中央アジアが生んだ早世の天才バフティヤル・フドイナザーロフ監督。今世界が再注目する、そのやさしさとユーモアにあふれたファンタジックな作品を特集上映する『再発見!フドイナザーロフ ゆかいで切ない夢の旅』が6月3日(土)よりユーロスペースほか全国順次開催されることが決定した。
日常の小さな冒険やちょっとした驚きをユーモアですくいとり、中央アジアのおおらかな大地にファンタジックな世界を生みだしたバフティヤル・フドイナザーロフ監督。
1991年、ソビエト連邦の解体により母国タジキスタンが独立したその年に、26歳の若さで軽やかにデビュー。のちに勃発した内戦中も映画を撮り続け、6本の長編映画を遺し49歳の若さで急逝した。
フドイナザーロフ作品の人々は、たとえ内戦下にあっても笑い、怒り、恋をし、そして旅に出る。ひたむきで逞しい彼らがおりなす、ゆかいで切ない夢のような物語は、普遍的なきらめきを放ち世界中のファンに愛された。
2015年の急逝以来、久しくその名を聞く機会がなかったが、2022年ヴェネチア国際映画祭で『少年、機関車に乗る』レストア版がプレミア上映されたのを機に、欧州有数の映画会社が世界配給権を獲得。世界的にフドイナザーロフの再評価が始まった。
中央アジア・タジキスタンが生んだ早世の天才フドイナザーロフ作品群が世界に先駆け一挙公開。“機関車映画の金字塔”と言われる『少年、機関車に乗る』を含む珠玉の4作品がスクリーンに蘇る。各上映作品の概要は以下の通り。
『少年、機関車に乗る』2Kレストア版
監督:バフティヤル・フドイナザーロフ/出演:チムール・トゥルスーノフ、フィルズ・サブザリエフ
1991年/タジキスタン・旧ソ連合作/98分/モノクロ/1:1.33/モノラル
1991年マンハイム国際映画祭グランプリ、カトリック批評家賞、FIPRESCI賞
1992年トリノ国際映画祭グランプリ
2022年ヴェネツィア国際映画祭ヴェネツィア・クラシックス正式出品 他
数々の国際映画祭でグランプリを受賞したフドイナザーロフ監督26歳のデビュー作。17歳のファルーと7歳のアザマット兄弟は、遠い街で暮らす父に会うために機関車に乗って旅に出る。駅でもないのに運転士の家で止まったかと思えば、トラックとの競争が始まったり、悪ガキが石を投げつけてきたり。列車の旅は予期せぬ出来事の連続だ。機関車は大平原をガタゴトと走り、彼らを父のもとへと運んでいくが…。セピア色の画面にユーモラスな詩情があふれるレール・ロードムーヴィー。
『コシュ・バ・コシュ 恋はロープウェイに乗って』4Kレストア版
監督:バフティヤル・フドイナザーロフ/出演:パウリ―ナ・ガルヴェス、ダレル・マジダフ
1993年/タジキスタン/96分/カラー/1:1.66/モノラル
1993年ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞監督賞
内戦下のタジキスタン、ドゥシャンベでロープウェイの操縦士をするダレルは、父親に賭博のかたにされたモスクワ帰りの都会的な娘ミラに一目ぼれ。恋のかけひきも知らないダレルはひたすらにミラを追いかける。銃声が轟く戦時下にあっても変わらない人々の日々の営みを交えながら、ロープウェイのように行きつ戻りつする二人の恋を、みずみずしく描いたラブ・ストーリー。本作の撮影中に内戦が勃発し、銃撃戦の様子などがすぐさま脚本に取り入れられた。
『ルナ・パパ』4Kレストア版
監督:バフティヤル・フドイナザーロフ/出演:チュルパン・ハマートヴァ、モーリッツ・ブライプトロイ、アト・ムハメドシャノフ
1999年/ドイツ・オーストリア・日本合作/110分/カラー/1:1.66/ドルビーSRD
1999年ヴェネツィア国際映画祭正式出品
1999年東京国際映画祭最優秀芸術貢献賞
1999年ナント三大陸映画祭グランプリ、観客賞
マムラカットは女優を夢見る17歳の少女。ある月の晩、暗闇から声をかけてきた男の子どもを宿してしまうが、男は忽然と姿を消す。古いしきたりの村で周囲から冷たい仕打ちを受けるなか、マムラカットは父と兄とともに男を探す旅に出る。シャガールの絵画のように美しい村を舞台に、未来を切り開こうとする少女がくり広げる荒唐無稽な極上のファンタジー。マムラカットは「国家」「大地」を意味する言葉。
『海を待ちながら』
監督:バフティヤル・フドイナザーロフ
脚本:セルゲイ・アシケナージ
出演:エゴール・ベロエフ、アナスタシア・ミクリチナ、デトレフ・ブック
2012年/ロシア、ベルギー、フランス、カザフスタン、ドイツ、タジキスタン/110分/カラー/1:1.85/ドルビー5.1
フドイナザーロフ最後の作品。船長マラットはアラル海を航海中に大嵐に遭遇し、妻や仲間を失った。心に傷を負った彼はある決意を胸に、今では干上がってしまった海に戻り、荒野に佇む自分の船と対面する。そして船を引きずって水のない海を横断する無謀な旅に出る。贖罪を求め彷徨うマラットはどこに行き着くのか。半世紀で10分の1にまで干上がった、カザフスタンとウズベキスタンにまたがる大湖・アラル海を舞台に、監督の中央アジア人としての思いが投影された壮大な夢の物語。
バフティヤル・フドイナザーロフ
Bakhtiyar Khudoinazarov
1965年6月29日タジキスタン共和国ドゥシャンベ生まれ。20歳でモスクワの全ロシア国立映画学校の監督科に入学。卒業後ドゥシャンベに戻り26歳の時に撮った初長編作品『少年、機関車に乗る』がトリノ国際映画祭、マンハイム国際映画祭、ナント国際映画祭でグランプリを受賞、またベルリン国際映画祭や香港国際映画祭へも出品され世界の映画シーンに軽やかにデビューした。93 年の『コシュ・バ・コシュ 恋はロープウェイに乗って』では見事ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞を受賞。続く99年の『ルナ・パパ』もヴェネツィア国際映画祭に出品され、東京国際映画祭優秀芸術貢献賞を受賞した。2002年の『スーツ』(劇場未公開)では東京国際映画祭審査員特別賞、優秀芸術貢献賞をダブル受賞。2015年4月21日、滞在先のベルリンで死去。享年49歳。
再発見!フドイナザーロフ ゆかいで切ない夢の旅
2023年6月3日(土)よりユーロスペースほか全国順次開催
プログラム:世界的に再評価中央アジアの巨匠バフティヤル・フドイナザーロフ監督の珠玉の4作品を一挙公開。
上映作品:『少年、機関車に乗る』(1991)2Kレストア版
『コシュ・バ・コシュ 恋はロープウェイに乗って』(1993)4Kレストア版
『ルナ・パパ』(1999)4Kレストア版
『海を待ちながら』(2012)
料金:一般1600円/大学・専門学校・シニア1200円
※リピーター特典あり。詳細は後日発表。
主催・配給:ユーロスペース、トレノバ 宣伝:大福
公式サイト www.khudojnazarov.com
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