って作られる豪華なヒンディー語映画は、製作中心地ムンバイの旧名『ボンベイ』+『ハリウッド』で『ボリウッド』映画と呼ばれているもの」と、インド映画の代名詞ともなっている“ボリウッド“について説明。
また、上映前に父親がサマイに、「3時半、6時半、9時半の3回上映だ」と説明しているシーンについては「シネコン(シネマコンプレックス。インドではマルチプレックスと呼ぶ)が出現するまでのインドの映画興行は、一本の映画が間に休憩をいれた3時間枠に設定されていた」と、映画に描かれたのは、過去の上映スタイルだとレクチャー。
また、劇中で上映されているボリウッド映画について、松岡は「サマイが劇場で見る映画は、アクシャイ・クマール主演作『Zulmi(悪人)』(1999)などだが、本作中で一番多く引用されているのが、時代劇『Jodhaa Akbar(ジョーダーとアクバル)』(2008)である。そのほか、1970年代半ばからボリウッドの人気男優となり、今も別格的スターとして活躍するアミターブ・バッチャンの主演作『Khuda Gawah(神に誓って)』(1992)や、『Aks(影)』(2001)もちらりと引用されている」とインド映画ファンにはたまらない情報も明かした。
なお、盛栄を極めたボリウッド映画に心酔するサマイが「映画を作りたい」と、夢を見つけた瞬間を捉えた本作は、「日本で初めて一般公開されるグジャラート語映画」であるという。
パン・ナリン監督の映画への愛と夢が詰まった『エンドロールのつづき』は2023年1月20日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネリーブル池袋 他全国公開。
エンドロールのつづき
2023年1月20日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネリーブル池袋 他全国公開
STORY
9歳のサマイはインドの田舎町で、学校に通いながら父のチャイ店を手伝っている。厳格な父は映画を低劣なものだと思っているが、信仰するカーリー女神の映画は特別と、家族で街に映画を観に行くことに。人で溢れ返った映画館、席に着くと、目に飛び込んだのは後方からスクリーンへと伸びる一筋の光…そこにはサマイが初めて見る世界が広がっていた。映画にすっかり魅了されたサマイは、再び映画館に忍び込むが、チケット代が払えずつまみ出されてしまう。それを見た映写技師のファザルがある提案をする。料理上手なサマイの母が作る弁当と引換えに、映写室から映画をみせてくれるというのだ。サマイは映写窓から観る色とりどりの映画の数々に圧倒され、いつしか「映画を作りたい」という夢を抱きはじめるが―。
監督・脚本:パン・ナリン 出演:バヴィン・ラバリ
2021 年/インド・フランス/グジャラート語/112 分/スコープ/カラー/5.1ch/英題:Last Film Show/日本語字幕:福永詩乃 G 応援:インド大使館 配給:松竹
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