2度の米アカデミー賞に輝いたアスガー・ファルハディ監督が放つ、SNS時代のヒューマン・サスペンス『英雄の証明』(4月1日公開)から、本編映像と監督のコメントが解禁された。美談の“英雄”に祭り上げられた男が一転、SNSで持ち上がった疑惑に翻弄される姿が収められている。

本作は、ベルリン、カンヌ国際映画祭にて数々の賞に輝き、『別離』と『セールスマン』で米アカデミー賞外国語映画賞を2度も制した世界的な巨匠ファルハディの最新作。“英雄”と祭り上げられた男が、SNSで拡散されたウワサによって人生が一変していく姿を描く。主人公の振れ幅の大きな運命を通して、真実というものの曖昧さや、社会に潜む欲望とエゴを現代的な切り口であぶり出す予測不可能なヒューマン・サスペンスだ。
このたび解禁された映像は、拾った金貨を返却したことで「正直者の囚人」とマスコミに取り上げられ、一躍有名人となった主人公ラヒムが、仕事を斡旋してもらえることになり、意気揚々と面接に出向く場面。
「あなたを採用する前に事実確認をしたい」と面接官より言われたラヒムは、金貨の持ち主の電話番号や住所を矢継ぎ早に聞かれるも、何も答えられない。さらに面接官はこの善行が作り話かもしれないとSNS などでウワサとなっていることを告げ、ラヒムへの疑念をあらわにする。
驚きを隠せないラヒムは「息子に誓って嘘はついていない」と伝えるが、「なぜ誓う必要が?」と冷たく突き放されてしまう…。
時に人をイラつかせるラヒムの微笑について、アスガー・ファルハディ監督は「この映画に登場するのは言わば“グレー”な登場人物たちです。型にはまっておらず、一面的でもないのです。日々の生活に登場する実在の人物のように、この映画の登場人物たちには陰影があり、また、彼らは相反する感情を持つ傾向があり、決断しなければならなくなると苦悩してしまうというわけです。ラヒムの微笑は、数ヶ月間のリハーサルでどのような演技をするか絞り込んでいく中で段々と露になってきたラヒムの特徴です。彼の日常生活の一部である“グレー”な性格を与えるにはどうすれば良いかということだったのです」と話している。
ラヒムは本物の“英雄”か、それとも世の中を騙す“ペテン師”なのか。真相は劇場で確かめてみよう。
『英雄の証明』は4月1日(金)Bunkamura ル・シネマ、シネスイッチ銀座、新宿シネマカリテにて公開。
英雄の証明
2022年4月1日(金)Bunkamura ル・シネマ、シネスイッチ銀座、新宿シネマカリテにて公開
ストーリー
イランの古都シラーズ。ラヒムは借金の罪で投獄され服役している。そんな彼の婚約者が偶然にも17枚の金貨を拾う。借金を返済すればその日にでも出所できる彼にとって、まさに神からの贈り物のように思えた。しかし、罪悪感に苛まれたラヒムは落とし主に返すことを決意。そのささやかな善行は、メディアに報じられると大反響を呼び“正直者の囚人”という美談の英雄に祭り上げられていく。ところが、SNSを介して広まったある噂をきっかけに状況は一変。周囲の狂騒に翻弄され、無垢な吃音症の幼い息子をも残酷に巻き込んだ大事件へと発展していく。
監督・脚本・製作:アスガー・ファルハディ
出演:アミル・ジャディディ、モーセン・タナバンデ、サハル・ゴルデュースト、サリナ・ファルハディ
2021 年/イラン・フランス/ペルシア語/2.39:1/5.1ch/127 分/原題:GHAHREMAN/英題:A HERO/日本語字幕:金井厚樹/字幕監修:ショーレ・ゴルパリアン /後援:イラン・イスラム共和国大使館イラン文化センター、在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
配給:シンカ/提供:シンカ、スカーレット、シャ・ラ・ラ・カンパニー、Filmarks
文部科学省選定 一般劇映画(青年・成人向き)
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