2度の米アカデミー賞受賞監督アスガー・ファルハディがソーシャルメディアの功罪を問う極上サスペンス『英雄の証明』(4月1日公開)の冒頭映像が解禁された。監督が古代遺跡シラーズを冒頭シーンの舞台に選んだ理由とは?

主演アミル・ジャディディの演技に監督は「自分が演出したことを忘れるぐらい感動」

第74回カンヌ国際映画祭にてグランプリ&フランソワ・シャレ賞を受賞した本作は、『別離』と『セールスマン』で米アカデミー賞外国語映画賞を2度も制したファルハディ監督最新作。“正直者の囚人”という美談の英雄に祭り上げられていく主人公の振れ幅の大きな運命を通して、真実というものの曖昧さや、社会に潜む欲望とエゴを現代的な切り口であぶり出す予測不可能なヒューマン・サスペンスだ。

このたび解禁された冒頭映像は、服役中でも休暇がとれる制度のあるイランで刑務所から出た主人公ラヒムが古代遺跡シラーズへ足を踏み入れるシーン。

監督はシラーズを冒頭シーンの舞台に選んだことについて「この映画のテーマ自体がその理由を説明しています。シラーズには数多くの古代の遺跡があります。この都市は、イラン人の重要で輝かしいアイデンティティの痕跡で満ちているのです。シラーズを舞台として選択した最大の理由は、物語と登場人物たちがこの都市でなければ成立し得なかったからです。とは言うものの、副次的な理由として、テヘランの喧騒から距離を置きたかったということもあります」と語っている。

主人公が古代の遺跡の足場を登り会いに行ったのは義兄のホセインだった。ラヒムの姿を見たホセインはビックリした様子で「俺が下まで降りて迎えたのに」と声をかける。「2500年前の墓参りは登るだけでキツイな」と冗談を言うラヒムに、ホセインは嬉しそうにハグをすると、2人は再び階段を降りはじめる。

発掘現場の休憩所に腰を下ろしたラヒムは、お茶を勧められ「茶は飲んできた」と言うと、「何を言っている。クセルクセスの墓前で出される茶だぞ」とホセインと楽しそうに会話する。ラヒムはお金を工面することができる予定だから、借金相手である別れた妻の兄バーラムに返済の話をつけに行くと言う。それを聞いたホセインは「その金を調達できたら、奴に会いに行こう」と言うが…。

借金で刑務所に服役する主人公ラヒムを演じたイラン俳優アミル・ジャディディは、俳優の他にテニスプレーヤーとしても活躍している。普段はスポーツ選手に相応しい筋肉に覆われた体だが、今回は役作りのために痩せ、頼りなく冴えないシングルファーザーの役を熱演している。マスコミによって美談の英雄に祭りあげられ、SNS の噂によって立場が一変する難しい役どころを繊細に演じ切った。

アミル・ジャディディ

監督はそんなアミル・ジャディディのカメレオンぶりを大絶賛する。「もちろん私が演出や指導をしましたが、さまざまなシーンでジャディディは驚くほど上手な演技をしていた。作品を見返すと、自分が監督したことを忘れるシーンがある。ジャディディ演じるラヒムがバーラムの店に行って、そこでバーラムの娘といろいろ会話するシーンです。その時の姿があまりにリアルで、それを見ると自分が演出したことを忘れるぐらい感動します」と振り返っている。

『英雄の証明』は4月1日(金)Bunkamura ル・シネマ、シネスイッチ銀座、新宿シネマカリテにて公開。

作品情報

英雄の証明
2022年4月1日(金)Bunkamura ル・シネマ、シネスイッチ銀座、新宿シネマカリテにて公開

ストーリー
イランの古都シラーズ。ラヒムは借金の罪で投獄され服役している。そんな彼の婚約者が偶然にも17枚の金貨を拾う。借金を返済すればその日にでも出所できる彼にとって、まさに神からの贈り物のように思えた。しかし、罪悪感に苛まれたラヒムは落とし主に返すことを決意。そのささやかな善行は、メディアに報じられると大反響を呼び“正直者の囚人”という美談の英雄に祭り上げられていく。ところが、SNSを介して広まったある噂をきっかけに状況は一変。周囲の狂騒に翻弄され、無垢な吃音症の幼い息子をも残酷に巻き込んだ大事件へと発展していく。

監督・脚本・製作:アスガー・ファルハディ
出演:アミル・ジャディディ、モーセン・タナバンデ、サハル・ゴルデュースト、サリナ・ファルハディ
2021 年/イラン・フランス/ペルシア語/2.39:1/5.1ch/127 分/原題:GHAHREMAN/英題:A HERO/日本語字幕:金井厚樹/字幕監修:ショーレ・ゴルパリアン /後援:イラン・イスラム共和国大使館イラン文化センター、在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本

配給:シンカ/提供:シンカ、スカーレット、シャ・ラ・ラ・カンパニー、Filmarks
文部科学省選定 一般劇映画(青年・成人向き)

© 2021 Memento Production - Asghar Farhadi Production - ARTE France Cinéma

 

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