現代フランス映画界を代表する監督アルノー・デプレシャンの最新作『映画を愛する君へ』が1月31日(金)より全国順次公開。このたび監督メッセージ映像と著名人・劇場スタッフからの推奨コメント、物販情報が解禁された。
このたび到着したのは、監督を務めたアルノー・デプレシャンからのメッセージ映像。「日本の観客や日本の映画は私にとって、とても大切な意味を持っています」と、日本の観客に向けて挨拶。また、本作について、「世界中の映画と映画館をお見せし、心を込めて作った」と述べ、「生きていると悲しいことや世界では辛いことがたくさん起きているが、そんな時に映画を観ることで映画や人生の素晴らしさを思い出してほしい」と、観客にとって映画が希望になってほしいという想いを語った。
また、先日解禁となった著名人のコメントに加えて、映画館を愛する著名人と劇場スタッフからコメントが到着。コロナ禍にミニシアターエイドを立ち上げ、映画館への支援にも力を入れてきた俳優の渡辺真起子は、映画館を居場所としてきた自身の幼少期を振り返り、「暗い空間に浮かび上がる大きな窓。小さな家の中で、学校で、息苦しく生きていた孤独な私はその窓からいろいろな世界を知った」とコメント。
ヨーロッパ映画を日本に届けたパイオニアとして、長年に渡り映画界で活躍してきた秦早穗子は、「大勢の人たちと一緒にいるのに、独りぼっち。だから、自由という不思議な感覚。それを体験させてくれる映画館」と、映画館という唯一無二の空間がもたらす映画体験について触れた。
上映館の新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷、アップリンク吉祥寺ほか、本編に登場する東京日仏学院エスパス・イマージュ、国立映画アーカイブ、シネ・ヌーヴォまで、全国の劇場からも映画愛に溢れたコメントが到着。シネ・ヌーヴォの支配人・山﨑紀子は、「シネ・ヌーヴォで上映してきた数々の映画、それらが自分にとっても、お客さんたちにとっても人生の一部であると感じて、暖かな気持ちになりました」と映画館が寄り添ってきた人々の人生が描かれている本作を絶賛。
あわせて寄せられた「幼少期に影響を受けた映画」からも、映画と過ごしたそれぞれの特別な思い出が蘇ってくるだろう。全文は記事下にて。
さらに、上映劇場にて販売される劇場パンフレットと映画オリジナルトートバックが完成。劇場パンフレットは監督インタビューに加えて、本作を紐解くコラムや本編に登場する作品リストなど、盛りだくさんの内容となっている。オリジナルトートバックは、映画をイメージした赤色をベースに、主人公ポールの可愛らしい姿を捉えたもの。パンフレットやチラシを持ち運ぶのにぴったりのサイズとなっている。本作は、1月31日(金)より全国順次公開。
コメント一覧(順不同・敬称略)
渡辺真起子(俳優)
暗い空間に浮かび上がる大きな窓。小さな家の中で、学校で、息苦しく生きていた孤独な私はその窓からいろいろな世界を知った。
おかげで自分の生きている時間とも向き合えるようになった。他者と共感する喜びを知り、自分が独りぼっちではないことも知った。
そしてそれを自分の仕事(演者)としていまに至る。
デプレシャン監督は同世代といえば同世代。作品の中に出てくるラインナップには親しみがあり、いろいろな思い出が湧き上がり、未来へと思いを馳せる。写真が連なり映画になるように、陰影を持つ印象深い時が重なり合い、時間となり連なり、映画館のスクリーンで奥行きを持ちはじめ、私の人生の中に残っていく。デプレシャンの映画へのラブレターは素直で愛しい。
オールタイムベスト映画:『クリスマス・ストーリー』(08)
幼少期に影響を受けた映画:『赤い風船』(56)、『ションベン・ライダー』(83)、『マッチ工場の少女』(90)
秦早穗子(映画評論家)
大勢の人たちと一緒にいるのに、独りぼっち。だから、自由という不思議な感覚。それを体験させてくれる映画館。
アルノー・デプレシャンは、そんな幸せを呼び覚ましながら、映画の旅へと誘う。
映画は、ひとりの人間の生きてきた人生と歴史に、大切な関わりを持っているのを暗示する。
幼少期に影響を受けた映画:『民族の祭典』(38)、『陸軍』(44)、『自転車泥棒』(48)
新宿シネマカリテ(スタッフK)
映画に対しての情熱が溢れている。
劇中に綴られていく言葉は監督の映画へのラブレターかもしれない。
幼少期に影響を受けた映画:『天空の城ラピュタ』(86)
新宿シネマカリテ(スタッフY)
スクリーンから溢れ出る、映画愛へのメモリー。
知っているようで意外と知らない、映画にまつわるエトセトラ。
かけがえのない映画体験の数々が走馬灯のようによみがえり、
