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巨匠ロマン・ポランスキー監督最新作『オフィサー・アンド・スパイ』(6月3日公開)は100年以上前の衣装を見事に再現し、第45回セザール賞で衣装デザイン賞受賞するなど“再現度が高すぎる軍服”が話題に。このたび、“軍装史研究の第一人者”辻元よしふみが本作の「軍服の見どころ」について語った。

「この映画、ほんのワンシーンでも手を抜きません」

19世紀末のフランスで起きた史上最大の冤罪事件「ドレフュス事件」を映画化した本作。日本の大学入試にも出るほど世界史の中でも重要な事件を扱っているが、それゆえにスリルあふれる物語を支える上で重要なのが歴史の再現度。特に軍服は、階級章や徽章など時代によって変化が目まぐるしく、さらに実話ともなると、その人物が当時どのような階級でどの組織に所属していたかなど、徹底した時代考証と、緻密な再現が要求されるが、本作ではそんな100年以上前の衣装が見事に再現されている。

19世紀末当時のフランス軍の制服は、日本でも大ヒット漫画「ゴールデンカムイ」で描かれる明治期の日本軍の制服などにも大きな影響を与えている。そんな本作の“再現度の高すぎる”軍服について、陸上自衛隊の軍装史学の部外講師も務める軍装史研究の第一人者・辻元よしふみが解説する。

冒頭シーンについて

まずは、冒頭のシーン。当時、立ったばかりのエッフェル塔の下、フランス陸軍士官学校の庭を埋め尽くす軍人たち。そして、有名な官職剥奪式。ドレフュス は軍服から階級線をはぎ取られ、軍刀もへし折られます。フランス軍の場合、階級線が袖、ズボンの側章、帽子にも付いており、これをわざわざ全部、剥ぎ取るという、まさに実に執拗な「いじめ」。砲兵出身のドレフュスは肋骨服(ろっこつふく)という、身体に平行にヒモ飾りがたくさん付いた軍服を着ていますが、このボタンには、精鋭部隊を示す擲弾(てきだん)の紋章が刻印されています。執行官は、これを一つずつ、むしり取っていきます。ボタンすら、着用を許さない、ここまで不名誉な形式にこだわった軍部の執念が際立つ場面です。

当時のフランス軍のルール

主人公のピカール少佐は、参謀本部第二局(情報局)統計部(諜報部門)の部長に異例の抜擢を受け、中佐に昇進します。袖の階級線が、すぐに金線と銀線が交互に並ぶ中佐のものに変わるのが分かります。参謀本部員は飾緒を右肩に付ける、というのはこの時期のフランス軍のルールです。さらに両肩には略式肩章を付けていて、これが常装にあたります。パーティーのシーンでモール飾りの下がった大きな正肩章を付けているシーンもありますが、これは礼装に当たります。中佐用は、本体の中心部が銀色、その他が金色ですが、この映画、ほんのワンシーンでも手を抜きません。

ラインや装飾の数

劇中、野外で75ミリ速射砲の威力を軍人たちが見学するシーンがあります。赤ズボンに黒い肋骨服(ろっこつふく)というのが、当時の略装、野戦装にあたります。特に将官クラスは、階級に応じた数の肋骨装飾を付け、赤いケピ帽にも派手な金色の刺繍で階級に応じた装飾を入れます。同じ将官でも、旅団将軍(少将)なのか師団将軍(中将)なのか、はたまた大将相当の軍司令官なのかで、これまたラインや装飾の数が異なります。実にフランス軍の制度は複雑ですが、さすがにこの映画はきっちり、再現しています。

孤立する立場を視覚的に表現

最後に、ドレフュスの無罪を確信したピカールは、醜聞を恐れる上層部に睨まれ、左遷されます。この左遷された先が、アルジェリアの第4連隊。植民地連隊です。ここでしばらく連隊長を務め、熱帯地用の水色の軍服に着替えます。ここからはずっと、彼だけが植民地の軍服を着ており、孤立する立場を視覚的にもよく示しているように思われます。

以上、4つの解説ポイントから、登場人物たちが組織の中でどのような立場でどのような振る舞いを要求されたかが分かり、物語の理解度がより深まるはず。しかし、これらはほんの一部。「レジョン・ドヌール勲章一つとっても、等級によって右胸に付けるか、左胸に付けるか、などと相違します。こういった細かい点も、その登場人物がその年に、どの等級を受けていたか、調べないといけないわけで、考証は大変だったと思います。一度拝見しただけでも、けっこういろいろ気が付きます。これは繰り返し見ると、さらなる発見ができそうな映画」と辻元は語る。更に深掘りしたい人は、辻元のホームページ(http://tujimoto.jp/)をチェック!

映画ファンのみならず、歴史好き、フランス好き、更に服飾や、制服が好きな方必見の『オフィサー・アンド・スパイ』いよいよ6月3日(金)より公開。

【辻元 よしふみ (ツジモト ヨシフミ)プロフィール】

1967年岐阜市生まれ。服飾史・軍装史研究家。陸上自衛隊需品学校部外講師。辻元玲子との共著に『図説 戦争と軍服の歴史』『軍装・服飾史カラー図鑑』など多数、共訳書に『華麗なるナポレオン軍の軍服』などがある。

作品情報

オフィサー・アンド・スパイ
2022年6月3日(金)TOHOシネマズ シャンテ他 全国公開

STORY
1894年、フランス。ユダヤ系の陸軍大尉ドレフュスが、ドイツに軍事機密を流したスパイ容疑で終身刑を宣告される。ところが対敵情報活動を率いるピカール中佐は、ドレフュスの無実を示す衝撃的な証拠を発見。上官に対処を迫るが、国家的なスキャンダルを恐れ、隠蔽をもくろむ上層部に左遷を命じられてしまう。全て失っても尚、ドレフュスの再審を願うピカールは己の信念に従い、作家のゾラらに支援を求める。しかし、行く手には腐敗した権力や反ユダヤ勢力との過酷な闘いが待ち受けていた……。

監督:ロマン・ポランスキー 脚本:ロバート・ハリス、ロマン・ポランスキー 原作:ロバート・ハリス「An Officer and a Spy」
出演:ジャン・デュジャルダン、ルイ・ガレル、エマニュエル・セニエ、グレゴリー・ガドゥボワ、メルヴィル・プポー、マチュー・アマルリック他
2019年/フランス・イタリア/仏語/131分/4K 1.85ビスタ/カラー/5.1ch/原題:J’accuse/日本語字幕:丸山垂穂 字幕監修:内田樹
提供:アスミック・エース、ニューセレクト、ロングライド

配給:ロングライド

©️ Guy Ferrandis-Tous droits réservés
©️ 2019-LÉGENDAIRE-R.P.PRODUCTIONS-GAUMONT-FRANCE2CINÉMA-FRANCE3CINÉMA-ELISEO CINÉMA-RAICINÉMA

公式サイト longride.jp/officer-spy/

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