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1986年にチェルノブイリ原子力発電所で起きた爆発事故を題材にした『チェルノブイリ1986』が現在大ヒット公開中。このたび監督・主演を兼任したダニーラ・コズロフスキーのインタビューが到着した。

「事件の責任が誰にあるのかという問題にはこだわらないようにしました」

チェルノブイリ原子力発電所爆発事故という未曾有の危機に命を懸けて立ち向かった消防士の物語『チェルノブイリ1986』は5月6日より日本公開され、初日から幅広い客層が来場。SNSでは「ここまでひどい事故だと映画を観て初めて知った」「このような事故が本当にあったんだと恐怖を感じた」など、その当時をあまり知らなかった若い世代からの反響も多く広がり、「このような時期なので観るか迷ったけど、今だからこそいろいろな感情が渦巻いた」など今の情勢を踏まえて考えさせられるといった感想も上がっている。

このたび取材に応じた監督・主演のダニーラ・コズロフスキーが本作を手掛けた理由や一番こだわった点などについて明かした。また日本に向けてのメッセージも送っている。

——本作の監督の話が来た時、チェルノブイリという題材を扱うことをどう思いましたか? また、自国の過ちを描くにあたり、難しかった点、気を付けた点はありますか? 周りの反応はいかがでしたか?

「自分がチェルノブイリに関するプロジェクトに関わるなんて、考えたこともありませんでした。しかしある日、プロデューサーのアレクサンダー・ロドニャンスキーが送って来た台本を読むと、とても気になるシーンがありました。そのシーンが私の心の目に飛び込んできたんです。それから徐々に私はプロジェクトにのめりこんでいきました。

私は、ノーベル文学賞を受賞したスヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチの著書「チェルノブイリの祈り――未来の物語」を読みました。またリクビダートル(チェルノブイリ原子力発電所事故の処理作業に従事した人々)についての多くのドキュメンタリーや彼らのインタビューを見ました。彼らの顔を見、話を聞くことで、彼らは英雄として称えられねばならないと何度も確信しました。このテーマは魅力的かつ非常にインパクトがあり重要なため、私は絶対にこの映画を作らねばならないと感じました。この物語は私にとってパーソナルなものとなり、登場人物に内面的な類似点や繋がりが幾つかあります。

このテーマは非常にデリケートなアプローチが求められます。誰かを傷つけないこと、偏った見方をされないこと、事実と虚構の適切なバランスを保ちながら、誠実さとクリエイティブなアプローチでは妥協しないようにすることが重要でした。

本作品に対する反応はとてもエモーショナルなものでした。ある上映会で、我々がステージを後にしようとすると、人々は席から立ち上がり拍手を送ってくれました。『チェルノブイリ 1986』で特別なものが見られると期待していなかったと私に告白してきた人たちもいました。彼らは自分の予想が間違っていたと言い、私が気恥ずかしくなるほど称賛してくれました。リクビダートルの方々にこの作品を見てもらう時、私はもちろん緊張しましたが、彼らからポジティブな反応を得られとてもうれしかったです」

——本作では主演も務めていますが、監督&主演ということで、撮影中大変だったことはありますか? またなぜ、監督をしつつ主演という大役を担おうと思ったのでしょうか? 経緯を教えてください。

「この二つの役割にあまり関係性は無いと思っています。演技は監督としての私の仕事の一部です。脚本、キャスト、ロケ地、配色、演出、舞台装置、スタッフの選定など、全てを決めるのが、私にとっては監督の仕事です。どんなレンズやフィルターを使うのかを決めるのも、主役を演じるのと同じように私の仕事の一部なのです。

自分のプロとしてのスキルや役柄のレパートリーを増やしたいという自然な欲求から、この作品に出演することを決めました。役者として雇われた自分の役割だけでなく、物語全体を最初から創り上げていくことに、私は常々面白さを感じていました。そして今、私にはそうできるだけの能力があると思っています」

——撮影の準備としてチェルノブイリ原子力発電所には行きましたか? また、実際に事故を身近に体験した方に会われたのですか?

「現地への立ち入りは許可されませんでした。いずれにせよチェルノブイリ原子力発電所周辺の地域は植物が生い茂る無人の立入禁止区域になっています。レニングラード原発やクルスク原発などの別の原子力発電所や、それらの衛星都市である美しいクルチャトフなどを訪れ、のちに映画を撮影して住民の皆さんから多くのご支援を頂きました。チェルノブイリを訪問することは、我々にとってあまり意味のあることではありませんでした。

チェルノブイリのリクビダートル、消防士、衛生兵、放射線技師、技術者などに会い、可能な限り全員にインタビューしました。そのためプリプロダクションは 1 年半に及びました」

——本作の演出、または演技において一番こだわった部分はなんですか?

「監督として、私は自分が下す芸術的な決断に全責任を持っています。撮影現場に入る前、最初のコンセプトからすべてのプロセスが始まります。ストーリーを考え、本を読み、リサーチし、どんな音楽が合うか、どんな俳優が役にふさわしいか、ロケーションはどうかなど、想像力を働かせて映画をつくり、映像化するのです。俳優として訓練を積んだ者として、主役に挑戦せずにはいられないのです。役柄に入り込み、準備し、リハーサルをし、チームと話し合いながら進めていきます。撮影が始まる頃には、すでに自分のキャラクター・アークが出来上がっており、撮影現場では、プリプロダクションで思い描いたことを実行することにのみ集中します。しかし、監督というのは、チームなしには成り立ちません。

私はいつも、スタッフ全員に敬意と愛と感謝をもって接しています。彼らは、私を無条件に信頼し、私だけが本当に知っていて、完全に理解しているプロジェクトに向けて私が設定した目標とタスクを達成するために、私についてきてくれる人たちです。この素晴らしい信頼関係は、私にとってとても貴重なものです」

——世界中の人々にこの映画をどのように感じてもらいたいですか?

「映画の壮大なスケールや唯一無二の水中シーンだけでなく、この出来事が普通の人々の人生をどのようにひっくり返し、彼らの未来を書き換え、そして彼らがどのように英雄になったかというヒューマンストーリーに感情移入して見て頂きたいです」

——チェルノブイリ以降で大きな原発事故を起こした日本で本作が公開されますが、日本の観客にメッセージをお願いします。

「この作品を作るにあたり、私たちはできるだけ正直になるように心がけ、事件の責任が誰にあるのかという問題にはこだわらないようにしました。人間に焦点を当て、この恐ろしい悲劇がいかにして彼らの人生をひっくり返したかということ、そして彼らの自己を犠牲にした驚くべき英雄的行為に焦点を当てたのです。私たちの物語はとてもエモーショナルで、そこには大きな愛があります。将来、このような人生を変える大惨事が防げるようになることが私の願いです。皆さんと同じように強く願っています」

『チェルノブイリ1986』は現在大ヒット上映中。

作品情報

チェルノブイリ1986
2022年5月6日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー

製作・監督・主演:ダニーラ・コズロフスキー『ハードコア』
製作:アレクサンドル・ロドニャンスキー『殺人狂騒曲 第9の生贄』
出演:オクサナ・アキンシナ『ミッション・イン・モスクワ』、フィリップ・アヴデエフ『LETO-レト-』
原題:Chernobyl 1986
2020 年/ロシア/ロシア語/135 分/シネスコ/5.1ch
字幕翻訳:平井かおり/字幕監修:市谷恵子/配給:ツイン G

©«Non-stop Production» LLC, ©«Central Partnership» LLC, ©«GPM KIT» LLC, 2020. All Rights Reserved.

公式サイト chernobyl1986-movie.com

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