鑑賞後はきっと誰かと語り合わずにはいられない。
幼少期に影響を受けた映画:『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』(84)、『コンタクト』(97)、『レインマン』(88)
新宿シネマカリテ(スタッフS)
スクリーンへと向けられる眼差し、
映画を語る人々の眼差しが素敵です。
私が劇場で働いている理由の一つがこの中にありました。
幼少期に影響を受けた映画:『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(77)
新宿シネマカリテ(スタッフK)
映画に刻まれた「記憶」。
社会情勢や土地の風景、人々の暮らしと心の内。
僕らは映画館の暗闇でその記憶に触れる。
銀幕を通して追体験し、委ねられる。
そうして僕を造った映画たちとの出会いの瞬間、傷みもトキメキも感動も、再び蘇る。
これは映画に魅せられたことのある全ての人の物語だ。
幼少期に影響を受けた映画:『二十四の瞳』(54)
ヒューマントラストシネマ渋谷(営業 植村)
映画を通じて人々の人生を覗かせてもらっていると思っていたけれど、実は自分と向き合う時間になっていたのかもしれない、、、
登場人物たちの好きを知ることで、自分の好きを再確認できた気がしました。
幼少期に影響を受けた映画:『パコと魔法の絵本』(08)
アップリンク吉祥寺(小川賢人)
初めて観た映画のことはあまり覚えていないが、その日がすごく楽しかった事だけは今も覚えている。
『映画を愛する君へ』と監督からわたしたちに向けられたラブレターは、
淡い記憶がプレイバックするにつれて「映画大好き私も!」に、とめどない監督の想いに思わず笑ってしまった。
映画と現実の境目が曖昧だったかつての子どもは、大人になった今もスクリーンの向こう側に夢を見続けている。
幼少期に影響を受けた映画:『ジュブナイル』(00)
東京日仏学院エスパス・イマージュ(映画主任/映画批評、坂本安美)
デプレシャン監督は20年もの間、この劇場に何度もお迎えし、自分の映画について、あるいは他の監督の作品について、つねに映画への愛と、深い造詣に満ちた言葉を残してくれてきました。
私たちの上映活動はそうしてデプレシャン監督に見守られ、刺激を受けて続いてきました。
『映画を愛する君へ』にこの劇場が映る瞬間、そうした歴史がそこに集約されているようで感動しました!
幼少期に影響を受けた映画:『シャーキーズ・マシーン』(81)
国立映画アーカイブ(主任研究員 岡田秀則)
たくさんの映画が引用されているが、決して「映画史上の名作」を押しつけてきたりはしない。
映画との出会い方、関係の深まり方はひとりひとり違い、すべての人にそれぞれの「映画の歴史」がある。
この映画は、そのことにとことん誠実であろうとしたデプレシャンの優しさの結晶だ。
幼少期に影響を受けた映画:『ひまわり』(70)
新文芸坐(花俟良王)
偉大なるスピルバーグの模倣になることなく、ましてや安易なドキュメンタリーになることもない。
映画作家として己のリズムと温度で、映画への愛と感謝、そしてその存在意義をも表明する。
デプレシャンにしか書けない、幸福な不意打ちに彩られた孤高のラブレターだ。
幼少期に影響を受けた映画:『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』(84)
シネマテークたかさき(小林栄子)
映画を観る手段が多様化する中で「映画館で映画を観ること」とは何か?を問い直しています。
デプレシャン監督の映画体験と記憶には、この問いへのアンサーがありました。
幼少期に影響を受けた映画:『ふたり』(91)
フォーラム福島(阿部泰宏)
シネフィル(映画狂)はとことん、映画愛でできている。映画に魅入られた少年は、映画で人生や価値観を学び、やがて映画作家アルノー・デプレシャンとなった。これはデプレシャンが数々の映画の場面を引用しつつ、ポールという少年を自らの分身に見立て、11章のテーマで映画への尽きせぬオマージュを捧げたドキュドラマだ。
また、スクリーンに現実が映し出されるそのときに何が起こるのか。その謎を終生探り続ける、というデプレシャンの声が響くとき、映画を観たり考えたりすることがこのうえなく価値的に思え、誇らしくもなる。デプレシャンは世界中の映画ファンに、映画がいかに人生に不可欠なものかを真正面から示してみせた。
幼少期に影響を受けた映画:『サイコ』(60)
キネマ旬報シアター(番組編成担当 渡邉隆介)
