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ロウ・イエ監督最新作『サタデー・フィクション』(現在公開中)の公開を記念し、12月8日(金)にトークイベントが開催され、映画監督・枝優花と枝監督作品にも出演したことのある俳優・根矢涼香が登壇した。

「私はモノクロの映像を撮ったことがないので、少し勇気がいるという印象があります」

中国に生きる若者の心情を瑞々しく、過激に描き続けてきた映画監督ロウ・イエ最新作は、中国、太平洋戦争が勃発する直前の魔都、上海が舞台。世界各国の諜報員が暗躍していた時代を舞台に、人気女優とスパイの二つの顔を持つ主人公を中心に据え、当時上海の中心とされていた現存する劇場「蘭心大劇場」で巻き起こる愛と謀略の物語を美しいモノクロ映像で描き出す。

諜報員という裏の顔をもつミステリアスな人気女優の主人公ユー・ジン役には、ディズニー・アニメーション『ムーラン』の実写版などハリウッドでも活躍する、中国を代表する女優のコン・リー。日本軍の暗号通信の専門家・古谷三郎に扮するのは、中国でも高い人気を誇るオダギリジョー。さらに、オダギリ演じる古谷の護衛・梶原には話題作への出演が続く中島歩。その他、トム・ヴラシア、パスカル・グレゴリー、マーク・チャオら国際色豊かなインターナショナルキャストが名を連ねる。

このたび開催されたトークイベントには、ロウ・イエ監督のファンという映画監督・枝優花と俳優・根矢涼香が登壇。映画を観た感想やキャストたちの魅力について語りあった。

Q『サタデー・フィクション』を観た感想

枝優花
「今までの作品の中では一番観やすかったという印象でした。複雑に時系列が前後することもなく。あとは日本人のキャストが出ているところから観やすくなりましたね」

根矢涼香
「私は『サタデー・フィクション』の実際の時代背景や歴史に詳しくなく、映画を観る前にちょっとおさらいしながら日本が真珠湾に奇襲攻撃を仕掛ける七日前に遡っているのだなとか、その当時の上海のことをこの映画をきっかけに学んだので、ちゃんと理解できるだろうかと思いながら観ていたんですけど、最終的にすごく楽しめました」

Q『サタデー・フィクション』のモノクロ映像から受ける映画の印象

枝優花
「私はモノクロの映像を撮ったことがないので、少し勇気がいるという印象があります。色でデザインすることができないので、映画で一番大事な照明の光が当たる部分、当たらない部分の陰影のところで勝負しなければならない。その分力量が出てしまうので、演出がごまかせないなと。でもロウ・イエ監督の作品の中でよくある、明かりがバッと消えて、ついた時に出来事や状況が変わっている場面とか、そういう演出が銃撃戦の時だったと思うんですが、モノクロでそこがはっきりと見えて、面白かったなと思いました。自分ではなかなか挑戦できないんですけど」

根矢涼香
「私がモノクロで写真を撮る時は、嘘を上手につきたい時です。例えばSFみたいな。色で撮るよりも、モノクロにすることによって一枚絵になるというか。見慣れてるものを少しフェイクにしやすいなっていうのをモノクロフィルムを使っているうちに感じて、今回の作品も劇と現実が行ったり来たりするじゃないですか。どっちがほんとなんだろうって思いながら序盤は振り回されてたんですけど、それも最終的に白黒であることによって街で起こることすべてが1つの劇であるような」

Q『サタデー・フィクション』の日本人キャスト二人、オダギリジョーさんと中島歩さんの魅力

枝優花
「まったく日本人キャストの前情報なしに映画を観たのですが、私にとっては中島歩さんがとても魅力的でした。日本人ではない監督が日本人を演出した時って、どこか不思議な感じになったりするし、そこが面白いのですが、いい意味で中島さんのサイボーグ感というか、人ではない感じが割とマッチしていてとても良かったです」

根矢涼香
「お二方ともよく知っている俳優がロウ・イエ監督の作品で、日本人の俳優として外に出ていくことも素晴らしいことで、普通に嬉しく感じたっていうのが正直な感想です。オダギリさん演じる古谷三郎の人間的な弱さがすごく目に出てて、あの役にとてもはまっていたというか、人に弱みを見せてしまったから、裏切る行為に繋がってしまったけれど、でも弱みを見せたから、あのコン・リー演じるユー・ジンが嘘を重ねてくれたっていう」

