ヨン・ウジン、 イ・ジウン/IUら豪華キャスト共演の映画『夜明けの詩』(公開中)のキム・ジョングァン監督が緊急来日し、11月26日(土)にシネマート新宿で実施されたトークイベントに登壇した。

「安藤サクラさん、黒木華さんはとても気になっている女優さんです」

本作は、まだ冬が残るソウルに7年ぶりに帰国した小説家のチャンソク(ヨン・ウジン)の物語。時間を失くした女性(イ・ジウン/IU)らとの出会いを経て、彼は心に閉ざしてきた記憶と向き合い始める。主演を務めるのは、Netflixドラマ「39歳」、映画『愛に奉仕せよ』といった話題作に出演し、柔らかい眼差しや深みのある演技力で観客を魅了する“ロマンス職人”ヨン・ウジン。共演に第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で2冠に輝いた、是枝裕和監督の最新作『べイビー・ブローカー』に出演したイ・ジウン/IU。生と死、時間、記憶という深遠なテーマを、観る者たちの心に寄り添う癒しの物語に昇華させた。

『夜明けの詩』

大勢の観客が詰めかけたシネマート新宿に、キム・ジョングァン監督、MCを務める韓国大衆文化ジャーナリスト・古家正亨が登壇すると、割れんばかりの拍手がおくられた。キム・ジョングァン監督は「初めまして、キム・ジョングァンです。本日は宜しくお願い致します」と挨拶。日本通として知られるキム・ジョングァン監督は、実は広島国際映画祭2022に参加するために11月16日から日本に滞在していたという。「日本の小説や映画が好きで、プライベートでも日本に旅行で来ています。作り手として、日本の素晴らしい作品に影響を受けています。また日本に訪れると、心が安らぎ、制作者としてのヒントも得ることが出来ます」と親日家ぶりも披露。

何故本作を撮影したのかと問われたキム・ジョングァン監督はその理由について「本作を撮る前に、ハン・ジミンさんとナム・ジュヒョクさんが出演した映画『ジョゼと虎と魚たち』の監督を務めました。『ジョゼと虎と魚たち』はメジャー作品として。本作は第20回全州国際映画祭の全州シネマプロジェクトとして同じ年に制作したんです。映画『窓辺のテーブル 彼女たちの選択』という作品があり、ある空間で起きる1日の対話劇を描いたのですが、このスタイルを踏襲した別作品を作りたいと考えました。対話劇というジャンルに、非常に魅力を感じています」と解説。その返答を受けた古家は、監督が紡ぎ出した映像美、作品性に魅了されたと賞賛する。

主演を務めた“ロマンス職人”ヨン・ウジン、“国民の妹”イ・ジウン(IU)といった、日本でも人気の役者をキャスティングした経緯を、キム・ジョングァン監督はこう明かす。「ヨン・ウジンさんは映画『窓辺のテーブル 彼女たちの選択』で一緒に仕事をさせていただきました。彼が演じたチャンソクは対話を重ねていきながら内面も変化していき、創作に繋げていくという役柄です。繊細かつリアクションが大事なキャラクターだと考えた時に、その演技を体現出来るのはヨン・ウジンさんしかいないと思いました。イ・ジウン(IU)さんは『ペルソナ -仮面の下の素顔-』の『夜の散歩』という作品でご一緒しました。この作品のテーマが“生と死”を扱っていて、『夜明けの詩』と同じだったんです。なのでシナリオを着想したときに、イ・ジウン(IU)さんに相談をしてみました。大スターである彼女は非常に挑戦好きだと思っているのでオファーしてみたんです」。

