美術館やギャラリーに向かう足取りも軽くなる、心躍る春が到来。この春から夏にかけては、映画館でも芸術家たちの人生や芸術に触れることができる。“南米のピカソ”と呼ばれる巨匠の人生に迫るドキュメンタリー映画『フェルナンド・ボテロ 豊満な人生』をはじめ、注目の新作美術映画を3本紹介!
『フェルナンド・ボテロ 豊満な人生』 4月29日(金・祝)公開
独自の画風を確立したコロンビアの巨匠、フェルナンド・ボテロの波乱万丈な人生と、多幸感あふれる創作の秘密に迫るドキュメンタリー映画。
人間も静物もなぜだかみんなふっくら、ぷっくりと膨らみ、素朴でユーモアあふれる作風が愛される、世界で最も有名な存命の芸術家、フェルナンド・ボテロ。その作品はどこかで目にしている方も多いのでは?
本作では、幼い頃に父を失った貧しい少年が、闘牛士学校に通いながらスケッチ画を描いていた原点から、対象物をぽってりと誇張する“ボテリズム”に目覚め、『モナ・リザ、12歳』のMoMA展示で一躍注目を浴びアート界の頂点へとたどり着いた軌跡を追いかけていく。
一方でコロンビア出身という出自で差別され、ポップアートや抽象表現主義全盛期に具象画を描く頑なさを批判されたことも。愛息の死、自身の利き手の一部を失う悲劇など、精神的にも肉体的にも作家生命が危ぶまれた衝撃の過去が明かされる――。
なぜ、すべてをふくよかにするのか? そこに込めた意味とは? 唯一無二の独創性を貫く信念について、作家本人が語り切る貴重な作品だ。
フェルナンド・ボテロ 豊満な人生
2022年4月29日(金)より、Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー
監督:ドン・ミラー |2018 年|カナダ|英語・スペイン語|ビスタ|デジタル5.1|82分|原題:BOTERO
提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム
© 2018 by Botero the Legacy Inc. All Rights Reserved
公式サイト botero-movie.com
『見えるもの、その先に ヒルマ・アフ・クリントの世界』 4月9日(土)公開
抽象的絵画の先駆者でありながら、長らくその存在を知られず、近年認知され、評価を急速に高めているスウェーデンの女性画家ヒルマ・アフ・クリント(1862~1944)。その謎めいた生涯に迫るドキュメンタリー映画。
世界中の人々の心を鷲掴みにする彼女の絵は、なぜ20年を経ても世に出なかったのか。そして、自分で道をつくり、その道を歩んだ彼女が、目に見えるものを超えて見つめていた世界とは。キュレーター、美術史家、科学史家、遺族などの証言と、彼女が残した絵と言葉から解き明かしていく。
2019年、ニューヨークのグッゲンハイム美術館で開催された彼女の回顧展は同館史上最高の動員を記録し、巨匠ラッセ・ハルストレムが最新作『Hilma』で彼女の生涯を描くなど、今や欧米で大きな注目を集める存在。彼女を「拒絶」してきた美術史の裏側にも迫る必見作だ。
見えるもの、その先に ヒルマ・アフ・クリントの世界
2022年4月9日(土)より、ユーロスペースほか全国順次ロードショー
監督:ハリナ・ディルシュカ 出演:イーリス・ミュラー=ヴェスターマン、ユリア・フォス、ジョシュア・マケルヘニー、ヨハン・アフ・クリント、エルンスト・ペーター・フィッシャー、アンナ・マリア・ベルニッツ
2019/ドイツ/94 分/英語、ドイツ語、スウェーデン語/英題:Beyond the Visible – Hilma af Klint
配給:トレノバ 後援:スウェーデン大使館
『魂のまなざし』(夏公開)
モダニズムを代表する画家のひとりとして、近年世界的に注目を浴びるフィンランドの国民的画家ヘレン・シャルフベック。その生誕160年を記念した作品。彼女の画業と人生を決定づけた1915年から1923年の時代にスポットを当て、彼女の終生の愛と友情を描く。
1915年、ヘレン・シャルフベックは、高齢の母親とともに田舎で暮らす、いわば忘れられた画家だった。彼女の運命を変えたのは、ある画商が訪ねてきて彼女が描き溜めていた 159 点のすばらしい作品を発見してから。しかし、ヘレンの人生で最も重要な転機は、画商が紹介した 15 歳年下の青年エイナル・ロイターとの出会いによってもたらされる…。
どん底にあってもやがて立ち上がって背筋を伸ばし歩んでいく。その凛としたシャルフベックの姿が、北欧の透明な光に輝く自然や街並みとともに全編美しい映像で描かれていく。ティーザービジュアルは、シャルフベックが描いた代表的な自画像「黒い背景の自画像」を模したもの。シャルフベックを演じた主演女優ラウラ・ビルンの姿に置き換えて描き下ろされた、映画のためのオリジナル作品だ。
魂のまなざし
2022 年夏 Bunkamura ル・シネマ他にて公開
監督:アンティ・ヨキネン/出演:ラウラ・ビルン ヨハンネス・ホロパイネン クリスタ・コソネン エーロ・アホ ピルッコ・サイシオ ヤルッコ・ラフティ/字幕:林かんな/原題:HELENE/2020 年/フィンランド・エストニア/122 分
配給:オンリー・ハーツ
©Finland Cinematic
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