Q最後に、今日観に来た皆さんに一言ずつメッセージをお願いします。

枝優花
「今日足を運ん下さっている方もロウ・イエ監督の過去作も観て下さっていると思うので、わざわざ観て下さいとまでは言わなくてもいいのかなと思いますが、新作を観てからまたロウ・イエ監督の初期作を観ると、最初から監督が好きなこだわりはこれなんだなとか、私は映画をロウ・イエ監督作品を観てから好きになったので、配信などで追っかけて観ていくと楽しいのではないかと思います」

根矢涼香
「ロウ・イエ監督の役者や劇を作る人たちへのリスペクトを感じられましたし、そういう意味でもすごく今までの作品の中ではなんだか特別なものを感じました。エンターテイメントだなとも思いました。音楽で最後、踊って終わるところとかも見事だなって。今後もロウ・イエ監督に注目していきたいです」

登壇者プロフィール

枝優花(映画監督・写真家)プロフィール
1994年生まれ。群馬県出身。
2017年初長編作品『少女邂逅』がロングランヒットを記録。
MOOSIC LAB 2017では観客賞を受賞、海外映画祭でも評価される。
短編映画「豚知気人生」や、TV「クールドジ男子」「こむぎの満腹記」、
MV「久遠」(Sano Ibuki ドラマ「ワンルームエンジェル」EDテーマ)などの演出のほか、写真家としても活動している。最新監督作は、ドラマ「ワンルームエンジェル」(全話演出担当)。

根矢涼香(俳優・写真家)プロフィール
『カメラ、はじめてもいいですか?』にて八重樫ナギ役。
俳優業の傍ら、文筆、イラストレーター、写真家としてもマルチに活動をする。
ロマンポルノ映画『愛してる!』ではフェイクドキュメンタリーの監督役として演じながら撮影の役割も担った。コロナ禍では、地元の映画館・あまや座へのチャリティーTシャツのデザインを手掛ける。
主な出演作に『凪の憂鬱』『根矢涼香、映画監督になる。』『ウルフなシッシー』『少女邂逅』などがある。

作品情報

サタデー・フィクション
2023年11月3日(金・祝)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、シネリーブル池袋、アップリンク吉祥寺にて全国順次ロードショー

STORY
日本が真珠湾攻撃をする7日前の1941年12月1日、魔都と呼ばれる上海に、人気女優のユー・ジン(コン・リー)が現れる。新作の舞台「サタデー・フィクション」で主役を演じるためだ。一方、この大女優ユー・ジンには、幼い頃、フランスの諜報部員ヒューバート(パスカル・グレゴリー)に孤児院から救われ、諜報部員として訓練を受けた過去があり、銃器の扱いに長けた「女スパイ」という裏の顔があった。日本軍の占領を免れた上海の英仏租界は、当時「孤島」と呼ばれていた。その魔都上海では、日中欧の諜報部員が暗躍し、機密情報の行き交う緊迫したスパイ合戦が繰り広げられていた。そして2日後の12月3日、日本から海軍少佐の古谷三郎(オダギリジョー)が海軍特務機関に属する梶原(中島歩)と共に、暗号更新のため上海にやってくる。ヒューバートはユー・ジンに告げる。「古谷の日本で亡くなった妻は君にそっくりだ」と。それは、古谷から太平洋戦争開戦の奇襲情報を得るためにフランス諜報部員が仕掛けたマジックミラー作戦の始まりだった……。

監督:ロウ・イエ
出演:コン・リー、マーク・チャオ、パスカル・グレゴリー、トム・ヴラシア、ホァン・シャリー、中島歩、ワン・チュアンジュン、チャン、ソンウェン/オダギリジョー
2019年/中国/中国語・英語・フランス語・日本語/126分/モノクロ/5.1ch/1:1.85/日本語字幕:樋口裕子

原題:蘭心大劇院/英題:SATURDAY FICTION/配給・宣伝:アップリンク

©YINGFILMS

公式サイト https://www.uplink.co.jp/saturdayfiction

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