どこでも映画が見られるようになったいま、どこでもない闇の中で光の反映を受け止める映画/映画館体験の秘かな愉しみを穏やかに肯定してくれる、優しい、深く染み入るような映画でした。
幼少期に影響を受けた映画:『風立ちぬ』(13)
伏見ミリオン座(インシアター担当 乗池翔太)
“映画”と“映画鑑賞”にまつわるエトセトラが、ドラマやドキュメンタリー、インタビューなど様々な手法で表現されていました。
体系的にみえる構成でも、監督アルノー・デプレシャンの人生と愛を感じ、とても温かみのある映画でした。
どうしようもない自分を好きになりたくて、僕は今日もせっせと映画を観ているのかもしれません
幼少期に影響を受けた映画:『ザ・マジック・アワー』(08)
テアトル梅田(営業係 瀧川佳典)
11歳の時、大阪の叔母さんに連れられ三番街シネマで観た『ベンジー』。高校1年生(15歳)の時に梅田東映で観て「いつかジャズとクラシックが判る大人になりたい」と思い、以来45年間オールタイムベストワンの『野獣死すべし』。上京した18歳の時、何度も観て訳詞風の詩まで書くほど感化された『戦場のメリークリスマス』。27歳の時にデートで観て、その芸術性と作品のクオリティーの高さに感動したディズニーアニメ『美女と野獣』。30歳の時、働き始めた旧テアトル梅田(梅田ロフト地下)で観てミニシアター作品の面白さを理解出来た『他人のそら似』。始発を待つ深夜の天六ホクテンザで観て、そこから一週間呪い死の恐怖に怯え続けた『リング』。結婚後、主人公マルコムを我が身に置き換えて帰りの電車の中でずっと涙が止まらなかった『シックス・センス』。
初めて映画館に行ってからほぼ半世紀、たくさんの映画館で色んな映画を観てきました。笑って泣いて憤って心打たれて。そして30年間映画館で働きながら「映画」って何だろう、テレビやPC、スマホで観ることが出来る現在、「映画館」で観る意義とは何だろうとずっと考えてきました。本作『映画を愛する君へ』の中にその答え(またはヒント)を見つけたような気がします。
幼少期に影響を受けた映画:『禁じられた遊び』(52)、『影の車』(70)、『X線の眼を持つ男』(63)、『ハエ男の恐怖』(58)
シネ・ヌーヴォ(山崎紀子)
2023年の大きな出来事。アルノー・デプレシャン監督がシネ・ヌーヴォにトークに来てくれたこと。
翌朝に再びカメラを持ってやってきたこと。「観客」の映画を作っている、と言ったその映画にちゃっかりと映ったシネ・ヌーヴォを発見し、私はシネ・ヌーヴォに来てくれる映画を愛するお客さんの何人もの顔を思い浮かべました。
シネ・ヌーヴォで上映してきた数々の映画、それらが自分にとっても、お客さんたちにとっても人生の一部であると感じて、暖かな気持ちになりました。
幼少期に影響を受けた映画:『蒲田行進曲』(82)
京都シネマ(スタッフ)
映画哲学や映画論という点で観ても感銘を受けるし、自分の人生につねにそばにあった「映画とわたし」という映画の語り口が、
とても親密なラブレターとして差し出されているようで、夢中にさせられます。
映画に触れて輝いた自分の人生にも思いを馳せてしまい、受け取ったラブレターの返事を出したい気持ちに駆られました。
幼少期に影響を受けた映画:『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』(84)
映画を愛する君へ
2025年1月31日(金)より新宿シネマカリテほか全国順次公開
監督・脚本:アルノー・デプレシャン 脚本:ファニー・ブルディーノ 製作:シャルル・ジリベール 共同製作:オリヴィエ・ペール 音楽:グレゴワール・エツェル 撮影:ノエ・バック
衣裳デザイン:ジュディット・ドゥ・リュズ 出演:ルイ・バーマン クレマン・エルヴュー=レジェ フランソワーズ・ルブラン ミロ・マシャド・グラネール(『落下の解剖学』) サム・シェムール ミシャ・レスコー ショシャナ・フェルマン ケント・ジョーンズ サリフ・シセ マチュー・アマルリック(『フレンチ・ディスパッチ』)
2024年/88分/フランス/原題:Spectateurs! 英題:Filmlovers!/カラー/5.1ch/2.35:1日本語字幕:福家龍一 後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
配給:アンプラグド
© 2024 CG Cinéma / Scala Films / Arte France Cinéma / Hill Valle
公式サイト unpfilm.com/filmlovers
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