7月8日より全国公開されるドキュメンタリー映画『アルピニスト』は、世界でも有数の岩壁や氷壁、数々の断崖絶壁を、命綱もつけず、たった独りで登る無謀なフリーソロという登山スタイルを貫いた天才クライマー、マーク・アンドレ・ルクレールに密着した作品。世間からの注目を好まず、携帯電話も車も持たない“生粋の自由人”であるマークに本作の撮影チームが密着できた理由とは?

本作のメガホンをとったピーター・モーティマーとニック・ローゼンは、20年近くにわたり、多くの山岳ドキュメンタリーを手がけ、高い評価を受けてきた気鋭の映像クリエーター。自身もクライマーとして山を熟知し、常にクライミング界の新星に注目していた人物だけに、マークの存在を知った時は衝撃を受けたそう。「マークは自分の技術、価値観を大切にしていて、自分のビジョンもハッキリしている。そういう人に会うといつも考えるんだ。他の人と何が違っているんだろうと。それが映画作りの原動力なんだ」。
しかしそんな百戦錬磨の巧者をもってしても、本作の主人公となるマーク・アンドレ・ルクレールには苦労させられたと言う。さすらい人で、世間からの注目を好まないマークは、携帯電話も車も持たない“生粋の自由人”。SNSでアピールすることなく、ただ自分の気の向くままに、驚くべき偉業をひっそりと成し遂げる。その偉業に付随する名声などにはまったく興味を示さず、ましてや撮影クルーが、自身の純粋なクライミングの世界に入って来ることを良しとはしない。そんなマークにどうやってカメラを向けることができたのだろうか。
当然ながらSNSをやっていないマークにコンタクトをとるのは容易ではなかったという。そこでモーティマー監督はブリティッシュコロンビア州のスコーミッシュに向かい、マークに直接会いに行くことに。映画監督としてではなく、同じクライマー仲間として。そのことでマークもすっかりリラックス。たくさんのおしゃべりをして、互いのことを知る機会となったそうだ。
マークはカメラと一緒にクライミングすることを良しとはしなかったというが、その一方で新しい物事には常にオープンだった。本作を製作したセンダーフィルムが、映画『フリーソロ』で知られるクライマーのアレックス・オノルドらが主演する映画を制作していたこと、そもそも彼がクライミングに興味を持ったきっかけとなったのが本を読んだからだったということを例に挙げて、「彼らが自分の物語を語ってくれなかったら、どうやってその活躍を僕が知ることができただろうか? だから他の人がヒントを得てくれるなら、僕も自分の経験をしまっておかず、みんなにシェアして夢を与えられれば良かったんだ」とマークは語る。ついに彼にイエスと言わせることに成功したのだ。
だがこれはほんの始まり。自由人で気まぐれな天才マークに、およそ2年にわたってカメラを向けるのは大変なミッションとなった。自由人のマークに右往左往する監督たちの悲喜こもごものてん末は本編を観て確かめてみよう。
モーティマー監督はこう語っている。「マークはつかみどころのない人間だろうと覚悟していたが、偉大でありながらほとんど知られることがなかった彼のことを伝えられて、やった価値はあったよ」。
また今回、『アルピニスト』本編より、マークがミックスクライミング(岩と氷が混合したルートを登るクライミング)に挑むシーンが解禁された。
映像はカナダのアルピニスト、ジョン・ウォルシュの「マークほど貪欲なクライマーに会ったことはないね」というコメントから始まる。
そして氷だけではなく岩盤も通るミックスクライミングで断崖絶壁の難所も乗り越えていくマークの姿を映し出す。「他の人にはない精神状態を持っている。何にも動じない」と同業者さえ脱帽させてしまうマークの凄みを捉えた映像となっている。
『アルピニスト』は7月8日(金) TOHOシネマズ シャンテ 他全国公開。

アルピニスト
2022年7月8日(金) TOHOシネマズ シャンテ 他全国公開
原題:『THE ALPINIST』
出演:マーク・アンドレ・ルクレール、ブレット・ハリントン、アレックス・オノルド(『フリーソロ』) ほか
監督:ピーター・モーティマー、ニック・ローゼン
制作:レッドブルメディアハウス
配給:パルコ ユニバーサル映画
2021年/英語/アメリカ映画/G/93分/ビスタ
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