ここで古家が本作と日本が繋がる小ネタを披露。本編で登場するBarのシーンで使われたウイスキーグラスはなんと新宿のゴールデン街で手に入れたものだと明かすと、観客からは驚きの声が上がった。入手時のエピソードを問われたキム・ジョングァン監督は「新宿ゴールデン街には、多くのBarが存在しています。とあるBarでお酒を飲んでいたのですが、マスターが使っていたグラスが、とても美しかったんです。一部欠けていたグラスでしたが、何故か魅了されてしまったんです。その印象をマスターに伝えたところ、“僕は、いつも美しいと思いながら飲んでいるんです。初めて会った方に、そう言われて非常に嬉しいです。このグラスの良さに気づいてくれる方は、今まで出会えなかった”と言って、私にプレゼントしてくれたんです。なんか悪いなと思いながらも、一つの思い出として受け取りました。でもその時のマスターは、恐らく酔っていたと思います(笑)。ただBarでの体験を、『夜明けの詩』にも落とし込みました」と裏話を披露した。

続けて「実はマスターに(映画にグラスを登場させたことを)お知らせしたいので、昨日ゴールデン街に行ったんです。でもそのお店が見つからないんですよね(笑)。本当にお店が多すぎて、未だに見つからないんです」とキム・ジョングァン監督が笑顔で語ると、客席からは笑い声が漏れた。

また新宿ゴールデン街の魅力について問われると、「自称・路地好きなんですよ(笑)。僕の映画には多くの路地が登場していまして、新宿ゴールデン街は素敵な路地で溢れています。今後新宿ゴールデン街を舞台にした作品を創作できるのではないかと考えています」と日本を舞台にしたディープな構想も明かした。

さらにQ&Aコーナーも実施され、観客の質問に回答。

——『夜明けの詩』は、全体的にイギリス映画の様な、静かで鬱々とした雰囲気を感じました。この作品で光を照らすとした場合、どのシーンが当てはまりますか?

本作は、うら寂しい作品だと言えます。撮影監督とよく話したのですが、あらゆる物事には“光と闇”があると思います。その闇の中にある“光と闇”を探してみようと思ったんです。本作で登場するシーンの中に、スクリーンが闇に包まれる瞬間があります。その暗さは、見る人に対して負担にならないように、気を付けながら撮影をしたんです。これは“生と死”を描くうえで大事なことで、絶望・否定的な部分だけでなく、希望もあるんだということを表現出来たと思っています。

——日本がお好きだと伺いましたが、気になる俳優さん等いらっしゃいますか?

沢山の作品を手掛けた、成瀬巳喜男監督を尊敬しています。私も一つの作品だけなく、こつこつと積み上げていきたいと思っています。また犬童一心監督の『ジョゼと虎と魚たち』には、多くの影響を受けました。素晴らしい監督と役者さんたちの演技に感銘を受けたんです。いつか関わった人たちと、作品を共に出来たらなと思っています。(具体的な役者名を問われるとキム・ジョングァン監督は恐れ多いと語りつつ回答)女優さん主体の対話劇を作りたいと思っています。安藤サクラさん、黒木華さんは、とても気になっている女優さんです。

最後はキム・ジョングァン監督が観客に向けて「『夜明けの詩』は、寂しさが漂う作品ですが、その中に希望の様なものを感じ取れる映画だと思います。映画を通して、様々な感情を感じてもらえると嬉しいです。作品は、お会いした事がない人や、感性が似ている方に向けての手紙だと思っています。是非沢山の方に、映画館で観て頂きたいです」と締めくくり、盛大な拍手を送られながらイベントは終了した。

『夜明けの詩』は大ヒット公開中。

作品情報

夜明けの詩
2022年11月25日(金)シネマート新宿ほか全国ロードショー

監督:キム・ジョングァン『ジョゼと虎と魚たち』
出演:ヨン・ウジン「39歳」『愛に奉仕せよ』/イ・ジウン(IU)『ベイビー・ブローカー』「マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~」/キム・サンホ『ビューティー・インサイド』/イ・ジュヨン『サムジンカンパニー1995』/ユン・ヘリ『ジョゼと虎と魚たち』
2021年/韓国/韓国語/82分/カラー/シネスコ/5.1ch/原題:아무도 없는곳/英題:SHADES OF THE HEART/字幕翻訳:深田あゆみ

配給:シンカ

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