知られざる天才クライマー、マーク・アンドレ・ルクレールを追ったドキュメンタリー映画『アルピニスト』(公開中)の本編映像が解禁された。幼い頃にADHDと診断されたマークの可能性を、母親がどのように育んでいったのかが明らかになるシーンだ。

本作は世界でも有数の岩壁や氷壁、数々の断崖絶壁を、命綱もつけず、たった独りで登る無謀なフリーソロという登山スタイルを貫いた究極のクライマー、マーク・アンドレ・ルクレールのドキュメンタリー映画。不可能とされていた数々の世界の山脈の難所に挑み、次々と偉業を成し遂げながらも、SNS社会に背を向け、名声を求めない性格から世間的な知名度はほぼ皆無。そんな彼の想像を絶するチャレンジを追っていく。
世間でクライミングが注目を集めるのに比例して、派手な広報活動や、大手のスポンサーがつくメディアイベントが行われることは、今では当たり前のことに。一流クライマーになるほど、SNSのフォロワーは増加し、そのチャレンジの一挙手一投足が注目される。しかしそうした流れとは一線を引き、自分のやりたいことをピュアに突き進んだのが、本ドキュメンタリーの主人公マーク・アンドレ・ルクレールという人物だ。
彼は誰もがひるむような過酷な岩と氷の絶壁を完登し、世界一過酷なルートといわれるコークスクリュー・ルートを単独で制覇、という比類なき快挙を成し遂げた。これはともするとSNSで大騒ぎとなりそうだが、ネット界隈で寄せられたコメントはたったの3件。「超スゴい!」「とんでもない偉業だ」「マーク・アンドレ・ルクレールって誰?」。
彼にとっては世間の注目を集めるためのアピールなど、どこ吹く風。名声にも興味がなく、メディアに登場することもない。誰もが自然の驚異にひるんでしまうような危険な崖さえも、登りたいと思ったら登る。ただ気の向くままに、マイペースに、情熱だけが彼を突き動かす。なぜそんな危険を冒すのか? マークの返答は「娯楽みたいなものかな。楽しい冒険さ」というものだ。
まさにSNSのなかった「70~80年代のワイルドな世界にいる」と評されているマークだが、そこには母親(ミシェル・カイパース)からの強い影響があった。彼女は、学校に馴染めなかったマークを型にはめることなく、自由にやりたいことをやらせた。子どもの頃に冒険しないと、自分を見つけられない。自分の可能性にも気づけない。そうした環境で育まれたからこそ彼は、クライミングの魅力に取りつかれ、独学で学ぶほどにのめり込み、やがて独自のスタイルを生み出していった。
このたび解禁された本編映像は、そんなマークの母親が息子について語るシーン。「あの子は幼い頃苦労した。社会に適合するようには生まれてこなかったの」と明かす母親。学校の教育環境に馴染めず、学ぶ意欲を失っていたマークのために、母のミシェルは、思い切ってホームスクールで学ばせることを決意。息子に正面から向き合い、その個性を摘み取ることないミシェルのやり方が、マークの可能性を広げることになった。そんな親子のきずな、信頼関係が垣間見える映像となっている。
本作は、マークという特異な才能はもちろん、その才能がいかにして育まれたのか、また親子の関係性についても考えさせられるドラマとなっている。
さらに今回、本作公開を記念して、「世界のヒラヤマ」として、世界一美しいと評されるクライミングスタイルが、日本のみならず世界的にも名高いプロフリークライマー、平山ユージをゲストにトークショー付き一般上映会が行われることが決定。平山は以前、映画『フリーソロ』や『メルー』の特別試写会に登壇したことがあり、『フリーソロ』の主人公アレックス・オノルドとの思い出について熱く語ったことも。今回のトークショーでは、第一線で活躍し続ける経験から、世界のトップクライマー視点で本作の魅力を語る貴重な機会となる。イベント概要は以下にて。
『アルピニスト』は全国公開中。
イベント概要
イベント名:平山ユージトークショー付き上映会
日時:7月18日(月) 13:25-13:55 (11:45〜 上映会後)
場所:シネマート新宿
オンラインチケット予約:7/14(木)22:00開始
劇場窓口販売:7/15(金)劇場オープン時より
料金:通常料金 ※無料招待券使用不可
アルピニスト
2022年7月8日(金) TOHOシネマズ シャンテ 他全国公開
原題:『THE ALPINIST』
出演:マーク・アンドレ・ルクレール、ブレット・ハリントン、アレックス・オノルド(『フリーソロ』) ほか
監督:ピーター・モーティマー、ニック・ローゼン
制作:レッドブルメディアハウス
配給:パルコ ユニバーサル映画
2021年/英語/アメリカ映画/G/93分/ビスタ
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