ドキュメンタリー映画の祭典、山形国際ドキュメンタリー映画祭の上映作品を東京で上映する「ドキュメンタリー・ドリーム・ショー——山形in東京2024」が10月19日(土)より新宿K’s cinema、アテネ・フランセ文化センターにて開催されることが決定し、ポスタービジュアルが解禁された。
隔年に開催されるドキュメンタリー映画の祭典、山形国際ドキュメンタリー映画祭(YIDFF)。昨年は4年ぶりのリアル開催となり、待ちわびた約2万人の観客で大きな盛り上がりを見せた。その上映作品を東京で見ることができる、恒例のイベント「ドキュメンタリー・ドリーム・ショー」が今年も開催される。
パレスティナの土地と記憶に迫る特集「パレスティナ——その土地と歩む」など独自のプログラムを加え、約50本を上映予定。アジア千波万波部門で上映された『平行世界』の写真をフィーチャーしたポスタービジュアルも解禁された。
今年の見どころ
①今年のカンヌ国際映画祭で「All We Imagine as Light」がグランプリを受賞したインドの新鋭パヤル・カパーリヤー監督『何も知らない夜』(コンペティション部門・大賞)、ミャンマー映画で初の小川紳介賞を受賞『負け戦でも』を上映!アジア千波万波にラインアップされた小田香監督(『セノーテ』)の最新作『GAMA』を東京初上映!
②YIDFFのフィルムライブラリー作品を中心に、紛争に揺れるパレスティナという土地と人々の記憶を辿り、未来への道行きを考える特集「パレスティナ——その土地と歩む」
③シャンタル・アケルマン、レオス・カラックスなどの初期作品を上映し映画史に刻んだ、伝説の映画祭「若き映画」についてのアーカイブ・ドキュメンタリーを上映!
④YIDFF2023で大反響!山形県大蔵村の肘折温泉で全編ロケ、地元住民も多数出演した幻の劇映画『雪の詩』を上映!
主な上映作品と分野
■ インターナショナル・コンペティション
4年ぶりのリアル開催となったYIDFF2023。多くの観客と共にスクリーンで映画を見ることの貴重さを体感した。そんな世界の今を描く、ドキュメンタリー映画の最先端の作品群があらゆる境界を超えて語りかけてくる。まさにヤマガタの顔とも言えるプログラム。
・パヤル・カパーリヤー監督『何も知らない夜』★ロバート&フランシス・フラハティ賞(大賞)
映画的技巧を駆使して語られる虚構の悲恋物語。背景にあるカースト制と社会の右傾化が浮かび上がる。2019年アジア千波万波で『夏が語ること』が上映され、今年のカンヌ映画祭で「All We Imagine as Light」がグランプリを受賞した新鋭が描く、インドの光と影。
・イレーネ・M・ボレゴ監督『訪問、秘密の庭』★山形市長賞(最優秀賞)
芸術の表舞台から姿を消した画家イサベル・サンタロ。姪である監督はその謎に迫ろうと老いた彼女にカメラを向けるがうまくいかない。撮る者と撮られる者の立場が逆転するスリリングな光景が見るものの心を捉える秀作。
・イグナシオ・アグエロ監督『ある映画のための覚書』★優秀賞
『100人の子供たちが列車を待っている』監督の新作。先住民族マプチェの土地アラウカニアに鉄道技師として赴任したある男の日記。男に扮した役者を中心に撮影隊がフレームの内外を自在に往来しつつ、植民地化の歴史と今も続く抑圧を描きだす。本作で監督は二度目の優秀賞を受賞。
■アジア千波万波
ドキュメンタリー映画作家、小川紳介が提唱した、アジアの作家たちを発掘、応援する“アジア千波万波”。上映会場に長蛇の列が続出するヤマガタ屈指の人気のプログラム。
昨年はミャンマー映画が小川紳介賞を受賞し、注目を集めた。アピチャッポン・ウィーラセタクン、河瀬直美など多くの映画作家を輩出してきた。
・匿名監督『負け戦でも』(アジア千波万波 ★小川紳介賞)
クーデターによって自由が失われ、絶望が広がる檻のような部屋の中で、希望の見えない未来に打ちひしがれながらも、ミャンマー、ヤンゴンの若者たちは絵を描き、楽器を弾き、叫ぶ。
・マーヤ・アブドゥル=マラク監督『ベイルートの失われた心と夢』(アジア千波万波 ★奨励賞)
幻影のように、失ったものたちを語る声がひっそりと聞こえてくる。ベイルートに住まう人たちが営む日常のあちらこちらに、死者の思念が宿る
