2月26日より公開され、現在岩波ホールで上映中のジョージア映画『金の糸』トークイベントが3月3日(木)に開催され、歌手の加藤登紀子が登壇した。

「ぜひ岩波ホール作品のベストセレクションのような上映会をやってほしい」

映画の王国・ジョージア(グルジア)の伝説的⼥性監督、現在 93 歳となるラナ・ゴゴベリゼの到達点と⾔える『⾦の⽷』。今回開催されたトークイベントでは、ジョージア(グルジア)と縁があり、ウクライナとも関わり深い加藤が、岩波ホールへの思いも込めて、本作の魅力を語った。

映画の舞台はジョージアの古都・トビリシ。79 歳の誕⽣⽇を迎えた作家エレネが「誰も私の誕⽣⽇を覚えていない」と独⽩するところから始まるが、「実は私は主⼈公エレネと同い年。私の家族にこの映画を⾒せておけば、誕⽣⽇を覚えておいてくれるわね」と観客を和ませる。

『⾦の⽷』

そして⾃⾝とジョージアを結ぶ縁として、ジョージアの画家ピロスマニの悲恋を歌った歌詞で知られ、加藤の歌唱で⽇本でも有名になった名曲「百万本のバラ」に秘められたエピソードを紹介した。「この曲を書いたのはラトビアのライモンズ・パウルスという⼈なんです。1990 年にラトビアがソ連から独⽴するとき、ゴルバチョフはもう独⽴は時間の問題とわかっていたのに戦⾞を出しました。たくさんの市⺠が集まった広場で先頭に⽴って戦⾞の⾏⼿を阻もうとしたのがライモンズ・パウルスでした。私はそのニュースを知って“なぜ戦⾞なの?”と、とても⾟い気持ちになりました」。

元は歌詞もラトビア語だった。それをプラハの春のソ連侵攻を厳しく⾮難したことでも知られるロシアの詩⼈アンドレイ・ヴォズネセンスキーが、モスクワを追放されてたどり着いたジョージアでピロスマニを知り、彼が書いたロシア語版の歌詞を加藤が⽇本語訳して発表したのが、今、⽇本で愛されている「百万本のバラ」。加藤が語るこの曲のエピソードには、映画にも重なるソ連と旧ソ連構成国の複雑な歴史を感じさせ、今も続くロシア軍によるウクライナ侵攻についても「どんな国家間の問題であろうとも、武⼒で解決してはいけないと思ってます。ウクライナとロシアが⼀⽇でも早く停戦することを願うばかり」と祈るように⼒を込めた。

また映画については「⽇本の“⾦継ぎ”を着想にしていることにとても感⼼しました。よくぞゴゴベリゼ監督が映画にしてくれたと思います。映画にはとても⽰唆に富んだ⾔葉がいっぱいあって、沢⼭ノートに⾔葉を書き込みながら観たんですよ」と絶賛し、特に劇中の“我々は常に後進性と周縁性の意識にとらわれていた”という⾔葉が印象に残ったという。「⻑い歴史をもち、周辺の国の影響を受けながら、⾃分たちの⽂化を⼤切に守ってきた⽇本ともすごく通ずる部分があるのではないか」。

そして最後には、今年 7 ⽉末の岩波ホールの閉館についても触れ、「閉館してもホールがすぐなくなるわけではないのだから、ぜひ岩波ホール作品のベストセレクションのような上映会をやってほしい」と、思い出のつまった岩波ホールの閉館を惜しんだ。

「沢⼭の“ひび割れた過去”を、忘れるのではなく宝物として守っていくのよ、というジョージア⼈の「⽣きる」ことを⾒つめる姿勢が美しい作品。ぜひ皆さんと⼀緒にこの映画を愛していけたら」と締めくくると、会場からは⼤きな拍⼿が起こった。

今後も岩波ホールでは毎週木曜日 13:00 の回上映後に豪華ゲストによる上映後トークを予定している。日替わりのゲストは、SNS でのジョージアツイートが大人気な駐日ジョージア大使のティムラズ・レジャバ、コーカサス地域を中心に研究する政治学者で慶應義塾大学教授の廣瀬陽子、「ジョージア映画祭 2022」の主宰で画家のはらだたけひで、ジョージア文学・批評理論研究者の五月女颯。ジョージアに深い関わりのあるゲストが、『金の糸』のことやジョージアの現在を語り、ここでしか聞けない貴重なトークをくりひろげる。

『金の糸』上映後トーク

スケジュール:※すべて 13:00 の回上映後
3/10(木)はらだたけひで(画家・ジョージア映画祭主宰)①
3/17(木)ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)
3/24(木)はらだたけひで②
3/31(木)はらだたけひで③
4/7(木)五月女颯(ジョージア文学・批評理論研究)
4/14(木)廣瀬陽子(慶応大学教授・コーカサス地域研究)
会場:岩波ホール
※新型コロナウィルスの感染状況により、上映時間やイベントを変更・中止する場合がございます。劇場 HP やお電話で最新情報をご確認ください。

作品情報

金の糸
2022年2月26日(土)より、岩波ホールほか全国順次公開

【ストーリー】
トビリシの旧市街の片隅。作家のエレネは生まれた時からの古い家で娘夫婦と暮らしている。今日は彼女の 79 歳の誕生日だが、家族の誰もが忘れていた。娘は、姑のミランダにアルツハイマーの症状が出始めたので、この家に引っ越しさせるという。ミランダはソヴィエト時代、政府の高官だった。そこへかつての恋人アルチルから数十年ぶりに電話がかかってきて…

監督・脚本:ラナ・ゴゴベリゼ|撮影:ゴガ・デヴダリアニ|音楽:ギヤ・カンチェリ
出演:ナナ・ジョルジャゼ、グランダ・ガブニア、ズラ・キプシゼ、ダト・クヴィルツハリア
原題:OKROS DZAPI|英語題:THE GOLDEN THREAD|2019 年|ジョージア=フランス|91 分

字幕:児島康宏

配給:ムヴィオラ

©️ 3003 film production, 2019

公式サイト:http://moviola.jp/kinnoito/

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