・沈蕊蘭(シェン・ルイラン)監督『列車が消えた日』(アジア千波万波 ★奨励賞)
列車乗務員の仕事を辞め、僧侶になると決めた男が列車で向かった先に……。現実が夢に、夢がまた未来の現実に、それは誰のものなのか、誰がみているのか、誰の体験なのか。喪失と再生のエクスペリメンタル・ジャーニー。
・蕭美玲(シャオ・メイリン)監督『平行世界』(★日本映画監督協会賞)
アスペルガー症候群の娘エロディとの12年。時に根気良く寄り添い、隔てられては結び止めた母と娘のつながり。突然とめどなく溢れ出してしまうむきだしの感情を受け止め、創作のエネルギーと自立への歩みを見つめる。
・小田香監督『GAMA』※東京初上映
沖縄戦で多くの住民が命を落とした自然洞窟ガマで、語り部の松永さんが当時の出来事を語る。その傍らに現れる女性の身体表現が、亡くなった魂と現代人の眼差しを体現する。『セノーテ』『鉱 ARAGANE』などで「地下の記憶」を捉えてきた小田香作品。
■パレスティナ−−その土地と歩む
YIDFFではこれまで多くのパレスティナ映画作家の作品を紹介してきた。映画の上映を通じて、パレスティナという土地と人々の記憶を辿り、未来への道行きを考える。
・ ミシェル・クレフィ、エイアル・シヴァン監督『ルート181』
1947年に採択されたパレスティナ分割案・国連総会決議181号。故郷へ戻った二人の監督が、現存しないこの境界線を「ルート181」と名づけて辿る。人々との偶然の出会いによって照射される、土地と人々の分断、暴力と収奪、記憶の改ざん、抑圧と差別。
・アッザ・エル・ハサン監督『モーゼからの権利証書』
イスラエル占領下、エルサレムへ向けて拡大し続ける入植地マアレ・アドミム。監督はビデオ日記の体裁で、いとも簡単に住居を破壊され土地を奪われる人々の姿を記録する。
・ミシェル・クレフィ監督『石の賛美歌』、ミシェル・クレフィ監督『ガリレアの婚礼』ほか
■ YIDFF2023 特集上映より
「Double Shadows/二重の影3:映画を運ぶ人」、「やまがたと映画」、「日本プログラム」、「未来への映画便」、「審査員作品」のYIDFF2023特集上映より、選りすぐりの5作品を上映し、ディープにヤマガタの魅力に迫る。
・大川景子監督『Oasis』
「日本プログラム」より。アーティストの舞と自転車ビルダーの林太郎は自転車で都市を縫って走る。高架下の川、溝に生える蔦、解体工事中の都営住宅……移動しながら、心に引っかかったものを写真に収めていく小さな物語。三宅唱作品などで映画編集者として活躍する大川景子監督作。
・イヴ=マリー・マエ監督『若き映画』
「Double Shadows/二重の影」より1965年から1983年にかけて南仏のイエールで開催され、忘れ去られた伝説の映画祭「若き映画」についてのアーカイブ・ドキュメンタリーを上映。シャンタル・アケルマン、レオス・カラックスなどを上映し映画史に刻んだが、創設の理念を見失い、カンヌの監督週間に押されながら突然姿を消した。
・波多野勝彦監督『雪の詩』
「やまがたと映画」より。火事で家族を失った男が雪国の少女との出会いによって心が癒されていく…。山形県大蔵村の肘折温泉で全編ロケ、地元住民も多数出演した幻の劇映画。肘折歴史研究会と有志の捜索で40年ぶりに地元でも上映され、大反響を呼んだ。
山形国際ドキュメンタリー映画祭 東京上映
ドキュメンタリー・ドリーム・ショー−−山形in東京2024
●開催場所:新宿 K’s cinema(新宿区新宿3-35-13-3F)
アテネ・フランセ文化センター(千代田区神田駿河台2-11 アテネ・フランセ4F)
●開催期間:新宿 K’s cinema…2024年10月19日(土)〜11月8日(金)
アテネ・フランセ文化センター…2024年11月9日(土)〜20日(水)
・主催:シネマトリックス
・共催:山形国際ドキュメンタリー映画祭/K’s cinema/アテネ・フランセ文化センター
・協力:アカリノ映画舎
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